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救星の英雄たち 壊星の陰陽竜  作者: 一木空
第一章 訓練風景
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訓練開始

「元気も元気~。毎日楽しく、忙し~く研究の日々を送ってるよ~。レイカ君も元気そうで何よりだ~」

 ダイアさんの見た目は小柄な少女でしかないけれど、実際には歴とした大人の女性。


 彼女が属する種族はゴブリンと言って、耳が大きく尖り、身長が100前後くらいまでしか成長しないという身体的特徴があるの。

 小さい見た目ながら筋力に優れているんだけど、魔法を一切使えないのも特徴の一つ。


 魔法技術を持たない代わりに機械技術に秀でていて、今回も何かしらの機械の性能をテストしに来たと考えるべきかな。


「そういうことだね~。それじゃ、君たちの対戦相手を紹介するよ~。今回持って来たのは~、デデン! 新型機械人形~」

 手に持っていた何かしらのボタンをダイアさんが押すと同時に、離れたところから五つの影が歩み寄ってくる様子が見えた。


 私たちの前で整列したのは、鋼鉄の部品を組み立てて作られた人形たち。

 若干ぎこちない動きであることを見過ごせば、私たち人と大きく変わらない見た目だね。


「本来であれば君たちの先輩魔法剣士たちが相手になる所だが、皆、記念祭に向けての準備で忙しいからね。今回は外部から助っ人を頼んだってわけさ」

「ボクたちからしても、性能チェックと戦闘データを取れるのは大きいからね~。君たちから得た情報は、機械人形たちの性能強化に使わせてもらうよ~」

 多分だけど、記念祭には機械人形たちも警備をしに来るはず。


 この子たちが危険を未然に防ぎ、危機から人々を守れるようになれば、私としても嬉しいな。


「逆に言えば、私たちの情報が他大陸に筒抜けるになるとも言えるがな。その辺りはどう考えているんだ?」

「痛いところを突いて来るね~……。ボクたち研究員としては、性能の向上や新たな技術を得るのに躍起になっているだけ~。そういうことを考えるのは、上のお方たちさ~」

 イデイアちゃんとダイアさんが、政に関わる駆け引きを始めだす。


 難しいお話だし、あまり関わりたくないことではあるけれど、私たちが渡した情報が争いに利用されてしまうのは絶対に嫌。

 いまこの場にいる人たちが敵になっちゃうかもなんて、考えたくないよ。


「その点は大陸間特別大使が調整してくれるさ。彼の発言は、どの種族にしても無視できないものだからね」

「確かにね~。彼との繋がりが断たれたら、それこそ大損害だよ。ま、ボクたち側にもその辺を理解している奴がいるから、滅茶苦茶なことにはならないはずさ~。そういった話は置いといて、質問とかは無いか~い?」

 ずれかけた話をダイアさんが戻し、訓練についての話題が再開される。


 機械人形たちを悪漢と見立てて探索し、追討するという訓練内容だけど、機械人形たちも攻撃してくるのかな?


「無抵抗で捕まる悪漢なんているわけがないからね~。ある程度の抵抗をするよう調整してあるよ~。衝撃を受ければ機能を停止するようにしてあるから、壊さないように、ケガをしない程度に戦ってみて~」

「性能を抑えめにしてくれているとはいえ、気を抜かないように。訓練ではあるが、俺が見ているということは評価に繋がるということでもあるからね」

 ここで良い成績を修められれば、より重要な任務を回してもらえる可能性が高くなるということ。


 新たな経験を得る機会も増えるはずだから、ここは頑張らなくちゃ!


「その意気だよ。訓練を行う場所は、新たに設けられた野外訓練場。祝い事にも使えるように作られた場所だから、記念祭開催時を模しての訓練ができるはず。さあ、行っておいで」

「「「分かりました!」」」

 私たち三人は剣を重ね合っての意気込みをした後、訓練場目がけて歩き出す。


 機械人形たちが訓練場内に散開した後、私たちは警戒をしながら内部へと進むのだった。



「……人ではないからか、気配を探るのが難しいな。敵意を感じられないというのが、こんなにも重苦しいとは」

「記念祭の時も似たような状況になりそうだね。お祭りを楽しむ人たちの中に紛れられたら、探すのは大変だもん。最初の一体は、みんなで確保に動いてみる。だったよね?」

「相手の戦闘能力が分からない状態で、分散しての探索は危険だからね。まずはみんなで一緒に行動して情報を集め、そこから分散するかどうか決めた方が良いはずだよ」

 三人で訓練場観覧席を警戒しながら進みつつ、作戦の最終確認をする。


 私たちは、魔法剣士としては基本となる作戦を取ることにした。

 敵の情報を集め、それが正しいかを実践し、正しければ一気に鎮圧へと動き、違いがあればさらに情報を集める。


 速度としては鈍重だけれど、相手が何をしでかすか分からない状態で動くのは、自らだけでなく、周囲にも危険を及ぼしかねない。

 記念祭を見越しての訓練であるのなら、周囲に人がいるものとして、その人たちを守るように行動するのが大切なはずだからね。


「……! 最初の一体を見つけたぞ。物陰に何やら隠すような仕草を取っているな」

 イデイアちゃんが注意を強めたことで、私たちの空気が一気に張り詰める。


 彼女が視線を向けている先を見ると、彼女が言った通りの仕草を取っている機械人形の姿が。

 訓練を開始する直前、機械人形たちはそれぞれが異なる動きをすると、ダイアさんが助言をしてくれた。


 あの個体には、何かしらの危険物を設置しようとする機能が組み込まれているのかな。


「その可能性が高いね。危険物か……。火薬だったり、火炎ビンだったりする可能性を考えると、かなり危ないんじゃない?」

「鎮圧している最中に、隠している物を利用されでもしたらえらいことになるな。この場合は、抵抗をさせる暇もなく取り押さえるのが良いはずだ」

「魔法の出番、だね。とはいえ、周囲には人がいるから攻撃魔法は危険だし、地上を素早く移動するのも無理がある。空中から飛びかかるのが良いんじゃないかな?」

 談笑しながら歩き回っている人々の姿があると仮定しつつ、悪漢の鎮圧方法を話し合う。


 ただ、今回は訓練だから関係ないけど、単に作業をしている人だとしたら勘違いで攻撃を仕掛けることになっちゃうから、その辺りも考慮に入れないと。


「……そうだな、私とミタマで奴に近づき、レイカが奴の行動を観察するというのはどうだ? 相手の動きを見てからの行動となれば早計とはならないだろう」

「それが良さそうだね。じゃあ早速行動してみよう。いつでも剣を抜き取れるようにだけしながらね」

 そう言って、イデイアちゃんとミタマちゃんの二人は機械人形に近づいていく。


 私は物陰に隠れ、二人と標的の様子を眺める。

 自身に強化魔法をかけ、軽く準備運動をしながら。


 二人が近づいて来ることに気付いたのか、機械人形は作業を止めて彼女たちを視認する。

 緊迫した空気が流れる中、突如として機械人形は暴れ出し、二人に攻撃を仕掛けだす。


 ミタマちゃんたちも剣を抜き取っての攻防を開始したので、私は大ジャンプを行って機械人形の視界外から接近する。

 急降下して圧し潰すように攻撃を仕掛ければ容易く制圧できるけど、壊しちゃうのはダメだよね。


 命を取らないように鎮圧することも考えると、背後に回り込むように移動し、不意打ちを仕掛ける形で動きを止めてみようかな。


「よっと。せい!」

 目論見通りの行動を取り、機械人形の背に一撃を入れる。


 それだけで機械人形は動きを止め、その場に跪くのだった。


「捕縛成功でいいん、だよね……?」

「ああ、恐らく。攻撃を受けたら機能を停止すると言っていたが、現在の機械人形の状態がそれにあたるんだろう」

「さっきのレイカちゃんみたいに隙を突くなり、正面からのぶつかり合いを制するなりして、この状態に持っていけばいいってことだね。いよーっし! 他の機械人形たちも、どんどん機能停止にしちゃおう!」

 こうして私たちは、機械人形を相手取った訓練を続けることに。


 次に見つけた機械人形は、挙動不審な様子で周囲の警戒を続けていた個体。

 かなりの速度で逃げ回るその個体を、私たちは追い掛け回すのだった。

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