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救星の英雄たち 壊星の陰陽竜  作者: 一木空
第三章 地底からの呼び声
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支援をする者たち

「お休みももうすぐ終わりかぁ。なんか、三年前を思い出す忙しさだったね」

 アマロ村の自宅、リビングにて。寝間着を纏った私は、温かいお茶を楽しみながら休暇の振り返りをしていた。


 同席しているのはソラお兄ちゃん。

 彼は資料を作りながら、私の話を聞いてくれていた。


「ふふ、そうだね。でも、忙しさの中に楽しさもあったし、何よりディア様の復活に関われるとは思わなかった。直接繋がりを紡げたのは大きいよ」

「だね~。でも、ディア様が私より小さな子どもだったなんてびっくりしちゃった。あの人が昔の世界で英雄の剣を作り、天災を振り払うための作戦を考えたなんて」

 世界を守るため、神族たちは自らを犠牲にするという作戦を立てた。


 多くの生命を、その生命が暮らすこの大地を守るためとはいえ、命を張るなんて私にできそうにないなぁ。

 さらに先の世界を、みんなで見に行きたいから戦おうと思ってるくらいなのに。


「最初から命を張る作戦なんて、神族の皆さんも考えてなかったと思うよ。あくまでそれを選択した——いや、選ばざるを得なくなったのは、本当にどうしようもなくなってしまった結果からのはずだからね」

「最後の手段ってことかぁ……。今度こそ、そんなことにはさせない。ホワイトドラゴンもヒューマンも、全ての種族が存続したまま、天災を乗り越えた世界へと進めるようにして見せる!」

 ふつふつとやる気が湧いてきた私は、窓へと移動して宣誓をする。


 私はまだまだ弱い。弱いと自覚ができているのなら、やれることはたくさんある。

 訓練をして、力を付けよう。世界を回って、知識を付けよう。


 そうして、天災を乗り越えた新たな世界を思いっきり堪能するんだ!


「ああ、その意気さ。ごくわずかとはいえルビア大陸の情報が得られたし、ルクスル大陸に向かうための船も出来上がり、調査に向けての準備も整い始めている。力をつけるチャンスは、まだまだいっぱいあるからね」

「ルビア大陸の情報は、ちょっと不穏なものだけどね……。そうそう、お兄ちゃんはルクスル大陸に行けるの? ダイアさんから、お兄ちゃんは王族の皆さんに同伴する形で記念祭に参加するらしいって聞いたんだけど……」

 質問に対し、お兄ちゃんは私に顔を向けてニカリと笑みを浮かべてくれた。


 せっかく新しい大陸に行くんだから、お兄ちゃんもいなくちゃだよね。

 その後のことも考えると忙しそうだけど、嬉しいな。


「最初は記念祭を優先するつもりだったんだけど、各種族を繋げた立役者が、新たな種族との出会いの場に赴かないでどうするんだって、各大陸の代表の方々から言われちゃってね。甘えさせてもらうことにしたよ」

「そうなんだ! あ、でも、お姉ちゃんは——」

「私はちょっと無理かなぁ……」

 割り込む形で入ってきた声に振り返ると、そこには湯上り姿のナナお姉ちゃんが。


 一緒にルクスル大陸の探索をしたかったけど、やっぱり難しいかぁ。


「大魔導士のお仕事が忙しいの?」

「仕事の方はそれなりの忙しさなんだけど、魔法の研究が思ったより進まないの……。レイカちゃんたちとスターシーカーだけに頼り切らずに、天災に立ち向かえる魔法を作ろうと思っているんだけど……」

 お姉ちゃんは空いている席に座りつつ、私に申し訳なさそうな表情を見せる。


 スターシーカーが魔力を集め切るのだって、長い年月がかかっているんだから気にすることはないと思うんだけどなぁ。

 みんなが努力をしているって知るだけで、私たちだけが戦うわけじゃないんだって心強くなるしね。


「私が大魔導士になった理由の一つに、お父さんの願いがあるからね。今度、故郷から持ち出した資料たちを洗いざらい調べてみようかな」

「行き詰ったら、基本に立ち返るべきってよく言うもんね。もう一度、君の故郷を調べ直してみるのもいいかもしれない。お墓参りもできるわけだし」

 お姉ちゃんの故郷は、魔導士たちが暮らしていた小さな村。


 魔法に関する様々な資料だけでなく、かつての世界の遺構も残っている、魔法学においても歴史学においても重要な地なの。

 お姉ちゃんだけを残して滅んじゃった村だから、これまでは調査だとかが行われていなかったんだけど、十年が経過したしそろそろってことかな。


「心のどこかには、そっとしておきたいという気持ちが残っちゃってるけどね。でも私の感情で調査を禁止にして、天災への備えができませんでしたなんて、そんなのダメだから」

「だとしても、踏み込んでほしくない部分はきちんと伝えておくべきさ。そう言った部分は、私たちが調査をすればいいんだからね」

 お兄ちゃんの助言に対し、お姉ちゃんは優しい笑みを浮かべながらうなずく。


 こうやっていろんな形で援助をしてくれると、心も引き締まるよね。

 きっと、他の知り合いたちも色々準備してくれているんだろうなぁ。


「よし、資料はこれで完成。ナナ、一応確認しておいてくれるかい?」

「うん、分かった。どれどれ?」

 お兄ちゃんから手渡された資料を、お姉ちゃんが読み始める。


 あの資料一つで各大陸が、そこの代表者たちが、下部組織の動きが変わっちゃうわけだから慎重にもなるよね。

 ちょっと発言しただけで世界が大きく変動しちゃうなんて、私だったら怖くてしょうがないなぁ。


「君たちが成すことを思えばこれくらいどうってことないさ。君たちがスターシーカーを持って天災と戦うように、私も私の形で戦っているだけだからね。どうかな、ナナ」

「問題は——うん、無いと思う。複製したら私にも一部くれる? この資料を見ながらの方が説明しやすいはずだから」

 方や各大陸に影響を及ぼせる特別大使に、方や全ての魔導士の頂点に立つ大魔導士。


 まだ英雄になれていない私には、二人の立場と苦心を理解しきれないけど、ありとあらゆる方法で支援をしようとしていることくらいは分かる。

 なら私は、しっかり心と体を鍛え、知識を付けて万全の状態にしておかないとね。


「私はそろそろ寝よっかな! 明日は魔法剣士ギルドに戻らなきゃだし! お休みなさい!」

「うん、お休み。資料も完成したことだし、私たちも休もうか」

「そうだね。あ~あ、またみんなと離れ離れかー」

 コップを洗った後、リビングから自室がある廊下へと向かおうとすると、お兄ちゃんとお姉ちゃんが仲睦まじく寝室へと向かう姿が見えた。


 その姿に憧れを抱きながら自室へと入り、ベッドに寝ころんで毛布を掛ける。

 ディア様に教えてもらった睡眠法を実践した私は、すぐに深い眠りへとつくのだった。

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