帝都でのんびり
「おっきなお家……。有力な家系だってことは聞いていたけど、ここまでとは想像もしてなかったなぁ……」
私たちの瞳に映るは、美しい広大な庭と豪華な造りの邸宅。
レジナ・ウェントゥス号を降り、帝都ドワーブンへの入国審査を終えた私たちは、船旅の疲れを癒す宿――というより、知り合いのお宅へとやって来ていた。
「持つべきものは友達とは言うけれど、さすがにこんなに立派なお屋敷で休ませてもらうのは……。本当にいいのかなって思っちゃうなぁ……」
「ん? ずいぶんとミタマらしくないことを言うじゃないか。いつものお前なら、一番大きな部屋! だとか、一番ふかふかなベッドがある部屋! とか言うというのに」
「そ、それはそうだけど……! 限度はあるよ!」
広大な庭と豪華な邸宅を見て、委縮しているミタマちゃんと、普段とは異なる彼女の様子に疑問符を浮かべているイデイアちゃん。
初めてここを訪れた時、確か私は強い好奇心を抱いていたはず。
車の窓を流れ行く帝都ドワーブンの様相は、当時の私にとっては見慣れないものだった。
次はどんな場所に行けるんだろう、どんなものを見られるんだろう。
興奮しきった状態のままにこの場所を訪れ、さらに大興奮していたかも。
「お嬢様より、敷地内ではご自由にお過ごしくださいと賜っております。何か必要な物等ございましたら、私及び使用人一同にお声がけを」
「分かりました! さあ、入ろう! 二人とも! 入っちゃえば、不安とか全部吹き飛んじゃうから!」
「わわわ! 何も、引っ張らなくても~!」
ミタマちゃんの手を引く形で邸宅内へと足を踏み入れると、待機していた多くの使用人たちが私たちを歓迎してくれた。
ますます委縮しちゃうミタマちゃんだったけど、食堂へと入り、多種多様のお菓子を食べつつ、邸宅の見取り図を用いながらの説明を受けている間に、いつも通りの様子に戻ってくれる。
荷物を置き、仲間内でのお喋りを堪能した後にすることと言えば、当然、帝都の様子を見て回らなければいけない。
私たちは再び車へと乗りこみ、高層建物が軒を連ねる市街地へと繰り出すことにした。
「まずどこから行こうか。この街には何度か来ているから、簡単な案内くらいならできるよ!」
「レイカちゃん頼もしい! 素敵な景色が見られるところとかも行きたいけど、やっぱりお買い物だよね!」
「確か、複合商業施設があるんだったか。様々な物を一つの建物内で買えるのは便利だ。アヴァル大陸にも出店してくれないものか」
お買い物に興味を抱くミタマちゃんと、複合商業施設という存在そのものに興味を抱くイデイアちゃん。
私が初めて訪れた時は、建物の中をあちこち探検しちゃったから、二人とはまた異なる部分に興味を持っていたんだよね。
いまなら少し落ち着いて、陳列されている商品を見られるかな。
「服でしょ、アクセサリでしょ、香水とかお化粧道具を見て……。その後は、綺麗なレストランで食事をして……!」
「……ミタマの奴、すっかり観光気分だぞ。私も興奮していないとは言えないが、さすがにこれは良くないんじゃないか?」
「あははは……。まだ、試練を受けているわけじゃないし、楽しんでもいいんじゃないかな……?」
私たちが乗る車は、特に問題が発生することもなく目的地に辿りつく。
あまりはしゃがないようにしていた私たちも、陳列されている数多くの商品、施設内の明るい雰囲気に呑まれてしまうのだった。
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「はぁ~……いっぱい買っちゃった~……。これが、ゴブリンとドワーフさんたちの日常かぁ~……」
「これほどの量を一度に購入するのは、彼らと言えどさすがにないと思うぞ……。それにしてもよくもまあ、各々が購入したものがこうもバラバラになるものだな」
集合場所としていた休憩所にて。
テーブルの上に置かれた、梱包済みの商品たちを見つめながら、私たちは苦笑を浮かべ合う。
口紅などの化粧品に小物入れ、帽子や服に靴、大量の書籍と、見事なまでにバラバラ。
まあ、それぞれの性格が異なるからこうなるのは当然なのかもしれないけど、もうちょっと似た部分があっても良いのになって思っちゃうな。
「そう? それぞれ違う物に興味を持つからこそ、勧めるってことができると思うんだけどなぁ。ほら、この口紅、レイカちゃんに似合うと思うんだけど」
「ふむ、ならミタマに似合うと思って買ってきた帽子だ。どうだろうか?」
「私も! 二人が興味を惹きそうな本を買ってきたよ!」
ミタマちゃんの言葉を皮切りに、各々が買ってきた物を各々に勧め合う。
確かに、全員が同じ物に興味を持っていたら、とてもこんなことはできない。
性格が違うから、種族が違うから合わないとかよく言われるけど、相手を思い合って、相手が好む何かを見つけようとするから、人は仲良くなれるんだろうな。
あと二つ、私には知らない種族と知らない大陸がある。
そこに住む人たちともお互いを知り合って、仲良くなっていかないとね!
「あ! この靴素敵! イデイアちゃん、どこで売ってたの? 私も後で買いに行く!」
「靴売り場の――確か、奥の方だったはずだ。ふむ、この髪飾り悪くないな。これはどこで売ってたんだ?」
「それ? 同じ物を買ってきてあるからあげるよ! アハハ、この本、おもしろーい!」
休憩を終えた私たちは、再びお買い物へと繰り出すのだった。




