ファンタジー世界の五万の軍勢、その後ろに何人いるんですか (。´・ω・)?
ファンタジー戦記を読んでいると、よくある。
「王国軍五万、国境を越えて敵国へ侵攻!」
……おお、壮観である。
槍兵が並び、騎士が馬を駆り、魔法使いが杖を掲げる。
五万人の兵士が、勇ましい軍楽とともに敵国へ向かって進軍していく。
しかし、最近の私はそこで素直に興奮できなくなった。
「……その後ろに何人いるんですか?」
兵士五万人だけが、剣と盾を持って歩いていけば戦争ができるわけではない。
まず飯がいる。
五万人が一日に五〇〇グラムの穀物を食べるだけでも、二五トンである。
一〇日なら二五〇トン。
兵士A
「閣下! 兵糧二五〇トンを用意しました!」
将軍
「よし、各自で持て!」
兵士A
「反乱起こしていいですか?」
当然、荷車が必要になる。
荷車を動かすなら御者がいる。
馬もいる。
馬がいれば馬丁がいる。
……そして馬も水を飲み、飯を食う ( ˘ω˘ )
兵站担当者にとって、馬は便利な輸送手段であると同時に、巨大な食料消費装置でもある。
さらに西洋風ファンタジーならパンを食う。
するとパン職人が必要になる。
小麦をそのまま兵士に渡して、
「今日の夕飯だ」
……とはいかない。
製粉する。
水を混ぜる。
生地を作る。
焼く。
つまり五万人の勇者たちの後ろでは、
「今日もパンを焼くぞおおお!」
と叫ぶおっちゃん集団が猛烈に働いているのである。
しかしまだ終わらない。
鎧が壊れた。
鍛冶屋がいる。
馬の蹄鉄が外れた。
蹄鉄工がいる。
荷車が壊れた。
大工がいる。
兵士が負傷した。
医者や治療係がいる。
服が破れた。
裁縫する人がいる。
金を管理する。
会計係がいる。
将軍がワインを飲みたい。
そんなもん我慢しろ。
……と言いたいところだが、歴史上のお偉いさんはだいたい我慢しない。
なので高級将校の寝具、食器、酒、予備の衣服、従者などまで荷物に追加される。
さらに昔の軍隊では、軍隊について歩く商人や洗濯女、娼婦、兵士の妻、場合によっては子供までいた。
こうなると、
「五万の軍勢」
というより、
「五万人の武装集団を中心とした巨大移動都市」
である。
仮に戦闘員五万人に対し、非戦闘員が二万人ついてきたとしよう。
七万人である。
さらに荷馬やロバが一万頭。
荷車が数千台。
これが延々と続く。
ファンタジー作品では、
「敵軍五万が急速に接近しております!」
と斥候が報告する。
私は最近、
「五万だけじゃないぞ。後ろにパン屋さんも来てるぞ」
と思うようになってしまった。
しかも敵として本当に狙いたいのは、勇猛な騎士団ではない。
荷車である。
敵将
「我が軍三千で敵五万を撃破できるか?」
参謀
「無理です」
敵将
「ではどうする?」
参謀
「パンを焼かせなければよろしいかと」
……翌朝。
兵士
「朝飯まだー?」
パン職人
「小麦粉が届いてません」
輸送隊
「昨日、荷車を全部焼かれました」
兵士
「家にかえるわ」
五万人の精鋭軍、三日後に撤退。
恐るべし、パン屋壊滅作戦。
だから戦争とは、剣が強い軍隊が勝つとは限らない。
魔法使いが強くても、
竜騎士がいても、
伝説の勇者がいても、
飯が届かなければ帰るしかない。
また、例えば、軍隊じゃなくて、4名くらいの勇者御一行としよう。
勇者
「魔王を討つ!」
兵站担当
「その前に補給計画書を提出してください」
勇者
「え?」
兵站担当
「遠征予定日数、必要食料、荷役馬数、予備馬、飼料、現地調達予定、補給拠点を書いてください。勇者様御一行なんだから、現地徴発なんて絶対にしないでくださいね……」
勇者
「……冒険って、もっとこう……」
……そう。
現実の戦争とは、勇者が剣を振るうだけの物語ではない。
勇者が剣を振れるようにするため、名もなき人々が必死になって飲料水や食料や薪を運ぶ物語でもあるのだ。
現在、SF戦記「星間覇道 ――没落貴族と女海賊、銀河帝位争乱――」を連載中です~♪
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