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0020 アリサのトラウマ

翔太はログアウトした後、現実世界の狭い部屋で一人考え込んでいた。ゲーム内での失敗は悔しかったが、それ以上に彼には資金が必要だった。「レジェンド・ストライク」で勝ち続けるには、もっと良い装備やスキルが必要だ。しかし、そのためにはお金がいる。翔太は収入を得る必要があった。


彼はJIPANG内の掲示板を確認することにした。様々な求人が掲載されているが、その中で「年齢・身分問わず、農作業の仕事」という人材募集が目に留まった。簡単な作業で報酬も悪くない。翔太はこの仕事をしてみることにした。


翌日、翔太は農業エリアへと向かった。そこには様々なプレイヤーが集まっており、それぞれが農作業に精を出していた。彼は担当者に声をかけ、仕事の内容を教えてもらった。作業はシンプルで、主に畑の手入れや収穫の手伝いだった。


その農場は、意外なことにオフトが経営する農園だった。旧オフトのメンバーが多く集まり、ここで働いていたのだ。農園の経営は、オフトのリーダーである金田悟が指揮を執っていた。


翔太が農園に足を踏み入れた時、彼はかつての仲間たちが働いている姿に驚いた。彼らはみな、現実世界でもJIPANGでも苦境に立たされていたが、ここでは互いに助け合いながら生活していた。


「翔太!久しぶりだな!」農園で働く仲間の一人が声をかけてきた。


「おお、久しぶり!まさかここで会えるとは思わなかったよ。」翔太は笑顔で答えた。


農園では、かつての戦友たちが再会を喜び合い、翔太を温かく迎え入れてくれた。アキラとユイもその中にいた。


ある日の夕方、翔太は金田と共に農園の一角に座り、夕日を見ながら話していた。


「金田さん、僕たちはまだ戦えると思いますか?」翔太は不安げに尋ねた。


金田は静かに頷いた。「もちろんだ、翔太。私たちは一度敗れたが、まだ終わっていない。この農園はその証だ。ここで培った絆と経験を糧に、新たな挑戦を続けるんだ。」


翔太はその言葉に勇気づけられた。「僕たちはまた立ち上がるんですね。」


「そうだ、翔太。俺たちはいつでも立ち上がる。オフトは不屈の精神を持っている。」金田は力強く言った。


その夜、翔太は新たな決意を胸に秘めて眠りについた。彼は次の日からも農作業を続けながら、アキラやユイと共に「レジェンド・ストライク」の練習に励んだ。彼らは互いにアドバイスをし合いながら、少しずつスキルを磨いていった。


「翔太、ここのカバーの取り方が甘いぞ。」アキラが指摘した。


「わかった、次はもっと気をつけるよ。」翔太は真剣な表情で答えた。


ユイもまた、翔太に戦術的なアドバイスを送った。「敵の動きを予測して行動することが大事だよ。焦らずに冷静にね。」


彼らの練習の成果は少しずつ現れ始めた。チームとしての連携が向上し、戦術の理解も深まっていった。


ある日、練習を終えた後、翔太はアキラとユイに尋ねた。「二人も『レジェンド・ストライク』をプレイしている理由は何?」


アキラは微笑んで答えた。「僕たちもオフトの一員として、戦争の経験があるからね。現実の生活は厳しいけど、このゲームで成功することで少しでも希望を持てるようにしたいんだ。」


ユイも頷きながら言った。「そうね。ここでの勝利は、私たちにとって新たな未来への一歩になるから。翔太、君と一緒に戦うことで、お互いに成長できると思う。」


その言葉に翔太は深く感動し、彼らと共に挑戦を続ける決意を新たにした。


翔太は農園での仕事に打ち込み、資金を集めることに集中した。毎日の農作業は体力を必要とするが、彼は決して怠けずに働き続けた。仲間たちとの絆も深まり、翔太は少しずつ自信を取り戻していった。


農園では、様々な作業が待っていた。翔太は朝早くから畑に出て、草取りや水やり、収穫の手伝いをした。土の感触や植物の成長を間近で感じることが、かつてのオフトを思い出させるものだった。


「翔太、今日はトマトの収穫を手伝ってくれ。」農園のリーダーが声をかけた。


「はい、わかりました。」翔太は手袋をはめ、トマトの房を慎重に摘み取っていった。太陽の下で汗を流しながらも、彼は充実感を感じていた。


農園の仲間たちも、翔太を温かく迎え入れてくれた。彼らはお互いに助け合い、励まし合いながら仕事を進めていた。農作業の合間には、彼らと笑い合ったり、将来の夢について語り合ったりする時間も増えた。


農園で働くことで得た資金を元に、翔太は「レジェンド・ストライク」で必要な装備を揃えようとしていた。しかし、彼はどの装備を選べばいいのか分からず、迷っていた。武器や防具の種類は多く、それぞれに特徴があり、選択に困っていた。


そんな時、翔太は街中である女の子と出会った。彼女は武器や装備に詳しいと評判の少女で、その名をアリサといった。


「装備を整えようとしているの?」アリサが翔太に話しかけてきた。


「そうなんだけど、何を選べばいいのか分からなくて…」翔太は困惑した表情で答えた。


アリサはにっこりと微笑んだ。「それなら私が手伝ってあげる。私に任せて!」


アリサは翔太を穴場だという装備ショップに連れて行き、彼のプレイスタイルや戦術を聞きながら最適な装備を選んでくれた。彼女の知識と経験は翔太にとって非常に頼もしかった。


「翔太君は中距離戦が得意みたいだから、このアサルトライフルがいいと思うよ。射程も威力もバランスが取れていて、初心者でも扱いやすいわ。」アリサが言った。


「うん、それにするよ。」翔太はアサルトライフルを手に取った。


「次は防具ね。敵の攻撃をしっかり防ぐために、軽量で耐久性のあるものを選ぼう。」アリサは防具コーナーに翔太を案内した。


彼女のアドバイスに従い、翔太は軽量で動きやすい防具を選んだ。これにより、彼は敵の攻撃を受けても迅速に動けるようになった。


装備を整えた翔太は、アリサと共に練習を始めた。彼女は翔太に戦術的なアドバイスを送り、彼のスキルを向上させる手助けをした。


「このアサルトライフルは、リコイルが少ないから連射が効くわ。試しにターゲットを撃ってみて。」アリサが言った。


翔太はターゲットに向かって銃を構え、引き金を引いた。アリサのアドバイス通り、リコイルが少なく、安定して連射できた。


「すごい、こんなに使いやすいなんて!」翔太は感激した。


「もっと練習すれば、もっと上手くなるよ。がんばってね、翔太君。」アリサは優しく励ました。


しかし、次第にアリサの態度が変わっていった。最初は優しかった彼女が、練習を重ねるごとに冷酷で狂暴な一面を見せ始めた。


「翔太、そんな甘い考えじゃダメよ!もっと素早く動け!」アリサの声は鋭く、冷徹さが増していた。


「う、うん…わかった。」翔太は戸惑いながらも、彼女の指示に従った。


アリサはさらに過激な訓練を翔太に強要し始めた。彼女の目は冷酷で、かつての優しさはどこかへ消えてしまったようだった。


「敵を見つけたら、迷わず撃ち抜け!躊躇するな、翔太!」アリサは激しく叫んだ。


翔太は彼女の変貌に戸惑いながらも、訓練を続けた。しかし、その過程で彼は次第にアリサの狂暴さに恐怖を感じるようになった。


ある日、翔太はアリサとの練習を終えた後、アキラとユイに相談した。


「アリサが変わったんだ。最初は優しかったのに、今はすごく冷酷で…怖いんだ。」翔太は不安げに言った。


アキラは眉をひそめた。「それはおかしいな。何か原因があるのかもしれない。」


ユイも心配そうに頷いた。「翔太、もしアリサが何か問題を抱えているなら、私たちで助けてあげよう。」


翔太は二人の言葉に励まされ、アリサのことをもっと知るために調査を始める決意をした。彼はアリサの過去や彼女が抱えている問題について情報を集めることにした。


翔太、アキラ、ユイの3人は、アリサのことを調査するために様々な情報を集めた。やがて、彼らはアリサが過去にオフトのメンバーとして戦っていたことを知った。彼女もまた、戦争の傷を抱えていたのだ。


「アリサもオフトの一員だったんだ…」翔太は驚きと共に理解した。


アリサの狂暴化の原因は、過去のトラウマや戦争の影響かもしれない。翔太たちは、彼女を助けるために何ができるかを考えた。


「翔太、アリサを助けるために、俺たちでできることをしよう。」アキラが言った。


「そうだね、彼女も仲間よ。放っておけない。」ユイも同じ意見だった。


翔太たちはアリサと直接話し合うことを決意した。ある日、彼らはアリサを呼び出し、彼女の気持ちを聞くことにした。


「アリサ、君が抱えている辛い気持ちを教えてほしいんだ。」翔太は真剣な表情で言った。


アリサは一瞬戸惑ったが、次第にその表情が和らいでいった。彼女は深呼吸をし、静かに語り始めた。


「私もかつてはオフトの一員だった。戦争で多くの仲間を失い、心に深い傷を負ったの。今でもその傷が癒えないまま、戦い続けている。」アリサの声は悲しみに満ちていた。


翔太たちはアリサの話をじっくりと聞き、彼女の苦しみを理解した。そして、自分たちもオフトの人間だと言い、彼女を支えると言った。


「アリサ、君は一人じゃない。俺たちがいるよ。共に戦おう。」翔太は力強く言った。


アリサは涙を浮かべながら頷いた。「ありがとう、翔太君。私も、もう一度戦うよ。」


アリサとの対話を経て、翔太たちの絆はさらに深まった。彼らは互いに支え合いながら、次の挑戦に向けて準備を進めた。


「これからも一緒に頑張ろう、翔太。」アキラが微笑んで言った。


「うん、これからも。」翔太は力強く頷いた。


彼らの戦いはオフトの精神を胸に、新たな未来を切り拓いていくのだった。


【閑話】二人の引っ越し


この後、アリサも農園で働くことになった。それはオフトの仲間を救いたいという金田の意思によるものだった。

アリサと翔太は、オフトの新しい拠点に移り住むことになった。

二人が新しい拠点に到着した時、その広さと美しさに驚かされた。広大な敷地には、綺麗に整えられた庭や豊かな緑が広がり、生活に必要な施設も全て揃っていた。


翔太とアリサは、この新たな環境に感動し、これからの生活に希望を感じた。

「翔太君、こんな素晴らしい場所があるなんて信じられないね。」アリサは目を輝かせて言った。

「本当にそうだね。ここでなら、俺たちも新しいスタートを切れるかもしれない。」翔太も同じように感動しながら答えた。


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