#03 由紀夫1
由紀夫。30歳。経営者です。
僕がエレベーターに閉じ込められてしまったのは友人のマンションに遊びに行った時でした。
というのは嘘です。本当は女性を尾行していて閉じ込められました。
尾行といっても探偵ではありません。いわゆるストーカーです。
この日はジムで鍛える予定をやめてストーカーをしました。
格好はロングのカツラをしてワンピースを着てハイヒールを履いていました。いわゆる女装です。
恋をしたのは僕が経営する喫茶店にいつも来てる女性です。
その女性はずっとノートパソコンで作業していたのですが職業はたぶん作家だと思います。
思い切ってその女性と同じエレベーターに乗ったのが間違いでした。
エレベーターに閉じ込められた時は地獄が始まると思いました。
長い時間その女性と一緒の空間にいるわけですから地獄です。
僕は絶対にストーカーだとバレる時が来ると思っていました。
エレベーターが止まった瞬間、男の声が出そうになりましたが何とか切り抜けました。
僕は顔を見られないようにストーカーをした女性の方を出来るだけ見ないようにしました。
なので挙動不審に見えていたと思います。
その女性の視線は確実に僕に向いていて焦りました。
エレベーターに閉じ込められたのは僕を入れて4人です。
僕も十分に怪しいのですが、僕以上に怪しい女性が一緒のエレベーターに乗っていました。
それはニット帽にメガネにマスクの女性です。
その女性は芸能人だから変装しているのでしょうか。
それとも僕と同じストーカーさんなのでしょうか。
正体はわかりませんが怪しすぎでした。
その後、僕はバレないように裏声を使って他の3人と話をしました。
すると僕がストーカーをした女性が咲子という名前の作家だということがわかりました。
そして変装している女性はOLで絵理香という名前だと言うことがわかりました。
もうひとりの女性は綾香さんという主婦でした。
その主婦は40歳くらいだと思いますがとても綺麗でした。
僕は由紀子という女性の名前を名乗り、職業は経営者ということにしました。
ちゃんとした声の人がひとりもいなくて変な感じでした。
みんな風邪をひいて声が枯れたのでしょうか。
僕はストーカーだとバレる前に助けに来てくれとずっと願っていました。