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えぶりでい!  作者: あさの音琴
日常編
17/44

再会4

 奏と竜二を置いて教室に戻った俺は委員長を探す。軽く辺りを見回してみると委員長はすぐに見つかった。自分の席に座ってたんだから、すぐに見つかって当たり前なんだが。


 委員長との会話を楽しみにしている反面、少しの恐怖もある。上手く会話できなかったらどうしよう。嫌われたらどうしよう。こんな感情が心の中に満ちていく。


「行かなきゃな。よし」


 小さくではあるが気合いを入れ直す。気合いを入れるなどの精神論は好きでは無いが、こうすることで、委員長の所へ向かう勇気が出てくる。


「い、委員長? 一緒にいいか?」


「……いいわよ」


 委員長は弁当を食べており、口の中に入れていた物を飲み込んだのか少しの間の後に俺を受け入れてくれた。


 俺は近くにあった生徒の机から椅子を借りて、委員長と対面に座る。少し照れ臭いがここは仕方ない。


「食べながらでいいか? 朝の話って?」


「西条君はダサイダーVを見たいのでしょ? DVDに焼いたら貸してあげるって言いたかったのよ」


「なんだ。俺も同じようなことを言おうと思ってたんだ。ダサイダーVのDVD焼けたら貸してくれないか? って」


 そんなことかと委員長と二人で笑い合う。笑ったことで、少し自然体になれたんじゃないかって思う。


「私がダサイダーVなんてもの見てて笑わないのね」


「俺の周りはみんな見てるからな。むしろ、俺だけ見てなくて取り残されてるみたいなんだよ」


 頭を掻きながらおどけて見せると、委員長は手を口に当て笑う。口元は見えないが、委員長の目はとてもキラキラしてて綺麗だと感じた。


「私ね、最初は間違えてダサイダーVを録画してたのよ。どうしてか分からないのだけれど、どこかで操作を間違えてたんでしょうね。録画されちゃってて。なんとなく見てみると案外面白くてずっと見てるのよ」


「へぇ。そうなんだ。ダサイダーVってそんなに面白いんだな。ますます見たくなってきたよ」


 ダサイダーVの話で盛り上がるなんて思っても見なかった。委員長が深夜アニメを見てるなんて想像できなかったけど、見はじめた理由がおっちょこちょいで可愛い。


「西条君ちょっと聞いてくれる? 私ったら、ダサイダーV見はじめてスーパーロボットていうのに興味が湧いちゃって見てみたのよ。スーパーロボットの古い作品をね。そしたら、物語は良いのに絵が古すぎて見るのが辛いのよ。頑張って見てるけど挫折しそうだわ」


 笑いながら話す委員長に釣られて俺も笑いが込み上げる。委員長ってこんなキャラだったのかと今まで見てきた委員長の印象とは違い、すごく魅力的だ。いつも俺を正そうとしてくれてた委員長も好きなのだが。


「挫折しそうなのに結局見ちゃうんだな」


「ええ。見はじめたら最後まで見たいじゃない?」


 委員長との付き合いは案外長い。中2のときに委員長が転校してきたんだったな。いつも一人で読書をしていたりといった印象もあった。今日の感じを見ると、人に壁を作るタイプだったんだな。奏が一人でいる委員長に話しかけて、奏と委員長が友達になってから俺も委員長とちょくちょく話すようにはなったんだけど、その内容はいつも俺に対してのダメ出しばかりだった。委員長本人は良かれと思って注意したようなことが周りの反感を買っていじめられてたこともあったっけな。その頃を思い出すと委員長がキラキラと笑う所を見ると嬉しくも思う。


「俺だったら見てて辛いのは途中で切っちゃうかもな」


「もしかすると最後にはどんでん返しもあるかもしれないのに? 私はそういった物語も本で読んだことあるから最後まで期待しちゃうわね」


「俺って結構損してるかも?」


 何気ない会話がとても楽しく思う。たった一つのきっかけでこんなに会話が弾むものだったんだな。今まで意識せずに話していたから分からなかったけど、ちょっとしたきっかけで良かったんだ。


「授業には間に合ってても、ホームルームに間に合ってないのはとても損してると思うわよ? あと昨日休んだときも連絡しなかったでしょ。西条君のご両親が家にいなくても、自分で連絡はするべきよ」


 そういえば昨日、学校に連絡入れるの忘れてたな。有り得ない時間に起きて、委員長と顔を合わせづらかったし、今さら学校にって思ったことは言えないな。


「それはそうだな。昨日は色々あって連絡忘れてたんだ。次からは気をつけるよ」


 学校に連絡を入れなかった件については言い訳のしようがないな。なんだかんだで、委員長は容赦なくダメな部分を指摘するが、きちんとフォローも入れてくれる。


「たっちゃんに翼ちゃんなに話してるの?」


 いつも空気を読まずにやってくるのは奏だ。自分も話に入れて欲しいのだろうが、俺と委員長が楽しく二人きりで話をしていた所だ。邪魔をしないで欲しい……なんて言えはしない。委員長にとっても俺にとっても奏は大切な存在なのだから。


「たっちゃん。いい感じじゃないんスか? いいっスね」


 耳元でぶつぶつといらないことを言ってくるのは竜二だ。竜二も見た目に反して良い性格をしている。


「天野君じゃない。そういえば西条君と親しそうだけれど知り合いなの?」


「そうっスね。俺は昔こっちから引っ越していったんスけど、たっちゃんと奏とは幼馴染みみたいなもんスよ」


「そうなんだよ。竜二ちゃんは悪い奴らの手下みたいになってたんだけど、私がちゃんと更正させたから大丈夫だよ」


「更正ってなんスか。奏」


 案外気の良いメンバーが集まっているんだよな。俺の周りって。今はいないけど洋介だって良い奴だ。


「相澤さんにも聞いたことが無かったのだけど、西条君って小さい頃はどんな子だったの?」


 そして、委員長の爆弾投下だ。竜二の俺との思い出は公園だけで、俺はいつも奏に負けたくないって気持ちで強がってただけだからな。俺の小さい頃の話がどう展開していくのかドキドキしてしまう。

 


 


  


 


 

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