誰モ知ラナイ歌を
本作品は、別作品の ONE EYES'Cのスピンオフとして劇中に登場する作中バンド、Zestiasのエピソードになります。
※漫画版(インスタ版)は小説版よりも先行していますが…
まだ、Zestiasという名前すらなかった頃。
ふたりは、互いの顔より先に、ひとつの歌で出会った。
それは、誰も知らない歌だった。
__________
ある初夏の午前だった。
朝露の名残をわずかに含んだ芝生は、まだ陽の熱を受けきらず、ひんやりとやわらかかった。小さな公園の隅では、名も知らない草花が風に揺れ、古びたベンチの木目には、長い年月を雨に洗われた痕がうすく残っている。
そのベンチに、ひとりの少女が腰かけていた。
金色の髪が、午前の光の中でやわらかく透ける。膝の上に載せたギターへと視線を落とし、彼女――ルカは、誰に聴かせるでもなく弦をつま弾いていた。
人前で弾くことが嫌いなわけではなかった。
むしろ、誰かに聴いてもらえることは嬉しかった。
けれど、誰かに聴かせるための音を求められるたび、ルカは少しだけ息苦しくなった。
上手いね、と言われる。
きれいなメロディだね、と言われる。
それなのに、自分の中ではいつも、何かが足りなかった。
旋律は浮かぶ。
指は動く。
音はつながる。
それでも、その音がどこへ向かえばいいのか分からない。
まるで、言葉を待っているみたいに。
だからルカは、ときどきこうして、ひとりで知らない場所へ来てはギターを弾いた。
誰かに見せるためではない。
何かを完成させるためでもない。
ただ、場所に沈んでいる気配のようなものが、ふいに彼女の指先へ触れることがあった。
風の通り方。
草の揺れ方。
誰かがここで笑ったような気配。
泣いたような気配。
言葉にならなかった想いが、輪郭を持たないまま、ひっそりと空気の底に沈んでいる。
ルカは、それを拾うように弾く。
低く、ひとつ。
そこから、もうひとつ。
迷いながらも、どこか懐かしい響きが続いた。
そのとき、公園の入口から、もうひとりの少女が入ってきた。
赤い髪を初夏の風に揺らしながら、どこかあてもなく歩いてくる。目立つ色のはずなのに、その足取りは不思議なくらい軽く、まるで景色の切れ端のように、公園の空気へ溶け込んでいた。
セラは、行き先を決めて歩いていたわけではなかった。
歌うことを、ずっと続けてきた。
声を出すことも、言葉に音を乗せることも嫌いではない。
むしろ、歌っている時間だけは、自分が自分でいられる気がした。
けれど最近、どうしても拭えない違和感があった。
何かが足りない。
どこかが、はまらない。
褒められることはあった。
声がいいと言われることもあった。
うまく歌えたね、と笑ってもらえることもあった。
それでも、自分の胸の奥ではいつも、小さな空白が残った。
歌っているはずなのに、自分の声が、自分のいちばん深い場所まで届いていない気がする。
その空白の正体が何なのか、セラにはまだ分からなかった。
だからその日も、人の声から少し離れたかった。
いつもの道を外れて、少しだけ違う風の吹く場所へ行ってみたかった。
公園の隅に広がるクローバーを見つけたとき、ふと思った。
四つ葉でも見つけたら、何か変わるだろうか。
そんな小さな願掛けのような気持ちで、セラは芝生にしゃがみ込んだ。
誰に言われたわけでもない。
見つけたから何かが変わるわけでもない。
それでも彼女は、草の間を指先でかき分け始めた。
ひとつ、ふたつ。
似た形の葉を見つけるたびに、違う、と小さく息をつく。
そうして下を向いていると、不思議と心のざわめきが静まっていく気がした。
そのうちセラの唇から、言葉ともため息ともつかない、小さな声がこぼれた。
「朝露の残る、公園の隅で……」
誰に聞かせるでもない。
思いついた言葉を、確かめるように口の中で転がす。
「靴の先から、四つ葉をさがす……」
その瞬間だった。
自分の言葉の続きを、誰かのギターが知っていた。
セラの指が止まる。
はっとして顔を上げた。
声はもう出ていない。なのに旋律だけが、その詩の続きを待っているみたいに、やさしくそこで揺れていた。
一方のルカもまた、我に返っていた。
ただ弾いていたはずの旋律に、いつの間にか言葉が寄り添っている。
しかもそれは、自分の頭の中だけで鳴っているものではなかった。
確かに聞こえたのだ。
すぐ近くから。
まるで、最初からこのメロディに居場所を知っていたみたいな声が。
ルカが振り返る。
芝生の上、膝をついたまま固まっている赤い髪の少女と、目が合った。
セラもまた、見たことのない金色の髪の少女がベンチに腰かけ、ギターを抱えているのを見ていた。
しばし、ふたりとも動けなかった。
風だけが、芝生の上をわたっていく。
どこか遠くで自転車のベルが鳴った。
先に我に返ったのは、セラだった。
彼女は慌てたように立ち上がると、足もとの草むらに手を突っ込み、何かを摘み上げた。
四つ葉のクローバーだった。
けれどそれを見て微笑む余裕もなく、ただ戸惑ったまま握りしめる。
それから、ルカに何か言おうとして、結局ひとことも言えないまま、公園の出口へ駆けていった。
ルカもまた、突然の出来事に言葉を失っていた。
呼び止めなければ、という感覚だけが遅れて追いついてきた。
けれど、声は出なかった。
あの詩が、自分の旋律の続きを知っていた。
その事実だけが、胸の奥で静かに震えていた。
ルカは追わなかった。
追えなかった、というほうが近い。
去っていく赤い髪を見送りながら、彼女はまだ、自分の指先に残る不思議な震えを見つめていた。
いまのは、何だったのだろう…。
自分が拾ったメロディに、知らない誰かの言葉が重なった。
偶然にしては、あまりにも自然だった。
まるで、最初からひとつの歌だったみたいに。
⸻
その日から数日、セラの中には妙なざわめきが残り続けた。
あの公園のこと。
金色の髪の少女のこと。
歳は、自分と同じくらいだろうか。
そして、思い出そうとするほど曖昧になる、あの旋律のこと。
あれは夢だったのかもしれない…。
そう思おうとしても、手のひらに挟んで持ち帰った四つ葉のクローバーが、たしかにあの日が現実だったと告げていた。
押し花にするでもなく、本に挟むでもなく、セラはそれを机の上へそっと置いたまま、何度も眺めた。
どうしてだろう。
四つ葉を見つけた嬉しさよりも、見つける前の時間のほうが、胸に残っている。
草をかき分ける感触。
思いついた言葉。
そして、知らない誰かのギターと重なったあの一瞬。
何かを思い出しかけているようで、思い出せない。
自分のものではない懐かしさが、胸の奥にひっかかっていた。
⸻
数日後、セラはまた同じ公園へ足を運んでいた。
初夏の光は少しだけ濃くなり、草の緑も、前より深く見える。公園はあの日と変わらず静かだったが、ベンチに金色の髪の少女の姿はない。
セラは立ったまましばらく辺りを見回したあと、諦めきれないようにベンチへ近づき、そっと腰を下ろした。
木の座面が、わずかに温かい。
ここに、あの子が座っていた。
あの日、ここで。
セラは視線を落とし、膝の上で指を組んだ。
そして、気づけばまた、あのときの言葉を小さく口ずさんでいた。
「朝露の残る……公園の隅で……」
自分でも不思議なくらい、するすると続きが出てくる。
「靴の先から、四つ葉をさがす……」
「……素敵な詩ですねえ」
不意に背後からかかった声に、セラははっとして振り向いた。
そこには、ひとりの老婦人が立っていた。
白髪は短く、やわらかく波打つように整えられていた。桃色のブラウスが、初夏の木漏れ日の中で明るく映えている。年齢を重ねているのに、どこか少女の面影を残した、やわらかな目をしていた。
「ごめんなさいね。聞くつもりじゃなかったの。でも、あんまり懐かしい感じがして」
老婦人はそう言って微笑み、セラがよけると、その隣へ静かに腰を下ろした。
「ここ、よくいらっしゃるんですか」
セラがたずねると、老婦人は公園の芝生へ目を向けた。
「ええ。長いのよ。もう……そうね、五十年になるかしら」
五十年。
その数字の重みに、セラは思わず息を止める。
老婦人は遠くを見るようなまなざしのまま、ゆっくりと言葉を続けた。
「高校生のころ、ここでよく会っていた人がいたんです。私は女子校で、あの人は男子校。帰り道が少しだけ重なる日があってね。それで、ここに寄って、他愛もない話をして……」
ふっと、笑う。
「四つ葉のクローバーを探すのが好きな人だったの。でもね、見つけるのは本当に下手で……いつも先に見つけるのは、私のほうでした」
老婦人は、懐かしそうに目を細めた。
「それでもあの人、負けるたびに悔しそうに笑ってね。『次こそは僕が見つける』って、毎回同じことを言うの」
セラは、黙ってその横顔を見つめた。
老婦人の目には、いまこの場所にいない誰かが、たしかに映っているように見えた。
「でも、ある日から来なくなったんです」
声が少しだけ揺れる。
「事故でした。知らされたのは、ずっとあと。私は何も知らなくて……待っていれば、また来ると思っていた」
風が吹く。
クローバーが一斉に揺れた。
「変でしょう。もうこんな年なのに、いまだに初夏になると、足がここへ向いてしまうの。最初の頃は毎日のように来ていました。いまはさすがに毎日ではないけれど……それでも、どうしても」
老婦人はそこで、セラのほうを見た。
「さっきの詩……不思議ね。まるで、あの人がここで言えなかったことみたいだった」
その一言で、セラの胸の奥にあったざわめきが、急にはっきりと輪郭を持った。
――これは、自分の言葉じゃない。
そう思った。
借りてきたような懐かしさ。
知らないはずなのに、知っているような痛み。
四つ葉を探していた“君”の横顔を見つめる視線。
あの詩は、きっと。
この人を見ていた誰かの想いだ。
セラは無意識に、机の上に置いてきた、まだ押していない四つ葉のクローバーを思い出していた。
見つけたことより、その前の時間のほうが胸に残る理由も、いまなら少し分かる気がした。
老婦人が立ち上がる。
「変な話をしてしまいましたね。ごめんなさい」
「いえ……」
「でも、ありがとう。久しぶりに、あの頃の風を思い出しました」
そう言って、公園の出口へ歩き出す背中は、どこか晴れやかでもあり、ひどく寂しそうでもあった。
セラはその背を見送りながら、しばらく動けなかった。
歌が、ある。
まだ形になっていない歌が。
この場所に残っている。
そしてたぶん、あの日の金色の髪の子も、それを拾っていた。
⸻
翌日。
セラはまた公園に来ていた。
自分でも笑ってしまうくらい、落ち着かなかった。
もし何も起きなかったら。
もしあの日のことが、ただの思い込みだったら。
それでも確かめたかった。
ベンチに、あの子はいない。
セラは小さく息をついてから、あの日と同じように芝生へしゃがみ込んだ。草を指先でかき分ける。少し湿った土のにおいがする。初夏の風が、髪をなでる。
そして彼女は、小さく口ずさんだ。
「朝露の残る、公園の隅で……」
昨日よりもはっきりと、言葉が続いていく。
「靴の先から、四つ葉をさがす
ひざを折るたび、土の匂いして……」
またしても夢中になっていた。
自然にのめり込む自分がいた。
歌うほど、その場の景色が、自分の記憶ではない色を帯びて胸に浮かぶ。
制服の袖口。
笑い声。
少し照れた横顔。
言えなかった言葉。
指先が、何かに触れる。
セラは息を呑んだ。
草むらの中に、ひとつだけ。
小さな四つ葉のクローバー。
「……見つけた」
セラは思わず、顔を上げた。
まぶしい日差しを受けたその向こうから、徐々に輪郭が浮かび上がる。
それは、奇跡みたいな光景だった。
そこに、ベンチへ腰かけたルカがいた。
ギターを抱えている。
金色の髪が陽を受けて、やわらかく光っていた。
ふたりはしばらく、何も言わずに見つめ合った。
先に口を開いたのは、ルカだった。
「……また、来てくれる気がしていました」
セラが目を瞬かせる。
「こ、こんにちは……わ、私も、です」
言ってから、少しだけ間が空いた。
何に対して「私も」と答えたのか、セラ自身にもよく分からなかった。
けれど、その言葉だけは不思議なくらい、胸の奥にすとんと落ちていた。
ルカは少しだけ照れたように視線を逸らし、それからギターのネックを軽く撫でた。
「この場所で、あのメロディをもう一度弾いたら……赤い髪の子に会えるかもしれないって、そんなことを考えていました」
その言葉に、セラはようやく息をつけた気がした。
自分だけじゃなかったのだ。
あの日のことが、ずっと胸に残っていたのは。
セラは立ち上がり、手の中の四つ葉を見せた。
「たぶん、この歌……私たちのものじゃないと思うんです」
ルカが静かにうなずく。
セラは昨日の老婦人の話をした。ここで会っていた高校生たちのこと。突然途切れてしまった時間のこと。そして、それからもこの公園へ通い続けた五十年のこと。
ルカはひとことも挟まず、最後まで聞いた。
話し終えたあと、ふたりの間にしばし沈黙が落ちる。
公園は静かだった。
けれどその静けさの中に、いくつもの気配が揺れているように感じられた。
「……やってみる?」
ルカが、そっとたずねる。
セラは四つ葉を胸元へ寄せ、小さくうなずいた。
ルカが最初の音を置く。
最初に出会ったあの日より、ずっとはっきりしていた。
あの場所に沈んでいた記憶の輪郭をなぞるように、旋律がゆっくりと立ち上がる。
セラは目を閉じて歌い出した。
朝露の残る
公園の隅で
靴の先から
四つ葉をさがす
セラの声が、初夏の空気に静かに溶けていく。
ルカのギターがその後ろを支え、前へ押し出し、やさしく受け止める。
歌うほどに、ばらばらだった言葉と旋律が答え合わせをしていくように、世界の色が少しずつ変わっていった。
風がやむ。
木々のざわめきが遠のく。
陽の光が、どこか薄い膜を通したようにやわらかくなる。
セラは目を開けた。
ベンチの向こう、クローバーの群れの向こうに、ひとりの少年が立っていた。
学生服姿だった。
輪郭はたしかにそこにあるのに、風景に半分溶け込んでいるようでもある。
初夏の淡い光の中に立ちながら、彼だけが五十年前の時間をまとっていた。
セラは息を呑んだ。
けれど、不思議と恐怖はなかった。
胸の奥へ流れ込んできていた懐かしさが、目の前の少年へ静かにつながっていく。
この人だ。
この歌が、ずっと探していた想いの主。
そう分かった瞬間、セラは歌を止めなかった。
止めてはいけないと、分かった。
ルカもまた、目の前の光景に息を呑んでいた。
けれど指は止まらなかった。
むしろ、少年の姿が見えた瞬間、弾くべき音の行き先がようやく分かった気がした。
彼を、ここに留めるためではない。
彼の想いを、最後まで届けるために。
ルカは何も言わず、弾き続けた。
少年は驚いたように目を見開き、それからどこか懐かしいものを見るように、公園の隅々へ視線を巡らせた。最後に、その目が四つ葉を持つセラの手元へ落ちる。
ほんの少し、笑った気がした。
そのときだった。
公園の入口から、誰かが息を切らせるように近づいてくる気配がした。
昨日の老婦人だった。
まるで何かに導かれるように、彼女は公園の中ほどで足を止める。
セラとルカを見たわけではなかった。
まっすぐ、その少年の立つ場所を見ていた。
老婦人の目から、たちまち涙があふれる。
「……うそ」
震える声だった。
「そんな……」
少年は、ゆっくりと彼女のほうを向いた。
その顔は若いままなのに、老婦人は一瞬で分かったのだろう。五十年という時間の向こうに置いてきたはずの面影が、たしかにそこにあった。
セラは歌い続けた。
歌わなければ、この時間はほどけてしまう気がした。
よつばのクローバー
この辺りだよ
きみいろのクローバー
その歩幅に
老婦人は、泣きながら笑っていた。
少年が何かを言おうとする。
けれど声にはならない。
代わりにそのまなざしが、長い時間をかけて置き去りにしてしまった思いを、まっすぐ伝えていた。
待たせてしまった。
来られなくなった。
それでも、忘れていなかった。
老婦人は一歩、また一歩と近づいた。
「ずっと……待ってたのよ」
それは責める声ではなかった。
責めたいはずの五十年さえ、とうに通り越した、深くやさしい声だった。
少年の目が揺れる。
その瞬間、セラの胸へ、言葉にならない思いが雪崩れ込んできた。
――見つけたかったのは、四つ葉じゃない。
――君と、一緒に探す午後だった。
――それが、幸せだった。
セラの声が少しだけ震える。
けれどルカのギターが、すぐ隣でしっかりと支えてくれた。
もしも風が
すべてさらっても
手のひらに触れた
跡は消えない
少年は、そっと手を差し出した。
その指先には、小さな四つ葉のクローバーがあった。
五十年前、見つけられなかったもの。
五十年前、渡せなかったもの。
老婦人は息を呑んだ。
震える手で、それを受け取る。
少年の指はもう、ほとんど光のように薄れていた。
それでも、四つ葉だけはたしかに、老婦人の手のひらに残った。
「……ようやく」
老婦人は両手で四つ葉を包み込む。
涙をこぼしながら、それでも少女のように笑った。
「ようやく……見つけられたのね」
少年は、ほんの少しだけ困ったように笑った。
まるで、あの日と同じように。
負けるたび、悔しそうに、それでも優しく笑っていた高校生のまま。
そして、その唇がかすかに動いた。
声にはならない。
けれど老婦人には、きっと届いていた。
ありがとう。
待たせて、ごめん。
ずっと、好きだった。
老婦人は四つ葉を胸元に抱きしめた。
「うん……」
涙に濡れた声で、彼女は小さくうなずいた。
「知ってたわ」
少年の目が、静かに揺れた。
その表情から、長い長い時間の悔いが、少しずつほどけていく。
歌が終わりに近づくにつれ、少年の姿は淡い初夏の光の中へ少しずつ薄れていった。
けれどその表情は、もう寂しさだけではなかった。
しあわせのクローバー
その歩幅に
こぼれそうなもの
失くさないままで
きみいろのままで
いまも揺れている
最後の音が消える。
風が戻る。
木々がざわめく。
遠くで子どもの笑い声が聞こえる。
そこにはもう、少年の姿はなかった。
ただ、老婦人の手の中には、小さな四つ葉のクローバーだけが残っていた。
彼女はそれを胸元に抱きしめたまま、泣きながら、けれど穏やかに笑っていた。
セラは胸の奥が熱くなるのを感じながら、ルカのほうを見た。
ルカもまた、ギターを抱いたまま、しばらく何も言えずにいた。
ふたりとも、まだ分からない。
自分たちに何ができるのか。
なぜこんな歌が生まれるのか。
これから先、どんな想いと出会うのか。
ただひとつだけ、たしかなことがあった。
ふたりで奏でたその歌が、誰かの長い未練をようやくほどいたこと。
そして、誰にも知られなかったはずの想いが、たしかにこの世界で一度、歌として形を持ったこと。
___
それが、始まりだった。
まだ、Zestiasという名前すらなかった頃。
ふたりは、互いの顔より先に、ひとつの“誰モ知ラナイ歌”で出会ったのだった……。
世界にはまだ、誰にも聴かれていない歌が眠っている。
よつばのクローバー編
(終わり)
Ending Theme♪
Song:「 よつばの時 」
Artist:ZESTIAS with 翠葉学園高等学校合唱部
Lyrics:Sera Ruby
Music:Luka Starlet
https://youtu.be/Od3RIDd1vGM?si=19WMgfKay6HwcAjk
…
続編はいずれまた




