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0005 キュービックアイランドエレクトロニクス

 キュービックアイランドエレクトロニクス、略してCIEシーの発足は歴史があり、今年で550年目を迎えるゲーム会社だ。


 とは言っても、度重なる解散、メンバー入れ替えての再発足を繰り返している歴史もある。

 最後のオリジナルスタッフ全員が老人化した為に50年程、休息していたらしい。アンドロイド計画を期に再び、ゲーム会社を作ろうと有志が再結成した訳だ。


 最初に手がけたのは仮想空間から仕事が出来ないかとの発案で作業空間を作成、これを世界政府に持ちかけて採用されたのだとか。


 その後は作業効率化の為のシステム開発と情報処理と保管を手がけ、そしてついに   

 VRMMORPG Infinity Woldを開発した。


 作業用の仮想空間もゲームもシステムを作ったのがこの会社でメンテナンスをばらばらにするのが面倒だという事から、作業空間とゲームの運営・メンテナンス・関係施設管理を任されているそうだ。


 金田はその中でもInfinity Woldのゲームデザイナーとしての採用となった。


『金田君、君は元・オフトという事は、ノーブレインだね?』

「はい、そうですが・・・いけませんか?」

『いや、都合がいいんだよ。我々も全員、ノーブレインだからね。』


 金田は耳を疑った。こんな一流企業の人達がノーブレインだというのだ。金持ちや権力者はこぞってブレインワーカーになり、ノーブレインの人達もブレインワーカーになりたがっているからだ。


「なんで、ノーブレインなんですか?」

『そりゃ君、感電すれば死ぬんだよ?我々からすれば、なぜブレインワーカーになりたがるのか意味が解らないよ。ノーブレインのフレームにはサーキットブレーカーがあるから、もしもの時も安全なんだよ。このことは秘密だよ。』


 その後、金田は現実社会の東京ドームまで来て欲しいと言われたのだが、徒歩では遠い。とは言っても、この世界に電車や車はない。栄養補給作業用のトラックがあるので、ちょっと拝借、東京ドームまでトラックを走らせた。



 東京ドーム—。

 昔はここでスポーツなどをしていたらしい。人類が生身だった頃の産物だ。アンドロイドになってからも試合が行われていたそうだが、余りにもの怪力の為に試合にならなかった。故に放置されていたのをCIEが買い取ったのだという。


 中に入ると、社員の人達だろうかノーブレインがあちこちにいる。受付に金田ですと告げると案内をしてくれたので、旧グラウンドにある一室に通された。


 部屋の中には見慣れた端末機があるだけ。その後ろにジェフ・カールトンさんのホログラムが立っていた。


『随分と早かったじゃないか?そんなに採用されたことが嬉しかったのかい?早速だけど、仕事をするための準備に行こう。仕事の知識が必要だから、情報をインストールするよ。端末を繋いでくれるかい?』


 言われるがまま端末ソケットを繋ぐと、ゲームに関する最新のプログラミング言語などのインストールが始まった。




 時間にして6時間—。


「つ、疲れた・・・。」


 もう、ぐったりを通りこして気が遠のく感覚を感じながら椅子の背にもたれかかる。


『まあ、このゲームはいかに脳を騙すかにかかっているから、脳のしくみも覚えてもらいたかったんだよ。それにプログラミング言語も複雑だからね。次はリミッター解除をするから、もう少しだけ我慢してくれ。』


 さらに1時間—。さっきがさっきだったから、意外と早く終わったように感じる。


『リミッター解除はウチの社員だけのものだからね。他の人とは違う事が出来るぞ。』

「例えば、なにが出来るのでしょう?」

『そうだね、空も飛べるぞ!ゲームの中はプログラムで出来ているから、本来は誰でも飛ぶことは出来るのだけど、プレイヤーには飛べるような仕様にしていないからね。』


 ん〜、空も飛べるという事は、考えた事は何でも出来てしまうということかな?透明になったり、変身できたり・・・・。


『もちろん、透明にも変身も、考えた事は何でもできるぞ!』

「聞こえてたのですか?」

『いや、考えを読むことも出来るという事だ。役にたつだろう?』


『これで、今から金田君は我々の仲間だという事だ。よろしく頼むよ!』

「わかりました。それで何からすればいいのでしょうか?」

『そうだな、今日は施設を回って何をしているのか見学してもらう事にしよう。』


 東京ドームを有効活用した造りの施設内を案内をしてもらいながら見学していくと、ゲームをプログラミングしている部署の一つがあった。

 この部署ではオブジェクトを作っているのだが、プログラムと言っている割にはキーボードなどがない。あるのはマイクのみだ。


「あと3cm右側を小さくして」とか「側面の凹凸を縦長で間隔をもう少し細かく」と指示を出せば後はAIがやってくれるのだとか。じゃあ俺はなんでプログラミング言語を教えられたんだ?不思議に思っていると、「金田君にはもっと細かい所までプログラミングする機会があるかも知れないので、インストールしたのですよ。」と案内の人が言ってくれた。


 次に案内されたのはバグを見つけ修正パッチを作る部署である。

 現実世界さながらに作っているゲーム内では許されない事や部分や現象がある。本来は警官に扮したプログラムが即座に発見、報告をするといった感じで行っているのだが、それでもバグは起こるらしい。


「一番、面白かったのは浮気相手の女性が避妊しているにも関わらず妊娠してしまった事ですかね。単なる便秘ですと言ってごまかしましたけど。」


 それは・・・。その時の男性の顔が見たかったものだ。いかんいかん。コホンコホン。


「ですので、日頃からこうやってバグを修正している訳です。」


 案内役は笑いながら次の部署を紹介してくれた。

 この部署はある意味、重大な責任を伴う部署であるらしい。

 その名もセキュリティブロックエリア。要はハッカーなどのサイバー攻撃に対応するための部署である。


 あるのだが・・・。暇そう・・・。


 なんで、こんなに暇そうなのですかと尋ねれば、仮想空間内にPCはなく、現実世界でもPCを保有しているのはキュービックアイランドエレクトロニクスだけなので、外的脅威もなくただただ時間を持て余しているのだとか。もし、攻撃があるとすれば内部なので、すぐに処理することが出来るし、キーボードを使ったプログラミングは一部の人間にしか出来ないのだとか・・・。


 ますます、なぜ自分がプログラミング言語を習得させられたのかが理解に苦しむ。


 一度、ハード面も見てみましょうと外に連れ出されたのだが、来る時には気づかなかった超極太のケーブルがある。太さにして六本木ヒルズの直径ぐらい。それが何本も。

 これぐらいないと、全世界とつながりながらのゲームなんて出来ませんからと言っていた。


 サーバールームはどこにあるのですか?と聞けばメインコントロールサーバー室は中央にあり、データサーバーや保管用サーバーは南極にあるのだとか。サブコントロールサーバーは日本の北海道にあるらしいが、緊急以外では稼働しないのだとか。


 その他のシステム用サーバーは各地のドーム球場を都度改造して増設するらしい。


 残念ながら、私ではメインコントロールサーバー室には案内できませんが、金田さんなら入ることは出来ますよと言ってくれた。え?なんでと聞き直すと、それだけ金田さんの立ち位置は重要なのですよと教えられた。見学はやめにしておこう。


 かなり広い空間に出てきた。300人位はいるであろう、椅子に座った人達がそれぞれ、ソケットを端末に繋いでいる。


 ここはテストルームなのだそうで、新しいエリアやゲームをやりこむ所なのだという。そして、テスターからのフィードバックを元に修正を加えて行くのだとか。


 今回作っているのは『森林エリア』だそうで、癒しが欲しいとの声が多かったので、現在作成しているところらしい。プログラミング側は熊は絶対に入れたいと言っていたが、そんなんで、本当に癒しを感じることが出来るのだろうか?


 一通り見学を終えた金田は面接をした所まで戻って来て欲しいとの事なので、近くにあるソケットに端末を差し込みログイン。そして会社まで戻って行った。


 会議室内部に更に扉があり、その扉を開けると場面転換のように風景が変わり、ジェフ・カールトンさん他5名が座っていた。


「やあ、こうやって顔を合わせるのは初めてだね金田君。」


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