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4話 ちっこい女の子



「え、あ、俺、薬師だから…………スキルオーブは持ってない……かな」

「…………」


 ま、まぁいい、次だ、次。


「あー、ごめんね、私薬師だから…………」


 つ、次。


「僕戦えないからね……持ってないかな」


 …………次。


「無い」


 …………。


 ……そうかそうか。

 考えてみれば薬草を買いに来るのは非戦闘職であることが多い。

 以前よりもプレイヤーのレベルが全体的に上昇し、それに伴いステータスも増加しているため、薬草の使用では焼け石に水になってしまう場合が多くなってきたようだ。

 

 そこで使用されるのが薬草やらなんならを調合して出来上がる回復薬であり、これは《薬師》によって作られる。

 しかし、それのお陰で《薬師》などの需要は急増したため、結果的に薬草の需要も増え、売上的には変化が無い。


 もしかしたら来てる人の数は減っているのかもしれないが、毎回売り切れてはいるので実感は無い。

 薬草を使う生産職の皆さんがこぞってここに集まっているという事なのだろう。


 うん、ありがたい、ありがたいんだけど…………。

 ごめん、もうちょっと戦闘職の人も来て欲しかったかもしれない。


 ただ、聞いたところによると、俺が欲しいスキルオーブをドロップするモンスターは厄介な奴らばかりらしい。


 まず、【疲労軽減】はゴーストと言われるモンスターからドロップする。

 こいつは物理攻撃が一切効かず、魔法攻撃などでしかダメージを与えられないのにも関わらず、魔法攻撃を防ぐ魔法を使ってくるため、物理攻撃を得意とする職業ではまず倒せない上、魔法攻撃を得意とする職業でも好んで戦ったりはしないらしい。

 聖水などのそう言ったモンスターを倒す為のアイテムもあるが、そこまでして倒す程旨味のあるモンスターでは無いらしい。

 ちなみに買取額は5千リルだ。


 次に【薬草採取】

 これはタートルと言われるモンスターが落とす。

 こいつはレアモンスターと言って、稀にしか出現しないモンスターである。

 

 こいつも例に漏れず倒しにくい奴で、とにかく硬いらしい。

 物理攻撃も魔法攻撃も全然効かないし、効いたとしても生命力のステータスが馬鹿みたいに高いらしく、中々倒せないらしい。

 ちなみに買取額は10万リルだ。


 最後に【素材鑑定】だが、こいつはまだどのモンスターからドロップするか分かっていないらしい。

 戦闘をしない薬師集団から聞いた話だし情報が古い部分もあるかとは思うが、一応同じ生産職の情報だし、参考にはなるだろう。


 と、言うことで、薬師の皆様どころか普通に戦闘職の皆様でも持っている人は少ないんじゃないかとの事でした。


 まぁいいよ、ちょっと目論見は外れたけど、地道にやっていけばいい。というか俺は元々そういう人間だ。

 薬草の件が成功したから今回もその調子でいけるかと思ったが…………少し調子に乗っていたかもしれない。


 それからも残っている薬草を売るついでに聞き込みをしていたが、やはりスキルオーブを持っている者は現れず、ついに薬草の在庫は底を尽いてしまう。


「はーい、薬草売り切れでーす」


 俺がそう言うとまだ並んでいたプレイヤー達は落胆するような声を上げ、その中の数人は俺の横にいるNPCに話しかけてから帰っていった。

 仕方が無くそっちから買っているのだろう。


 俺もがっかりした様子で帰る準備をしていると、突然、カウンターが力強く叩かれる。

 そして、向こう側から少し高めの声が聞こえてくる。


「ちょっと、薬草、私にも売りなさいよ!」


 どうやらその声の主は薬草を買いに来たらしい。

 なんともまぁ面倒くさいな。

 もう売るための薬草も無くなってるし、何とか穏便に帰ってもらうしか無いな。


 とりあえず声の主に顔を見せるため、俺はもう一度台の上に登る。


「すいません、もう薬草は売り切れてまして、またの機会を…………ってあれ?」


 周りを見渡すも人影はどこにも見当たらない。

 居るのは俺の隣でにこやかに佇んでいるNPCくらいだ。


「え、なに、今の声……まさかお前!」

「な訳ないでしょ、こっちよ、こっち!」


 そう言いながら俺の視界の下の方を動く何かが掠める。

 その声に従うままに俺は少しカウンターから乗り出して下の方を見る。


 そこには…………なんかちっこい女の子がぴょんぴょん飛び跳ねていた。


「あー、えーっと、お姉ちゃん、一人で出歩いちゃ危ないよ? お母さん何処かな?」

「あ、えっと、はぐれちゃって…………って、誰が迷子の子供よ! っていうか、見た目だけで言ったら貴方もあんまり変わらないでしょっ!」


 おうおう、やかましいな。

 女の子は盛大なノリツッコミをしながらこっちを指さして怒っている。


 このゲームは身体を好きに変えることができるのでこういう体型の人がいても何らおかしくはないのだが、ステータスにマイナス補正がかかるため、今まで見たことが無かった。

 俺以外にもこんな奴がいるんだな。


「まぁ、ともかく、もう薬草は無い、さ、帰った帰った」

「…………貴方、これを見ても同じ事が言えるかしら?」


 そう言ってその女の子は懐からあるものを取り出した。

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