高校生時代の私たち
朝、目を覚ますといつも彼が隣にいる。
すやすやと気持ち良さそうにしていて、可愛い寝顔だといつも思う。
でも、そんなこと言ったら起こられちゃうから言わないけどね。
腕枕をしてくれている彼を起こさないように、そっとベットから出る。
用意していた服にさっさと着替えて、リビングに顔を出すと
「おはよう」
といつもの声を聞いて、私の朝は始まるんだ。
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今から、五年前。
私が高校生に成り立ての頃、彼に出会った。
その出会いも単純。ただ、席が隣になっただけだ。
私が席に着くなり、
「あっ、お隣さん?俺の名前は、泉 桐矢。よろしくな」
って笑顔で言ってくれた。
緊張してたから、すっごく嬉しかったんだよな。
桐矢はクラスの中心の人だった。それも、世に言うイケメン。
女子からも男子からも人気。先生も彼を気に入っているようだった。
私は、そんな彼に憧れを抱くようになった。
____隣の席。
いつも囲まれている桐矢と話すことはあまりできなかったけど、彼の横顔を見れる、この場所は私だけの特権だった。
ただ、見ているだけでいい____そう思っていた。
だから、桐矢に告白された時はびっくりした。
「俺…お前のことが好きだ。」
ある日、二人だけの教室の中で彼の声だけが響いた。
すごくすごく嬉しくて、ドキドキして。
もちろん返事はOKした。断ることなんて考えられなかった。
____高校生の私たち。すごく甘酸っぱい思い出。
あの頃の私は、ずっと桐矢と一緒にいるんだって思ってたんだ。
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今、隣にいるのは桐矢じゃない。
桐矢は、いつも私に「おはよう」と笑ってくれることしかできないないし、私もそれに応えて「おはよう」と笑うことしかできないんだ。