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えぶりでい!  作者: あさの音琴
日常編
26/44

仲間7

「竜二! 一人でなにやってるんだ?」


「たっちゃんひどーい! 私もいるんだからね!」 


 背の高い竜二は周りを歩く人達に比べても頭一つ抜けており、すぐに分かったのだが、奏は竜二の影に隠れていた為気がつかなかった。


「お、奏もいたのか。二人でなにやってたんだ?」  


 奏と竜二が仲良く? やっているのは一昨日の学校で分かっていたが、いくらなんでも進展しすぎだろう。小さい頃はいわば敵同士のような関係だったはずだ。


「冒険がてらこっちの繁華街の方に遊びに来たら、あそこのハンバーガーショップで奏とたまたま会ったんスよ」


「竜二ちゃんが一人で食べてたから話しかけちゃったんだよね」


 笑いながら話す奏と竜二。可愛らしい雰囲気の奏と恐ろしい雰囲気を醸し出す竜二のペアはなんともミスマッチに見えた。


「急に走り出すから驚いたぞ。達弥」


「ああ。すまん。委員長に環。知っている顔が歩いていたからついな」


「相澤さんに天野君じゃない。こんなところで奇遇ね」


 俺に追いついた二人はそれぞれに口を並べる。環と奏は一度顔を合わせているから問題無いだろうが、環と竜二は初対面だ。


「委員長もいたんスね。それとこちらは……」


「私か? 私は三住環だ。環でいいぞ」


 竜二は真剣な表情で環を見る。真剣な表情になる竜二は顔の凄みが増している気もする。初対面でこの顔をされると逃げ出したくもなる。


「この人は竜二ちゃんって言うんだよ! 二人でたっちゃんを守る同盟を組んでるの!」


「なんスか? その紹介は。俺は天野竜二って言うっス。俺の事も気軽に竜二って呼んでもらえると嬉しいっスね。よろしく。環」


「竜二か。良い顔をしているな。美鈴と似た雰囲気も持っているようだ」


 環は何を言っているのだろうか。美鈴さんと竜二では似ても似つかないと思うし、雰囲気なんて竜二はいかにもな雰囲気であるし、美鈴さんは冷静で才色兼備という完璧主義者な雰囲気だ。


「良い顔なんて初めて言われたっス。お世辞でも嬉しいスね」


「お世辞なんかじゃないさ。ハハハハハ」


 高笑いする環に人の視線が集まるも環自身は気にした様子は無い。竜二も竜二で違う意味で視線を集めている気もする。


「たっちゃんは何をしてたの?」


「委員長に傘を返しに行ったついでにぶらつこうってなったんだよ。途中で環と会って、さっきまで飯を食ってた」


 奏の質問に対して素直に答える。こんな所で嘘なんてついても仕方の無い事だし、委員長の目の前で嘘もつけない。嘘どころか、卑しい事なんて一つも無いのだから正直に答える。委員長との初デートは未遂に終わってしまっているが。


「それじゃ、相澤さんと天野君も合流するかしら? 西条君も男子一人だと可哀相だし、大勢で遊んだ方が楽しいと思うし」


「翼ちゃんナイスアイデア! 最近たっちゃんと遊んでなかったし嬉しい!」


「そうっスね。奏と二人で行動しててあらぬ誤解を受けるのもめんどくさいし、俺も合流して一緒に行動するのに賛成ス」


 いつの間にか環との会話を終わらせていたのか、竜二も委員長の意見に賛成する。奏はダメだと言ってもついて来るだろうし、委員長と二人きりというシチュエーションは環の登場で破綻してしまっているから、俺も問題は無い。


「おお。私はこんな大勢で遊ぶのなんて初めてだぞ。楽しみだ」


 環はずっと孤独だったんだろうなと予想が出来た。美鈴さんがいると言っても、それは主従関係に似たもので友達とは言えないだろう。


「それじゃどこに行こうか」 


「私買いたい物あるから買い物行きたいよ!」


 思ったよりも大所帯になった俺達は奏の一言でまずは買い物に行こうという事になった。デパートに入り、奏が欲しいという物が売っている雑貨店に入る。


「西条君。何を見ているの?」


「このキーホルダー変わってるなと思ってさ」


 俺が見ていたのは、小さなベルのキーホルダーだ。ちゃんとした鐘になっており俺が一回振ってみるとチリンと可愛らしい音が鳴った。俺が持っていたキーホルダーを委員長に渡す。委員長は俺の真似をするようにチリンチリンと音を鳴らした。


「こんなのもあるのね。可愛いわ」


 委員長はそう言いながらそのキーホルダーを元あった場所に戻す。


「翼ちゃんこっちこっち! 面白い物あるよ!」


 楽しそうに色々と見て回っている奏に呼ばれた委員長は無言で立ち上がると奏の元へ行き、何かを見て笑っていた。委員長と入れ代わるように竜二が来る。


「委員長と良い感じじゃないスか」


「委員長との距離は縮んだかな」


 俺ははにかみながら竜二に言うと、竜二は笑顔で頷いた。竜二の笑顔が怖い。


「ちょっとレジに行ってくる」


 竜二に声を掛け、俺は委員長と一緒に見た小さなベルのキーホルダーをレジに持って行きお会計を済ませ終わった頃にはみんな店の外で俺を待っていた。


「カラオケという所に行ってみたいぞ」


 俺がみんなの元へ戻った時に、環がカラオケへ行きたいと提案を出していた。時間もまだまだ余裕はあるし良いだろうと思う。


「よし! 次はカラオケに行こう!」


 俺はみんなをまとめるように次の目的地を確定させる。環は本当に楽しそうにしているし、委員長もすごく楽しそうだ。奏は毎日が楽しそうだ。竜二も以外と楽しそうにしているし、俺も楽しい。


 そして、俺達はカラオケに到着した。驚いたのが竜二が顔に似合わず歌が上手かった事だ。委員長はそれと反対で苦手なようだった。奏は元気にダサイダーVのテーマを歌う。環も奏と一緒に歌っていた所を見ると、環もダサイダーVが好きなのだろうか。カラオケの時間も終わり、またもや環の提案でゲームセンターに行こうとなる。


 ゲームセンターでは環がはしゃぎっきりだった。委員長もゲームセンターは初めてだったらしく、環と盛り上がっていたりする。


「じゃあ、最後にプリクラ録ろうよ!」


 奏の提案に誰も反対はしない。楽しい思い出を最後に残すという事だろう。


「私が一番前だな」


「私も前がいい!」


 目立ちたがり屋な奏と環が前列を陣取って後列に俺、竜二、委員長といった形で陣取った。プリクラを撮り終わり、落書きなどは女性陣が担当し、シールが完成して出てくる。


 竜二が上手く笑えていなかったり、奏が前に出すぎて、どアップで写っていたりもしたが、みんな良い笑顔で写っていると思う。委員長が全員分に分けて切り、渡してくれた。


 俺と委員長の初デートはデートでは無くなってしまったが、すごく楽しい休日を過ごせたと思う。俺達は途中まで一緒に帰り解散した。

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