表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/37

0001 VRMMORPG ”Infinity Wold”

 更に15年後、アンドロイドの世界は落ち着きを取り戻し、生身の肉体を持っていた頃と何も変わらない世界になっていた・・・。はずだったのだが。

 アンドロイドの社会になり、農業・漁業・畜産業や飲食などの業界はなくなってしまい仕事という仕事がなくなった上、ロボットが仕事をするので人類の仕事はロボットに指示を出すのみ。人類はなにをすればいいのか分からなくなっていた。


 現実社会の仕事は開発された仮想空間内で出来るようになり、外出が不要になったアンドロイド達は肉体を捨てた。さらに言えばアンドロイドの肉体も捨て脳を直接端末に繋ぎ永久的にログインしている状態だ。これに伴い通常の住居が不要、代わりに脳のみが置かれるショーケース状態の倉庫のような居住区に住んでいた。


この者達をブレイン・ワーカー、文字通り『脳だけで働く人』と呼び金持ち達のステータスとなった。

いまだにアンドロイドの姿をしている者達は、no brain 『能(脳)無し』と呼ばれていた。


 しかし、何の娯楽もないただ働くだけの仮想空間世界に市民は不満を抱えていた。ましてや「繁殖」に関しては、問題外なのが現実である。


 仮想空間でも出来ない事と言うのは『食事と繁殖』である。そんなアンドロイド達に不満が溜まっていた。


 すべてのアンドロイドが時間を持て余し欲求を持つ・・・。

 そうなると、人間の欲望は快楽へと走る訳である。



 そんな時に誕生したのが、VRMMORPG ”Infinity Wold”である。

 このゲームは、はるか昔に海外で作られ、コンセプトは「古き良き日本」である。

 発売当初海外の人間には大ウケであったのだが、日本人からすると、余りにもエキセントリックな日本の状態に、皆が首を横に振っていたゲームである。


 そのゲームを開発したチームももれなくアンドロイド化していて、「全ての夢がここにある」との謳い文句でリメイクされたフルダイヴ型のRPGゲームだった。


ゲームの世界に行こうと思って仕事場から歩いてゲートをくぐると、そこはゲームの世界という訳だ。


 ゲームの中では『生身の人間の身体を持ち』博打や飲酒なども出来、アンドロイドになってしまったが為に不要になったSEXで快楽を得ることも出来るとなっている。


 このゲームは一部の元・老人達に歓迎されたのだが、他の者からの反響はと言うと、賭博と飲食、SEXのみのゲームという内容に、今一つ受け入れられない。制作サイドは大型アップデートでショッピングモールやテーマパーク、フィットネスクラブなど現実さながらなんでも出来るオープンタイプ仕様となった。

 更に、ゲーム内には、通貨がある。通貨があるという事はあれやこれやとやりたいことが出来るようになったり欲しい物が買えたり出来るということ、誰もが一攫千金を夢見てゲームにダイヴするようになった。

 

 フルダイブの方法は数百年前の映画のように首の後ろからプラグを刺すという大袈裟な事はしない。脳が直接端末と繋がっているために必要ないのだ。


 ノーブレイン達は指先を端末に繋ぐだけでダイヴすることが可能なので、差別することなくゲーム内にログインすることが出来る。


 この大型アップデートのお陰で、ゲームInfinity Woldは全世界の支持を得ることになり、誰もがこのゲームに興奮し、虜になった。


 ブレインワーカー達がゲームを楽しんでいる一方で、栄養補給剤を補充していたのは元・オフト達だった。





***





 憧れの日本を再現しようとゲーム制作会社は、何を間違えたのか日本の風景や風俗が極端に再現化されている。

 葛飾北斎が描いた富士山や波、大人の遊び場である吉原には1mはあるであろう下駄を履いた花魁が闊歩している。


 吉原の隣には電気と若者の街、秋葉原があり、当然のことながらメイドカフェもある。

 面白いのは雷門の隣に奈良の大仏、そのまた隣には金閣寺があったりもする。

 その隣には大阪道頓堀がありと無茶苦茶な世界になっていた。


 さらに日本という割にマップは日本地図ではない。


 日本人や日本びいきの外国人からすると、滅茶苦茶な世界観であるのは間違いなしの風景は、日本を知らない外国人からすると、観光名所が一度に見れるとの理由でウケている訳だ。


 この滅茶苦茶な日本を見て誰もが皮肉を込めてゲーム名を”JIPANG“と呼ぶようになり、ジパングの名は、世界中に広まった。


 短時間で現実社会の仕事が終わるので、ゲームに没頭する。ゲーム内ではその自由度の為か、ある者は全く違う仕事に精を出し、またある人は自由度の高いアバターで目立った衣装を着て、懐かしのディスコ・マハラジャでフィーバーする者もいた。


 ない物はない。なければ作ってしまえる所にも、このゲームの人気がある理由の一つ。


 それでも一番人気が高かったのは「夜の街」であるのは明白である。

 酒を飲めば、実際に酔うし、千鳥足になったりもする。勿論、飲みすぎると嘔吐もする。

 中には、酒場で知り合った者同士がいい雰囲気になってモーテルに行って人間だった頃の快楽に溺れたり、吉原でキレイな花魁と一夜限りの夢を見る人もいる。


 とにかく、毎日が「お祭り騒ぎ」なのだ。



 そんな自由度の高いゲームにも厳しいルールがある。


・プレイヤー名は本名でなければならない。

・何かしらの職業に就かなければならない。

 これは、お金を稼がないとゲーム内で食事やショッピング、遊びなどが一切、出来ないからだ。

・建物や住居は全てレンタルの物とする。これは運営資金に充てるためである。

・プレイヤーキル、犯罪行為を犯してはならない。処罰の対象になる。


・上記のルールに違反した場合、デス・ペナルティと同じく、その地点で所持していたお金は全額没収、更にプレイヤーのレベルも1の初期設定に戻る。犯罪行為に関しては厳罰もある。

・不服申し立てをしても、このルールには効力がない物とする。

・尚、ルールは都度、アップデートを行うので、ログインした場合は、これを承諾したものとする。


 さて・・・。問題は「犯罪行為」と「ルールの都度アップデート」と言う所だ。


 例えば、立小便をしてもルールに引っかかる。それでペナルティは酷い。

 誰かが、空き缶をポイ捨てしたとしよう、誰が捨てたか解らないだろうと思っていても、その空き缶にはシリアル番号が振られているし、飲んだ人物も特定出来る仕掛けになっている。


 その厳しすぎる世界の甲斐もあって、世界政府はゲーム開発者に現実世界を含む全システム運営の全権を託したので、仕事をしている時にも娯楽が増えて行ったのも事実である。



 そんな夢の国JIPANGの中に一人の少年、金田悟がいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ