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0000 プロローグ②

 総長の号令に合わせ、部隊編成をした少年たちが闇に身を隠しながら進んでいく。


「前方に敵発見!距離800m!」

レシーバーの小さなスピーカーから歪んだ声が聞こえる。

「撃ちますか?」

 一人の少年兵が指示を仰いできた。


 金属の骨格むき出しのアンドロイド達の数は約20体の部隊編成。今なら接近戦でも大丈夫だと思うが、少し待った方が良いだろう。

総長は次の報告を冷静に待つことを選んだ。


「司令部。奴らは武装をしている。いつものようにヘルメットを剥がす事は出来ないぞ。」

「そうか、ならプランBだ。痺れさせてやれ。」

「了解。」


 アンドロイド達はゆっくりと歩みを進めている。

 あと100m・・・。


「撃て!」


 放棄された陸上自衛隊駐屯地から拝借した銃弾が命中したのは、アンドロイドではなく、消防に使う取水口。水が噴き出してアンドロイド達の足を留める。


「撃て!」


 次に命中したのは電信柱に取り付けてある変圧器。電線ケーブルと共に水たまりに落ち、アンドロイド達を感電・不能させることに成功した。


「よし!」


 喜んでいるのも束の間、すぐに次のアンドロイド達がやって来た。

 今度は走ってくる。さすがにアンドロイド、スピードが人間ではない速さだ。


「撃て!」


 撃った銃弾は同じく変圧器に命中、落下するが、アンドロイド達は感電することもなく水しぶきを挙げて突進してくる。


「くそ!新型フレームか!」


 実は、アンドロイド破壊事件の後に電気を遮断するフレームが開発されていて、実戦的に軍隊に先発投与されたので、電気による攻撃は無力だった。


 突進してくるアンドロイドから、光るものが発射された。バズーカ砲である。


 その一発が合図のように、至る所から砲弾が飛んで来て、更には空爆もあり群馬市内は一瞬にして、瓦礫の街に代わってしまった。


「こちら司令部。全員退散、逃げろ!」


 指示を受けた少年たちは瓦礫から瓦礫へと身を隠しながら、現場を離れて行くのだが、アンドロイド兵は、動きを呼んでいたかのように背後から攻めて来る。


『手足を切っても構わん!殺すな!命令だ!脳を傷つけるな!』


 アンドロイド兵に流れている指示のアナウンスが聞こえた。


 このアンドロイド兵、バズーカ砲以外にライフルなどの武器は所持していない。コイツならば、倒せるかもしれない。


 少年兵達が集団でアンドロイド兵に襲い掛かったが、アンドロイドのパワーは1体で4tトラックを裏返す事が出来る。故に生身と機械の身体ではパワーが違いすぎる。

 少年達は一瞬にしてはねのけられた。


『抵抗する奴は手足を切った後に頭に黒い印を付けろ!無抵抗は白だ。忘れるな!』


 またもや、アンドロイドから漏れ出る指示の声。


 その指示が聞こえた瞬間に、断末魔の叫びが聞こえた。

 アンドロイド兵は、はねのけた少年たちを捕まえては、そのまま斧などで手足を切り落として行ったのだ。


 強烈な痛みと大量出血の為に少年達は意識を失ってしまった。


 そんな中でも、抵抗する者もいる。

 電気ショックが駄目でも、押しつぶす事なら出来るはずだとトラックを飛ばして来たのだ。

 トラックはアンドロイド達を次々と刎ね飛ばして行き、ついには横転してしまう。

 トラックからはガソリンが漏れだしてきている。


「アンドロイドの馬鹿野郎共め!こっちに来てみろ!」


 トラックの上で挑発をする少年兵にアンドロイド兵が群がって来た。


「じゃあな、みんな!」


 ライターに火を点けアンドロイド兵に目掛け投げた。

 ライターの火はガソリンに引火、トラックはアンドロイド達と共に爆発を起こした。


 その惨状を見て、他の少年兵たちもトラックに乗り込み、アンドロイドと共に自爆して行った。


 バタバタと音が鳴る空を見上げた。

 数機のヘリから、アンドロイド兵達が降下してくる。その数、100体ほど。


 進軍して来たアンドロイド兵は、大きな鉈を両手に持ち、次々と少年兵の手足を切り落として行く。


 抵抗する者は両腕、両足を切断され、頭に黒い印を付けられている。

 無抵抗の者は、手足は切られない状態で頭に白い印が付けられて、連行されて行った。




 埼玉県にある先端医療技術研究所に護送されてきた少年・少女1500名は、頭の印で行く場所を分けられていて、黒い印の者は、大きな医療工場へ搬送、白い印の者は別の建物へと連行されていた。




***




『君がリーダーだね?』

 質問してくるアンドロイド・・・。と言っても、全てのアンドロイドが、同じ金属むき出しのスケルトンなのだから、胸のマークを見ないとこの人が誰なのかさえも解らない。


『リーダーの君は無抵抗でこの地にやって来た。話し合いをするためだろうと思うが、違うのだろうか。』


 総長の少年は、コクリと頷き声を出そうと口を開けた


『すまないが、君達全員アンドロイド手術を受けてもらうよ。そして、君は要注意人物として、記憶を消させてもらう。勿論、抵抗した奴もだ。情けとして、無抵抗の者は記憶はそのままにしておこう。』





 こうして、非道の先の平和が訪れたのである。






 戦争が終わって80年後、アンドロイドは大きな進歩を遂げていた。

 初期のアンドロイドは金属むき出し、所謂、金属製のスケルトンが主流で、個人の見分けがつかない。

 世界は人工的な肉体を生み出すべく、ドール製作・実験を繰り返すようになる。

 第一候補に上がったのは、安価で医療にも使われているシリコンであるが、耐久性がなく、すぐに破損してしまう欠点があった。


 様々な研究の結果、フレームにポリマーゲルを使った人工筋肉を生成し、表面には人工皮膚を纏う事で見た目は人間になった。

 肉体は要らないと言ったアンドロイド達が人間の身体を欲する本末転倒な考えは滑稽である。


 エネルギー補給は機械部分には電池が使われている。

 この小型電池はプルトニウムが原料で、プルトニウムが持つ元素の不安定さの解消に成功した安全な物ではあるが、不安定さの解消の影響で永久的エネルギーではなくなった。故に定期的にと言っても30年おきに電池の入れ替え作業をすればいい代物だ。

 

 脳や肉体部分の活動に必要な科学的合成物の栄養補給剤を貯めておく容器が肋骨内、肺の部分にあり補給するだけで約一週間保たれている。

 故に、医療・工業のみが発展し農業・畜産業が廃退して行った。


 人工的な肉体のデザインは全部で9種類。基本的な型番を選び、そこから自分好みにカスタマイズしていくのである。おかげで、誰が誰なのか見分けがつくようになった。


 大体のアンドロイドたちは、人間だった元の若い頃の自分自身に近づける傾向にあったのだが、これを機会に性転換?男性が女性のタイプ、女性が男性のタイプを選ぶ者もいた。中には無性を選ぶ者もいる。まあ、アンドロイドになった地点で無性なのだが・・・。


 音声もチューニング次第で、渋い声、色っぽい声と自由に選択できるし、それに伴っての仕草などは情報を脳に直接インストールすれば簡単に変身することが可能だった。



 飽きたらまた、変えればいいだけの話なのだからと、皆はまるでファッションを楽しむかのように気軽に人体を選んでいた。



 


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