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第一章:十九回目の月光—第6話:黄金の咆哮—偽りの断罪

いつもお読みいただきありがとうございます!


第6話は、ついにカズが「十九周目の真実」へと足を踏み入れる、怒涛の反撃回です。

■前回までのあらすじ

瀕死のカズを前に、エリスがその内に秘めた「怪物」を解放。**赤眼せきがん**の暗殺者へと変貌し、実の姉であるアリスと死闘を繰り広げます。しかし、限界を超えたエリスは力尽き、絶体絶命の窮地へ。

その時、血の海に沈んでいたカズが、黄金の粒子と共に再び立ち上がる――。

【公式X(旧Twitter)公開中!】

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キャラの意外な弱点や、武器の詳細など、ぜひチェックしに来てください!

作者:(くろねこパパ):https://x.com/k7nature1


 血の海から立ち上がったカズ。


 その身体から溢れ出すのは、夜の闇を物理的に押し返すような、圧倒的な**「黄金の魔力」**だった。


 それは、2100年の高度な魔力工学マギ・テックで定義される「魔力流」とは明らかに一線を画していた。

 より原初的で、より神聖な、魂そのものを燃料として燃え上がる劫火ごうか


「……あり得ない。貴様は魔力を持たぬ『欠陥品』として……イデア・ジェネシスからも見捨てられた男のはずだ」


 ガードレールの上に立つアリスの声に、隠しきれない動揺が混じる。


 彼女が握る名刀『三日月宗近』の刀身が、カズの放つプレッシャーに共鳴し、悲鳴のような金属音を上げた。


「……見捨てられた⋯か、ああ、そうかもしれないな。十八回、俺は何も持たず、ただ無様に殺され続けてきた」


 カズは意識を失ったエリスを、壊れ物を扱うように優しくアダムへと預けた。


 その瞳は、黄金の光を宿しながらも、極寒の静けさを保っている。


【「だが、十九回目は違う。……エリスが、俺のためにその身を削ってまで戦ってくれた。その想いに応えられないのなら、俺に生きる価値なんてない」】


『――ふん。ようやく『所有者』としての自覚が芽生えたようじゃな、お主』


 カズの肩に浮遊する黄金の精霊が、傲慢に胸を張る。

 その姿は美しくも、放つ威圧感はアリスのそれを遥かに凌駕していた。


『アリスと言ったか。銀髪の小娘よ。お主の振るう『銀の雷』など、我の加護を得た獅子の前では、夏の羽虫の羽ばたきにも等しいわ』


「黙れ、化け物……!!」


『ほう、お主はまだ気づいておらんのじゃろが、この先のためじゃ、少し助言をしといてやろう、アリスとやら、お前にも宿りがおる事を自覚せにゃ、その身を滅ぼすぞ。』


「なっ!何を訳のわからん事を⋯」

そう言うとアリスは後ろに跳んだ。


 磁気加速鞘じきかそくさやが臨界まで励起れいきされ、青白い稲妻が夜空を裂く。


 彼女の最高奥義、電磁抜刀術のさらに先――。


「【極光・三日月オーロラ・ミカヅキ】!!」

 

一閃。


 放たれた斬撃は光速に近い速度で空間を焼き切り、カズの首筋を正確に狙う。

 アダムが「っ、カズ!!」と叫ぶが、その声すらも斬撃の速度には追いつかない。


 だが。

 カズは動かなかった。ただ、右手を静かに前方に突き出しただけ。


――パキィィィィィィィンッ!!!!


 耳をつんざくような硬質な音がハイウェイに響き渡った。


 アリスの放った光速の刃が、カズの手のひら数センチ前で、見えない黄金の障壁に阻まれ、文字通り「粉砕」されたのだ。


「……なっ!?」


 アリスの瞳が、大きく見開かれる。

 物理的な衝突ではない。彼女の放った電磁魔力が、カズの黄金の魔力に「喰われた」のだ。


「……言ったはずだ、アリス。あんたの言う真実が何であれ、俺はもう逃げない。そして、エリスも渡さない」


 カズの手のひらから、黄金の光が渦を巻いて収束していく。


 それは一振りの、光り輝く**「黄金の長剣」**へと形を変えた。


「これは、俺の魂の形だ。……受け取ってくれ、アリス」

 カズが一歩、踏み出す。


 その瞬間、アスファルトに刻まれたクレーターが黄金の光で埋め尽くされ、夜の闇が真昼のような輝きに塗りつぶされた。


「【獅子王の審判レオ・ジャッジメント】」


 カズが剣を振り下ろす。

 放たれたのは、暴力的なまでの純粋なエネルギーの奔流。


 アリスは咄嗟に三日月宗近を盾にするが、黄金の衝撃波は彼女の防御を容易く貫通し、彼女の身体を数百メートル後方のビルへと叩きつけた。


「ガ、ハッ……!!」


 ビルの壁面に深くめり込んだアリスが、口から鮮血を吐き出す。


 その右目尻の泣きぼくろが、絶望に歪む。


「……この……力……。あり得ない……。イデアの深層に眠る……始源の魔力だと……いうのか……?」


 カズは追撃の手を緩めなかった。


 周囲でスコープを覗いていたスポッターたちが、パニックを起こして撤退を開始するのがわかる。


 だが、カズの意識はアリスただ一人に向けられていた。


「アリス、一つだけ答えろ。……なぜ、エリスを『父親の仇』と呼んだ?」


 カズの声が、冷たく響く。

 アリスは苦しげに顔を上げ、憎しみと悲しみが混ざり合った視線をカズに向けた。


「……ふ、ふふ……。お前は何も知らないのだな。……あの夜、父の心臓を、あのシルバーのベレッタで撃ち抜いたのは……誰だと思っている?」


 カズの心臓が、不気味なリズムで跳ねた。

 シルバーのベレッタ。六年前、俺が彼女に贈った「守るための銃」。


「……エリスが……やったと、言うのか? 有り得ない。」


「そうだ。……あの娘の身体には、怪物が潜んでいる。時折、意識を失い、赤眼せきがんを輝かせ……周囲のすべてを殲滅せんめつする、血に飢えた『もう一人のエリス』がな!!」


 アリスの叫びは、悲鳴に近かった。


「私たちが一族を皆殺しにしたのではない! あの日、父が研究していた禁忌のウイルス……『イデア・ゼクス』が暴走し、エリスを依代よりしろにしたのだ! 私は……あの子を、エリスを救うために……殺さなければならないのだ!!」



 衝撃の事実?が、駐車場の風に乗ってカズの耳に届く。

 十八回のリープで、一度も辿り着けなかった「真実の一端」。


『――ほう。面白いことを言う。……小娘、お主の目は節穴か?』


『我を誰だと思うておる、我はエリスの守護精霊ぞ、くだらん何かに洗脳されよったか』



 黄金の精霊が、アリスの鼻先まで飛んでいき、嘲笑うように言った。


『お主が見たのは、ただの『結果』に過ぎぬ。……カズよ、気付いているか? この十九周目、お主が目撃した『金髪の男』……。あ奴こそが、エリスの中の怪物を呼び覚ます『鍵』なのじゃ』


「金髪の、男……?」


 カズの脳裏に、あの書庫の窓の外で見た、不気味に輝く金髪の男の影が蘇る。


 アリスもまた、その言葉に目を見開いた。


「……金髪の……男? ……そんな者は、記録には……」


「アリス、記録なんて関係ない。……俺はこの目で見たんだ。俺の家族を殺し、エリスを地獄へ突き落とした本物の黒幕を」


 カズは剣を消し、アリスへと歩み寄る。


 その時。

『――カズ! まずいぜ、お喋りはそこまでだ!!』


 アダムの叫びと共に、ハイウェイの各所に設置された監視カメラが一斉に赤い光を放ち、周囲の無人輸送車オート・カーが狂ったようにエンジンを吹かし始めた。


『ハッキングだ! それも、超高度なヤツ……。このハイウェイそのものが、敵の『罠』に書き換えられてやがる!!』


 周囲のビル群のネオンが消え、代わりに不気味な真紅の警告灯が点滅を始める。


 ハイウェイの中央、アスファルトが割れ、そこから不気味な「黒い触手」のような機械部品が這り出してきた。


「……来たか。十九周目のイレギュラー……」


 カズはアダムの元へと駆け戻り、意識を失ったエリスを再び抱き上げた。


 エリスの肌は、今はもう冷たくない。彼女の瞳は青く戻り、安らかな寝息を立てている。


「アダム、脱出するぞ! 目的地を書き換えろ、アダムの隠れ家じゃない。もっと『深い』場所だ!」


『了解だ、親友! ……ったく、お前といると退屈しねえな!』


 アダムが投げた煙幕弾が、ハイウェイを白い闇で包み込む。

 カズは去り際、瓦礫の中に横たわるアリスを一瞥した。


「アリス、死ぬなよ。……俺が、エリスの中の『怪物』も、その元凶も、すべてを殲滅せんめつしてみせる。あんたの信じる偽りの真実を、俺が叩き壊してやる」


 黄金の光がハイウェイを駆け抜け、二人の影は夜の闇へと消えていった。


 残されたアリスは、震える手で刀を支え、遠ざかる黄金の残光を見つめていた。


「……カズ……。お前は……一体、何者なんだ……」


 空には、不気味に欠けた月が、冷たく二人を照らし続けていた。


     *


 数十分後。

 スラム街の奥深く、地下深くへと続く古いメンテナンス通路。


 カズはアダムに肩を貸されながら、ようやく安全な場所へと辿り着いた。


「……カズ、傷は大丈夫か? 精霊の力で治ったとはいえ、精神的な消耗はデカいだろ」


「ああ……。それより、精霊。……教えてくれ。俺の中に宿っている『力』の正体を。そして、魔力を持たぬ人間に宿れないという、その理由を」


 カズが問いかけると、黄金の精霊は暗い通路の中で、一際明るい光を放ち始めた。


『――ふむ。そろそろ教えてやってもよい頃合いじゃな。……カズ、お主は自分が『魔力なし』の欠陥品だと思っていたようだが、それは大きな間違いじゃ』


 精霊はニヤリと不敵に笑う。


『お主の魔力は、あまりにも巨大すぎて、2100年の未熟な測定器では感知できなかっただけなのじゃ。……お主の魂は、この世界の時間を巻き戻すたびに、その熱量を増してきた。……十八回の死は、お主という『器』を鍛え上げるための、苛烈な鋳造ちゅうぞう工程だったのじゃよ』


 カズの身体が、微かに震えた。


 十八回の死。あの地獄のような苦しみは、すべてこの力に目覚めるための「儀式」だったというのか。


『そして、お主が目醒めた真の力……。それは、イデア・ジェネシスが追い求めた、全知全能の因子――【アルファ・イデア】の一部じゃ』


「アルファ……イデア……」


『そう。……そして、エリスの中に眠る『怪物』こそが、その対極に位置する破壊の因子――【オメガ・イデア】。……お主ら二人は、惹かれ合う運命にあり、同時に……一方が目醒めれば、もう一方が暴走する、呪われた双子星なのじゃよ』


 精霊の言葉が、カズの胸に重く突き刺す。

 自分が強くなればなるほど、エリスが闇に飲まれていく?


「……そんな運命、認めない」


 カズは腕の中のエリスを、より一層強く抱きしめた。


「俺がアルファで、エリスがオメガなら……。二つを合わせて、新しい運命を書き換えてやる。……それが、十九周目の俺の、たった一つの『我儘わがまま』だ」


 カズの決意に呼応するように、エリスの指先がピクリと動いた。

 ゆっくりとまぶたが持ち上がり、そこには――。


「……せん、ぱい……?」


 澄み切った、あの美しい青い瞳が、カズを見つめていた。


「……ああ。……おかえり、エリス」


 地下通路の暗がりに、小さな、しかし確かな「ぬくもり」が灯った。


 だが、カズは知っていた。

 ハイウェイでの出来事は、ただの前哨戦ぜんしょうせんに過ぎない。


 エリスを狙うのはアリスだけではない。そして、自分たちを「実験体」としてもてあそぶ、真の黒幕が動き出していることを。


「行こう。……ここからが、本当の戦いだ」


 十九周目の月光は、まだ沈む気配を見せなかった。


(第1章 パート7へ続く)

【あとがき:活動報告】


最後までお読みいただきありがとうございました!

カズの覚醒、そしてアリスから語られた「絶望的な真実」。

十八回の死が「鍛造たんぞう」だったという精霊の言葉は、物語の大きな根幹をなす要素です。

そして……ついに!

本日、X(旧Twitter)にて**「カズ」と「エリス」のステータスカード**を公開しました!


ステータスカード公開中!作者X:https://x.com/k7nature1


お待たせいたしました。本来最初にやることなのでしょうが……汗

メッセージカード風のデザインで、彼らの身長、体重、好物からちょこっと裏話しまで、データを載せています。

今後、物語の中では設定の無い各キャラの衣装や日常は何してるの?的なワンシーンをイラストにして行けたらと思いますのでお楽しみにしててください。

その他、使い情報等も投稿予定ですので、ご一緒にお楽しみ下さい。

面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークや評価、感想で応援してください!

皆さんの声が、カズの反撃をさらに加速させます!

■次回予告:第1章 第7話『潜伏の夜、刻まれる銃声』

地下に潜伏したカズたち。精霊から語られる「アルファ・レオン」の真の力とは?

そして、目覚めたエリスがカズに放った、意外な「最初の一言」にカズは……。

次回も、紅茶を片手にお楽しみください!

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