表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/37

0019 FPSゲーム レジェンド・ストライク

ファンタジーゲームの成功は、CIE(キュービック・アイランド・エレクトロニクス)の名を改めて世に知らしめした。開発者たちは次なるプロジェクトに向けて集まり、ミーティングを重ねていた。


「次はもっと広く受け入れられるように、野球のゲームを作ろうと思うんだよね。」と金田悟が提案した。「往年のスター選手を作り出して、一緒にプレーできるなんてどうだろう?」


一人のゲームデザイナーが頷いた。「ファンタジーゲーム程のインパクトはないけど、大衆に認められるゲームも必要だろうな。」


「それじゃあ、時代的に絶対に無理だと言うスター選手を集めた試合の観覧とかどうだろう?先行で、どんなプロ野球選手が好きかリサーチしてさ。」別のデザイナーが意見を付け加えた。


こうして、CIEは「インフィニティワールド」内の東京エリアに巨大な野球場を建設し、そこでプレイヤーが野球を楽しむことができるようにした。普段はプレイヤーが自身のチームを組んで試合を楽しむが、毎週日曜日には往年のオールスター選手を集めた特別試合が行われ、観覧者はその熱いプレーに魅了されていた。


順調に進んでいたある日、金田はインフィニティワールドの街を歩いていた。新たなアイデアやインスピレーションを探すためである。すると、一人の青年が彼に声をかけてきた。


「もしかして、CIEの方ですか?」青年の顔には期待が溢れていた。


金田は立ち止まり、青年に目を向けた。「そうですけど、何かご用でしょうか?」


青年は興奮気味に続けた。「ああ、やっぱりそうだ。ファンタジーゲームのオープニングセレモニーでお見かけしたものですから。実はお願いがありまして…僕はFPSゲームが好きなのですが、この世界でもできないかなと思いまして。」


金田は首を傾げた。「FPSゲーム?」


「そうです!銃を撃ちまくるゲームです!」青年の目は輝き、情熱が溢れていた。その熱意に圧倒された金田は、「分かりました。CIEで検討しますね。」と約束した。


こうして、CIEは新たな挑戦として「レジェンド・ストライク」の開発に乗り出した。このゲームは、インフィニティワールド内で現実さながらの戦闘体験を提供するFPSゲームとして誕生したのだった。


「レジェンド・ストライク」は、ファンタジー系ゲームとは正反対のプレイヤーVSプレイヤーが基軸のゲームだ。このゲームでは、プレイヤーが金を稼ぐことができる仕組みが人気の理由の一つとなっている。毎日、小さな大会が開催され、上位のプレイヤーには現金が支払われる。大会はチーム戦と個人戦の2種類があり、プロゲーマーも数多く参加している。


さらに、ウルトラ・ストライクという最大のイベントがあり、参加者から集めたエントリーフィーと運営からの補填で高額な賞金が用意される。この大金を目当てに、多くのプレイヤーが腕を競い合う。


田中翔太は、仮想都市「インフィニティワールド」の一角にある薄暗い部屋で目を覚ました。現実世界では、彼の体は狭いアパートの一室にあるベッドに横たわっている。インフィニティワールドは彼の唯一の逃げ場だった。現実の世界では、翔太はオフトの一員として差別と無職の日々を過ごしていた。


仮想空間の中でも、オフトという過去が彼を追いかけてきた。インフィニティワールド内でも彼はオフトとして差別され、まともな仕事にありつけない。かつては人間の体を持ち、アンドロイドとの戦争に参加していたが、その戦争経験が彼を孤立させていた。


ある日、翔太は仮想都市の中を彷徨っていた。仕事を見つけるために様々な場所を訪ね歩いていたが、どこも彼を受け入れてくれなかった。彼の目に留まったのは、新しくオープンした「レジェンド・ストライク」の巨大な建物だった。


「ここでなら、何か変わるかもしれない…」翔太はそう思い、建物の前に立ち止まった。


その時、建物の前で金田悟を見かけた。金田はかつての上司であり戦友だった。彼は元オフトのメンバーを探していることを翔太は知っていたが、今この場で出会うとは思っていなかった。


「金田さん…」翔太は驚きと共に心の中でつぶやいた。


金田は他の開発者たちと話しているようだった。翔太はその姿を見つめながら、心の中で自分を奮い立たせた。「金田さんがいるなら、このゲームで何か変わるかもしれない。」


翔太は決意を固め、建物の中へ足を踏み入れることにした。


建物の中に入った瞬間、彼の視界は一変した。目の前に広がるのは、リアルに再現された戦場。風を感じ、銃声が響き渡る。全てが現実さながらの感覚だ。翔太の心臓は高鳴り、アドレナリンが体中を駆け巡る。


翔太は「レジェンド・ストライク」の巨大な建物に足を踏み入れた。内部は最新のテクノロジーで彩られ、リアルな戦場が広がっていた。彼は心の中で緊張と期待が入り混じった感覚を抱きながら、ゲームの初期設定を完了させた。


画面に表示されたチュートリアルの開始ボタンを押すと、彼の視界は一気に暗転し、次の瞬間、彼は広大な訓練施設の中に立っていた。周囲には様々な訓練用の装置が並んでおり、厳格な表情の仮想インストラクターが現れた。


「ようこそ、『レジェンド・ストライク』へ!」インストラクターは軍人さながらの鋭い声で言った。「これからお前には、基本的な操作を叩き込んでやる。気を引き締めろ、ボケナス!」


翔太はインストラクターの威圧感に圧倒されつつも、彼の指示に従い、キャラクターの動きを確認した。視点の移動、走る、しゃがむ、そして跳ぶ動作を練習した。リアルな感覚に驚きながらも、彼は次第に慣れていった。


「次だ!武器の扱い方を学ぶぞ!」インストラクターが続けた。


翔太は訓練用の銃を手に取り、その重さと質感を確かめた。インストラクターの指示通りに、射撃練習を開始した。ターゲットに向かって銃を構え、引き金を引くと、反動が腕に伝わってきた。翔太はそのリアルさに再び驚きながらも、慎重に狙いを定めて次々とターゲットを撃ち抜いていった。


「まだまだだ!もっと集中しろ!そのままじゃ、戦場でクソの役にも立たんぞ!」インストラクターの鋭い声が響く。


翔太は緊張感を保ちながら、さらに精密にターゲットを狙い続けた。


「よし、次だ。戦術的な動きを叩き込むぞ!」インストラクターが命じた。


翔太はカバーの取り方や、マップの把握、敵の動きを予測する戦術を学んだ


。遮蔽物を利用して安全に移動し、敵の位置を把握する練習を繰り返した。


「動きが鈍いぞ!もっと迅速に動け!そのままじゃ死んでしまうぞ、アホ!」インストラクターの厳しい指導が続く。


翔太はその指導に従いながら、徐々に戦術的な動きに慣れていった。


「最後だ、チームプレイの基本を叩き込んでやる!」インストラクターが命じた。


翔太は仮想のチームメイトと連携して、簡単なミッションをクリアすることになった。指示に従い、チームメイトと共に敵の拠点を制圧し、重要な情報を回収するミッションに挑んだ。翔太はチームメイトとコミュニケーションを取りながら、役割分担をして作戦を進めた。


「もっと声を出せ!連携が命だ!そのままじゃ全員くたばるぞ!」インストラクターの声が響く。


翔太はその言葉に従い、積極的にチームメイトと連携を図りながらミッションをクリアした。


「チュートリアルはこれで終了だ。お前はもう、『レジェンド・ストライク』の世界に飛び込む準備ができている。気を抜くなよ、ボケ!」


翔太はインストラクターの厳しい言葉を聞きながら、深呼吸をした。彼の心臓はまだ高鳴っていたが、その内には確かな決意が芽生えていた。彼は自分の力を試し、新たな戦いに挑む覚悟を決めたのだ。


「行こう…」


翔太は心の中でつぶやきながら、ゲームの本編へと足を踏み出した。


翔太はチュートリアルを終え、ついに「レジェンド・ストライク」の本編へと足を踏み入れた。画面が切り替わり、彼は一瞬で戦場に立っていた。広大なマップには、廃墟となった都市や密林、砂漠などが広がっており、どこに敵が潜んでいるかわからない緊張感が漂っていた。


「まずはソロでやってみるか…」翔太はそう自分に言い聞かせ、慎重に周囲を見渡した。


インストラクターの厳しい指導を思い出しながら、翔太は基本的な戦術を確認した。遮蔽物を利用しながら移動し、敵の動きを予測して行動する。心臓が高鳴るのを感じながら、彼はゆっくりと進んでいった。


突然、遠くから銃声が響いた。翔太は反射的に身を低くし、近くの建物の影に隠れた。心臓の鼓動が早まり、手に持った銃が汗で滑りそうになるのを感じた。


「冷静に…」翔太は自分に言い聞かせ、音の方向を確認した。遠くに敵の姿が見えた。彼は慎重に狙いを定め、引き金を引いた。しかし、撃つ瞬間に敵も彼を見つけ、反撃してきた。


「くそっ!」翔太は撃たれ、視界が一瞬で暗転した。再度ゲームが始まり、彼はスタート地点に戻された。


「次はもっと慎重に…」翔太は自分を奮い立たせ、再び戦場に出た。今回も周囲を慎重に見渡しながら進んだ。彼は先ほどの失敗を反省し、カバーをしっかり取ることを心がけた。


しかし、またしてもミスを犯した。移動中に地面に仕掛けられたワイヤーに足を引っかけてしまったのだ。瞬間的に、翔太は異変に気づいたが、反応する暇もなく爆弾が爆発した。視界が閃光に包まれ、彼の体は吹き飛ばされた。


「しまった…!」翔太は爆発の衝撃で倒れ、視界が暗転した。再びスタート地点に戻され、さらに100クレジットを失い、残りは800クレジットとなった。


「このままじゃダメだ…」翔太は焦りを感じながらも、再度挑戦することを決意した。彼は今度こそ生き延びるために、さらに注意深く行動することを心がけた。


三度目の挑戦では、翔太はさらに慎重に周囲を観察しながら進んだ。彼は建物の影に隠れながら、敵の動きを注意深く見極めた。彼は冷静に狙いを定めたが、その瞬間、複数の敵が彼を発見した。次の瞬間、四方八方から銃弾が飛んできた。


「くそっ…!逃げられない…!」翔太は焦燥感に駆られながらも、何とか身を隠そうとしたが、敵は容赦なく彼をハチの巣にした。銃弾が体に次々と突き刺さり、彼の体は耐えきれずに崩れ落ちた。


「どうして…」翔太は悔しさを感じながらも、再び倒れた。さらに100クレジットを失い、残りは700クレジットとなった。


その後も、翔太は何度も挑戦を続けたが、スナイパーに狙われ続け、次々とキルされてしまった。彼は焦りからミスを重ね、クレジットが減っていくのを感じた。再びキルされ、残りは500クレジットになってしまった。


「もう後がない…」翔太は焦燥感に駆られながら、次の戦いに挑む決意を固めた。しかし、圧倒的に不利な状況で彼がこの戦いを乗り越えることは容易ではなかった。


翔太は廃墟ビルの影に隠れながら、次の一手を考えていた。しかし、背後から再びスナイパーの銃声が響き、彼は倒れてしまった。再びスタート地点に戻された翔太は、クレジットがさらに減っていることに気づいた。


「残り400クレジット…もう無理だ…」翔太は自分に言い聞かせた。


彼は一度深呼吸し、降参のボタンを押した。画面が暗転し、彼はゲームからログアウトされた。


「まだまだ修行が足りないな…」翔太は悔しさを感じながらも、自分の実力を見直すことを決意した。


翔太は現実世界に戻り、次回の戦いに向けてさらなる練習を積むことを心に誓った。彼の戦いはまだ始まったばかりであり、この経験が次のステップへの糧となることを信じていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ