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第一章 「復員後」 4

 東部、江東区のバラック街。江東区もまた、津波と火災で壊滅的な打撃を被った。

 区内の治安は最悪で、日々、殺人、強盗、違法営業が絶えず起きている。

 ‘深川マーケット’という闇市の通りを僕を、含むイチイチの三人はぶらぶら歩いていた。



 淀川係長が闇市にでも行って何か食べるかと、言ったためなのだが、わざわざ闇市まで行って、呑まずに何か食べるという事の意味を、僕はわだ分からなかった。

 午後七時頃で、まだ夜中になっていないのにも関わらず、人の多さには驚かされる。まさに東京って感じだな。

 「零時になると数千人も集まるらしい。その時がピークだ。」

 「確か娼館街もその頃に開くらしいですね。」

 「お、後宮、よく分かっているな。興味有りか。」

 「いやぁ、別にそういう訳じゃないですが。」

 僕は後宮さんと淀川係長との会話を聞き流して、ただ、意識をぼうと飛ばして歩いていた。 市は相変わらずの活気や、人の多さに熱気も溢れており、人混みとその熱気が対流している。

 「おお、これ。これがオススメの店だよ。」

 それは、ネオンも装飾もない闇市にしては素朴すぎる店で、看板には‘大連’と書かれている。

 「ラーメンですか。」

 「よく分かったねえ。」

 外見は屋台の車輪を外して、そのまま拡張したらしく、壁は瓦礫で屋根は幌だ。

 暖簾(のれん)を潜る。

 「へいらっしゃい。」

 勘定をわりかんで済ませ、三人は解散することにした。

 あれから一時間経って、闇市、深川マーケットは夜の街に顔を変えつつある。

 人通りは増え、客寄せの文句が書かれたネオンの看板の数も増えてきた。

 「それでは帰ります。」

 後宮さんが去る。

 「…では私も帰りますので。係長、今日はありがとうございました。」

 「ちょっと槐安君、まだ帰らないでくれ。」

 「え」

 どこからともなく、上木等の‘ハィそれまでヨん’が流れてきた。

 「…そんな目で見るな。別に夜の街へ行こうって言っている訳じゃないんだ。」

 「はぁ…。」

 「六本木の居酒屋だ。行くぞ。」

 「わ、分かりました。」

 上司の命令と、云うよりは、一種の興味のようなもので、淀川係長の正体を知りたくて、自然にそう言ったのだと思う。僕はついて行く事にした。

 「十キロもないから、歩くか。」

 「歩きましょう。健康のためにも。」

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