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えぶりでい!  作者: あさの音琴
日常編
20/44

仲間

 家に帰り、ひっそりとリビングなどを伺う。二日連続で家に帰ると人がいたんだ。警戒くらいはするだろう。


「よし。誰もいないな」


 俺は誰もいないことを確認するとすぐに風呂へと向かう。傘を借りたとはいえ、俺の体の左半身はびしょ濡れで、べっとりと張り付いたシャツ、ズボンが気持ち悪い。


「あれ? どうして電気が……」


 リビングの電気は消えていたのだが、何故か風呂場の電気が点いている。恐らくは美鈴さんが電気を消し忘れていたのだろう。俺はなにも気にせずに脱衣所の扉を開けた。開けた瞬間だ。俺の目には信じられないものが飛び込んできた。


 バスタオルをで体の正面は隠れていたが、華奢な肩から腰に沿っては程よくくびれ、形の綺麗な……その、なんというか。環がそこにいた。


「キャッ……お、おほん。達弥。驚いたじゃないか。突然入ってくるなんて」


「お邪魔しましたっ!」


 俺は開けた扉を乱暴に閉じる。どうして環が全裸で脱衣所にいるんだ? いや、全裸なのはこれから風呂に入るか上がったばかりだからだろう。恐らくは風呂上がりだ。脱衣所の空気は湿気ていたし、なにより環の白い肌がうっすらと赤くなり、火照っていたようにも見えた。


「なんで環がいるんだよ……」


「お帰りなさいませ。達弥様。本日もお邪魔させて頂いております。私は2階の掃除をしていたためにお出迎えに上がれず申し訳なく思っております。お容赦くださいませ」


 この際、俺の家にいるのは良い。予想はしてた。だが今回に限って言う。今回だけだ。お出迎えに上がって欲しかった。


「美鈴さん。せめてなにかしらの方法で一言言ってもらえると……」


「お嬢様がメールで連絡なさっているはずですが?」


 美鈴さんに言われ、俺はすぐに携帯を開き、メールフォルダをチェックした。連絡先の交換なんてしてないのに、何故か環の名前がフォルダにある。 "今日も遊びに行くから楽しみに待っていろ" そう書かれたメールの時刻は12時42分。気が付かなかった。基本的にマナーモードにしっぱなしの俺は話に夢中でメール受信を知らせるバイブに気付かず、そのまま放置していたようだった。委員長と連絡先の交換をしたときにチェックをしていればこんなことにはならなかっただろう。


「確かに……連絡が来ていましたね」


 なにか、釈然としない感情を覚えてしまう。連絡があったのは分かったが、その返事も待たず、家の主と言っていい俺の了解を得ることなく俺の家でやりたい放題する。それに、この人たちはどうやって鍵を……これ以上は考えないようにしなければ。


「私からのメールを堂々と放置する人間は達弥くらいだぞ」


 自分の裸を見られたのにも関わらず、それに対して気にも止めない環は器が大きいのか豪胆な人間なのか。


「俺、メールとかチェックをする習慣が無くてさ。悪かったな。メールに気付かないで」


「大丈夫さ。私にはそのくらいが調度いいんだ。それよりも、達弥は風呂に入らなくていいのか? そのために脱衣所まで来たのだろう?」


 すっかり風呂に入ろうとしていたことなんて頭から抜けていた。俺の左半身は相変わらずびしょ濡れの状態だ。


「そうだったよ。忘れてた」


 環に諭され、すぐに脱衣所に向かう。服を脱ぎ洗濯機に入れようと洗濯機を開けた。


 俺の目に飛び込んできたのは女性物の下着。パンティだ。さすがに無防備ではないか? 環が履いていた物だろう。悶々としてしまうのだが……いや、それよりも洗濯機に入っているということは俺の家で洗濯しようとしているのか。それは有りなのか? 纏まらない思考の中で、もう何も考えまいと自分の脱いだ服を洗濯機にほうり込む。何も考えない方が精神衛生的に良い。


「はぁ……」


 思わず溜息が出る。風呂場に入った俺は風呂の蓋を開ける。湯気が立ち上るこの湯船に先ほどまで環が入っていた。昨日と同じような思考を巡らせながら、さっさと風呂を済ませる。


「もっとゆっくり浸かっていれば良いものを。達弥は意外とせっかちなのか?」


 風呂から出て、リビングに向かうと俺の気配を察知したのか、ソファに座り、テレビに目を向けたまま俺に話掛けた環。


「俺は早風呂なんでね。すぐのぼせるしこんなもんだろ」


 普段はもっと長く風呂に浸かっている。風呂に長く浸かれば浸かるほど、環が入っていたんだと妄想をしてしまうから早風呂になってしまうのだ。


「そうか」


 環は俺の風呂の話なんて興味が無いのだろう。一言そう言うとすぐにテレビに集中しだす。やることの無い俺は今日連絡先を交換したばかりの委員長にメールを送ろうと携帯を開いた。


 "今日は傘をありがとう。助かったよ" こんな物だろうか。もう少し長めにした方がいいのだろうか。長すぎるとうざがられるかもしれない。こんな物だろうな。俺は自分を正当化させて納得させる。


「環は学校とかどうしてるんだ?」


 昨日から不思議に思っていたことだ。環ほどのお嬢様なら普通に学校に通っていてもおかしくはないと思う。昨日は学校を休んでいたのだろう。今日は遅刻か?


「今日はちゃんと学校に行ったぞ。昨日はサボっていた。今日は遅刻をしたがな」


「そんなんで平気なのか?」


「昨日学校をサボっていた達弥に言われたくないはが。そうだな……学校なんてただの義務みたいなものだろ? 親が決めた学校だし、楽しいとも思わないから学校はよくサボっているぞ」


 学校が楽しくないのか? 俺も前まではそう思っていたが、今は違う。学校に行って友達と会って馬鹿みたいな話をしていると楽しいと思う。環は何か問題を抱えているのだろうか。


「学校って以外と楽しいぞ? なにかあるなら相談に乗るし話してみろよ」


「それもそうだ。私と達弥は運命の糸で結ばれた関係だからな。お互いのことを知るためにも話そうではないか」


 


 


  




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