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話題は光のごとく

「こ、こんなにたくさんのおひねりを貰えるなんて……! 夢みたいだよ! 僕に協力してくれて、本当にありがとう!」

「どういたしまして――って言いたくもあるけど……。頑張ったのはバトラー君とルトちゃんで、私は大したことはしてないよ」

 溢れんばかりの貨幣を自身のカバンの中に収めながら、バトラー君はお礼の言葉を口にする。


 私は彼の背を押しただけであり、見守っただけ。

 チャンスを見逃さずに成功できたのは、彼の努力とルトちゃんの協力のおかげだろう。


「それはそうだけど……。でも、君からチャンスを貰わなければ、僕はこんなに賛辞を貰うことはできなかった。未熟だってことを、まざまざと突きつけられた気分だよ」

「未熟だって理解できたことも、大切な経験だと思うよ。今回の経験は、きっと君をもっと立派にしてくれる。いつの日か、大勢のお客さんの前で芸をしているところを見てみたいな」

 大道芸の振り返りをしつつの会話を楽しんでいると、大きな帽子を被り、杖を手に持つ魔導士と思われる人物たちの集団が視界に映りこむ。


 きょろきょろと周囲を見渡しているところを見るに、何かを探している様子。

 先頭にいる人物が落ち込むような仕草を取る中、私たちの存在に気付いた魔導士が歩み寄ってくる。


 バトラー君とルトちゃんの芸は、想像以上の効果をもたらしたようだ。


「失礼、珍しい芸をする大道芸人が来ているという話を聞いたのですが……。あなた方のことでしょうか?」

「め、珍しい芸? あ、まあ、コボルトとの芸が珍しくないかと言われたら、絶対そんなことないもんね。そうなります――で、良いのかな?」

 困ったような視線をバトラー君が向けてくる中、私はじっと、離れた場所で待機している魔導士たちを見つめていた。


 あの中に知人がいる。

 きちんと話を進めれば、オリハルコンへと続く道が大きく近づきそうだ。


 私がじっと見つめていることに気付いたのか、落ち込むような仕草を取っていた魔導士が見つめ返してくる。

 最初は疑問符を浮かべるような表情をしていたが、やがてはっとしたような表情になったので、その人物に笑顔を向けることにした。


「実は、我らが魔導士ギルドで、その芸を披露していただきたいと考えているのですが……。お時間等ございましたら、引き受けてくださると……」

「ま、魔導士ギルドで!? それは光栄なことですが……。僕たちのような者がよろしいので――」

「し、失礼、横から会話に割り込ませてもらいます。や、やっぱりラクリマさんじゃないですか……。どうしてこのような場所で、大道芸人など……!?」

 バトラー君たちの会話に割り込んできたのは、茶色い髪をリボンで纏め、二つのおさげにしている女性の魔導士さん。


 彼女と会話をする機会はあまりなく、顔を合わせることもほとんどなかったが、覚えてくれていたようだ。


「久しぶり、マギアちゃん。まあ、私にも色々と事情があって……。街に入りやすくするために、バトラー君――モンスターを連れた大道芸人さんのお手伝いをしていたんだ」

「そうなので――って、よくよく見たら、このコボルトはルトさんでは――ああ、なるほど、この子を連れて街中を歩くのは少々難しいですからね……。だとしても、今回の手法は回りくどくは思えますが……」

「街の人たちのことを考えれば、多少は遠回りしなくちゃ。モンスターたちに恐怖を覚えている人たちにとっても、魔導士ギルドにとっても、ルトちゃんにとっても……ね」

 ルトちゃんを街に入れるのも、街の外で待機させておくのも問題が発生しかねない以上、人々に認められる形で街に入るしか方法はなかった。


 ほぼ確実に魔導士ギルドへとルトちゃんを連れ込む以上、あらぬ疑いを彼らにかけてしまう可能性もある。

 知名度を上げておくのは、双方にとって都合が良いのだ。


「ええ、ご配慮感謝いたします。この街に来たということは、お姉さまに会いに来たのですよね? 私が取次ぎをさせていただきますよ」

「それは嬉しい――んだけど、主目的は別にあってね。ちょっと、耳を貸してくれる?」

 近寄って来てくれたマギアちゃんに、オリハルコンのことを小声で尋ねる。


 もちろん名称は出さず、特徴だけで説明をするのだが、彼女はそれを聞くと同時に動揺を見せた。

 何かを知っているのは確実だが、何をそんなに慌てるのだろうか。


「ど、どこでそのことを知ったのですか……? 買い付けに行った採掘地の人たちが、喋ってしまったのであれば――」

「ん? ああ、過去を見た時にいた魔導士さんって、マギアちゃんのことだったんだ。君のことは、誰からも聞いていないよ。スターシーカーの力を借りたの」

 鞘に収まった状態の剣を軽くゆすって見せると、マギアちゃんは安心した様子で息を吐いた。


 オリハルコンを買ったことは、可能な限り秘密にしておきたかったらしい。

 それの情報が少しでも洩れれば、買い求めようとする者だけでなく、不埒な考えを抱く者が現れる可能性を危惧した結果、緘口令を敷くことにしたようだ。


「この場で長々と話すことではありませんし、魔導士ギルドへと行きましょうか。あなた方が真に求める物であるか、確認もしなければなりません」

「だね。それじゃ、ルトちゃんも行こうか。もちろん、バトラー君もね?」

「う、うん、分かった」

 魔導士ギルドの方々に引率される形で、私たちは噴水広場から出る。


 道行く人々がルトちゃんの姿に気付くも、警戒を見せる様子はなく、むしろ近寄ってきて撫でたがる人も現れたほど。

 話題や噂の広まりは早いものだが、まさかこれほどまでとは。


 バトラー君と共に行なった大道芸が、それだけ人々の心を打ったということだろう。

 道行く人々との交流を続けながら道を進んでいると、やがて正面に変わった特徴を持つ建物が現れた。


 一階、二階部分はこれまでに見てきた建物とそう変わらないが、三階中央部分に置かれている丸いドーム状の部分が何よりも注目を引く。

 あれが魔導士たちの総本山、魔導士ギルドだ。


「私が買い求めた鉱石のことは、お姉さまも含めて明日に話し合いをするとしましょう。来客用のお部屋を貸し出しますので、今日はそちらでお休みください」

 ギルド員に案内された部屋に荷物を置き、バトラー君と共に食事へと出かける。


 演技がうまくいったこと、多くの人に認められたこと、魔導士ギルドから招待されたことに彼は興奮し続けている様子だったが、やがては強い眠気を覚え、自身にあてがわれた部屋へと入って眠ってしまう。

 私もまた明日の会議のためにベッドへと入り、夢へと落ちるのだった。

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