暇人の遊び相手は。
『すみません。ミスをしてしまったのですが今いいですか?』
『はい、なんですか?』
10年前から消息が分からなくて、もはや記憶からも薄れていたフォロワーからDMが届いた。彼とは繋がっているだけで、このアカウントからは個人的な連絡をしたことは無かったがどうしたのだろうか? わくわくする。
『画像1 突然の連絡、失礼します。実は私のクレジットカードお金を盗んだ詐欺師が、あなたと同じユーザー名と写真を使っています。そのため混乱してしまい、これは本当に本人ですか?』
そこには私のSNSアカウントのアイコンの画像付きのクレジットカード画像が添付されていた。
『クレジットカード持ってません』
そもそも、SNSアカウントの名前なんてみんな匿名のようなものだ。それを使ってクレジットカードなんて作る人なんて居るわけなかろうに。
『画像2 もっと大事なのはこっちで、実は間違えてあなたのアカウントを通報してしまいました。あなたのアカウントが停止されるかもしれないってメールが来ました。取り下げたいからキャンセルするのを手伝ってくれませんか?』
『焦ってて草』
「あっ」
やってしまった、と思ったら相手の方からブロックされてしまう。残念、もう少し遊べると思ったのに。
さっきのDMの向こうはもちろん、本人ではない。どういうカラクリか知らないが乗っ取られたアカウントからこういうメッセージが色んな人に届いているのが流行っている。
どうやら私にメッセージを送ってきた人は、アドリブ力が皆無だったようだ。クレジットカード持ってないと言われ、慌てて別の手口に切り替えていた。もう少し頑張ればいいのにと思うが、向こうにもテンプレがあるんだろうから仕方がない。
「夜々、なにしてんの」
「朝陽ー、聞いてよ今さあ」
「ちょ、もう危ないって。熱いコーヒー持ってんだから。で?なによ」
「めっちゃ昔の朝陽が消した黒歴史アカウントからDM来た」
「……俺もう、ログアウトしたよ」
「うん、だからあのアカウント乗っ取られてるみたい」
あんな黒歴史でしかないアカウントを選ぶなんてよっぽど乗っ取れるアカウントなかったんだなー、と朝陽がコーヒーを飲みながら言う。
DMを送ってきたアカウントは当時、腐男子だった幼なじみの黒歴史そのものだったのだ。……まあ、最初に勧めたの私なんだけどね。
幼なじみのアカウントだったからこそ、繋がっているだけでいいねしたりなんてすることはなかった。だって話したければ目の前に居るのだから、その必要がない。
「夜々は、またSNSアカウント作ってほしい?」
「どちらでもいいよ?」
2年前から幼なじみから旦那さまになった彼の肩にもたれ掛かる。さて、さっきの出来事を漫画にしなくちゃね。
売れっ子SNS漫画家の夜々は、今日も徹夜になる予定のようだ。




