#05 紗理奈2
OLの紗理奈です。
私がエレベーターに閉じ込められました話を続けます。
閉じ込められた時はコンタクトレンズを無くして誰の顔もわからない状態だったことは話しましたよね。
そのことを一緒に閉じ込められた3人に話しました。
するとその話を聞いた主婦の綾香さんが鞄からメガネを出して私に貸してくれました。
私は花粉対策のゴーグルを外して貸してもらったメガネをかけました。
メガネの度は合っていてハッキリと周りが見えました。
メガネのおかげでひとりだけ知り合いを見つけることが出来ました。
その知り合いというのはマンションの部屋が隣の友人です。
でもその友人が名乗った名前は知っている人の名前ではありませんでした。
美沙子という名前のはずなのに咲子と名乗っていました。
なぜなのかはすぐに分かりました。
美沙子ちゃんは私たち3人には作家の時のペンネームを名乗っていたのです。
本を読まれるのが恥ずかしいので私には秘密にしていたペンネームでした。
ニット帽にメガネにマスクの私は咲子と名乗る女性に美沙子ちゃんかどうかを確認しました。
すると何で本名を知っているのかと聞いてきました。
なので美沙子ちゃんに私はサリーだと伝えました。
サリーというのは美沙子ちゃんが私に付けてくれたニックネームです。
紗理奈だからサリーです。単純なニックネームの付け方ですね。
私がサリーだと知った瞬間とても驚いた表情をしていました。
疑い深い美沙子ちゃんは私にニット帽とマスクを取るように言ってきました。
私は言われたとおりニット帽とマスクを取りました。
取った瞬間、美沙子ちゃんは「本当にサリーだ」と言いました。
それは予想通りでした。
でも主婦の綾香さんも取った時に「あっ」と言っていました。
メガネをかけて見た限りでは見たことが無い顔だったはずなのですが。
そして経営者の由紀子さんも「あっ」と声を上げました。
明らかに私のことを知っているみたいなので由紀子さんをよく見てみました。
すると明らかに見たことのある顔でした。
女性でムキムキで知っている人。
考えてみましたが全然思い出せませんでした。
言ってませんでしたが実はこの日は私の誕生日でした。
エレベーターに閉じ込められてしまったので最悪の誕生日になりました。