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救星の英雄たち 壊星の陰陽竜  作者: 一木空
第四章 英雄試練
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帰還と報告

「ただいま戻りました~!」

 休暇明け、私は魔法剣士ギルドへと戻ってきた。


 構成員の皆さんに帰ってきたことを伝えつつ、寮にある自室へと向かっていると、何か資料を読みながら歩いているイデイアちゃんの後ろ姿が。

 悪戯心が湧いた私は、こっそりと彼女の背に近付いてみたんだけど。


「帰ってきたか、レイカ。休暇はどうだった?」

 声をかける間もなく、私のことに気付かれてしまった。


 足音も立てないようにしていたのに、なんでバレちゃったんだろ。


「それなりの付き合いの長さになったからな、お前とミタマの気配なら感じ取れるさ」

「むー……。何か負けた気がして悔しいけど、それだけ交友関係を築けたってことでもあるから、別にいっか! ただいま、イデイアちゃん!」

 イデイアちゃんに休暇中の出来事を教えながら、マスターの執務室に向かう。


 地底の冒険と、ディア様の復活のこと、ちゃんと伝えておかないとね。


「これで神族は全員復活か。後は英雄が誕生すれば、天災に向けての準備は大詰めというわけだな。そうそう、レヴィア様との定期会議は今夜だ。忘れるなよ?」

「あ、そうだったっけ、ちょうど良かったかな」

 私たち魔法剣士は、水の聖獣であるレヴィア様ととある契約をしている。


 契約の内容は、魔法剣士が所有している船の航行速度を引き上げる代わりに、アヴァル大陸内で起きたことを見て、聞いて、彼女に伝えるというもの。

 聖獣という立場に就いている以上、そうやすやすと人前に現れることはできないし、体が大きいから川を遡上することもできない。


 水のそばであれば、何が起きているのかは感知できるみたいだけど、地上の奥まったところまでは把握できないらしいから、人という代わりの眼が必要ってわけ。


「話をする内容も決めないとね! そっちの会議はいつするの?」

「お前が帰還次第、始めると言われている。私はこれから主だった者たちに声をかけてくるから、お前はマスターに挨拶をしてこい。いまなら執務室におられるはずだ」

「ん、分かった! それじゃ、また後でね!」

 イデイアちゃんと別れ、マスターの執務室に向けて一人歩きだす。


 先輩や後輩に挨拶をしつつ進んでいると、正面から見知った人物が。

 金の髪に、ふんわりとした雰囲気を纏った彼女もまたこちらに気付くと、嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄ってきてくれた。


「お帰り、レイカちゃん! 休暇はどうだった?」

 マスターの執務室に進みながら、イデイアちゃん同様、ミタマちゃんにも休暇の報告をする。


 彼女も新たな神族の復活に興味を示してくれたけど、お兄ちゃんたちのことや、アマロ村の様子に強く興味を示していた辺り、故郷や家族関連で割り切れない部分が残っているみたいだね。


「まあ……ね。ピスカ村の件で、レイカちゃんとイデイアちゃんに迷惑かけちゃったことは、ウチにとって苦い過去だから……」

 ミタマちゃんの故郷、ピスカ村は漁師の村。


 海鮮と言えばピスカ村と形容されるほどの村なんだけど、長期間不漁が続く艱難辛苦の時代があったの。

 漁に出ても魚は取れず、荒れた海で命を落としてしまう者も出るほどで、次第に海へと向かう人は減り、他所からの支援なしでは暮らしていけないほどに、衰退しちゃったことがあるんだ。


 そんな時期に私とイデイアちゃん、ミタマちゃんにお兄ちゃんも一緒に訪れたんだけど、私とイデイアちゃんが化け物と勘違いされちゃったの。

 当時のヒューマンには異種族に対する知識がなかったし、心身が荒み切った状態で見たこともない種族が現れれば、動転するのは必然。


 捕らえられて、攻撃されかけちゃったけど、お兄ちゃんとミタマちゃんが思いっきり怒ってくれたこと、嬉しかったな。

 大海嘯事変が終結し、大陸間の交流が進展しだしてから、ピスカ村の住人達が自主的に謝罪に来てくれたし、もう気にしてないって言ってあるんだけどね。


「いつまでも、気にし続けている意味はないって、ウチも分かってるんだけどさぁ……。中々割り切れないんだよねぇ……」

「アハハ……。まあ、忘れらない、気にし続けちゃうことはどうしてもあるわけだし、それはそれとして置いておいて、楽しいことや興味を引くことに目を向ければ良いんじゃない?」

 お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、ウェルテお師匠も、そうやって過去を乗り越え、現在を生きている。


 決して過去を捨て去ってはおらず、辛くて悲しい思い出と、楽しい思い出を抱えながら、振り返った時に生きていて良かったと思える生涯にするために。

 私も、そうやって生きて行きたいと思っているんだ。


「なるほどねぇ……。じゃあ、二つの大陸調査を直近の楽しみに設定させてもらいますか! ウチは他に用があるから、マスターへの報告、しっかりね!」

「うん! また後でね!」

 ミタマちゃんとも別れ、再び一人で歩きだす。


 廊下を歩き、階段を登り、瞳にマスターの執務室が映り込む。

 扉を叩き、入室の許可を受けると同時に扉を押し開け、マスタールペスと対面する。


 彼は書類を作る手を止め、私に笑みを浮かべてくれた。


「お帰り、白角ちゃん。その様子だと、休暇は満喫できたみたいだね」

「ええ、ナナさんと魔法のお勉強をしたり、ソラさんと組み手をしたり、ウェルテさんとお買い物に行ったり! グーラ地底大陸に赴き、最後の神族の開放にも協力してきました!」

 三度の報告を、マスターにも行う。


 彼の興味の範囲は、地底と神族に関わる部分が大きかったけれど、お師匠関連の話題になるとそれがさらに強まっていた様子。

 お兄ちゃんが言っていた通り、いまも彼女のことが好きみたいだね。


「愛した女のことが気にならないなんてことは、あり得ないからね。ま、アイツにはアイツの人生があるし、いましばらくは静観するつもりさ。マスターの職務もあるからね」

「想いを伝えれば、受け入れてくれると思うんですけどね~。マスターについての話題を出すと、お師匠も興味を抱いてくれますから」

 助言に対し、マスターは大きく笑うという形で返事をする。


 お兄ちゃんの話によると、彼は意外と奥手なんだって。

 二人の関係が進展するのは、とってもゆっくりなんだろうなぁ。


「よし、そろそろ銀狼ちゃんが君の帰還を周知し終えている頃だろう。レヴィア様との会談をするための会議を始めるとしようか」

「はい! 分かりました!」

 会話の場所を会議室へと移動し、魔法剣士の主だった方たちに地底での出来事を報告する。


 会議が終わり、自室で休憩をしている間に日は沈み、レヴィア様との会談の時間となるのだった。

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