0017 サブクエスト「竜の涙」
斬撃はベッドから起き上がり、深く息をつきながら再び決意を固めた。「今度こそ、必ず成功させる」と心の中で誓い、再びギルド支部へと向かった。
ギルド支部に到着すると、多くのクエスト失敗者が集まっているのが目に入った。
斬撃はこれを見て、情報交換を試みることにした。
「君たちも『竜の涙』で苦戦してるのかい?よかったら、情報交換しないか?」と斬撃は近くの冒険者に声をかけた。
すると、冒険者の一人が驚いたように答えた。「『竜の涙』?知らないクエストだな。それよりも、アンタ、斬撃だろ!俺達とパーティーを組んでくれよ!」
斬撃は予想外の返答に戸惑いながらも、「パーティーか…」と考え込んだ。彼はソロプレーヤーとしての自信とプライドを持っていたが、今回のクエストの難しさを考えると、パーティーを組むことも一つの手段かもしれないと思った。
「悪いが、今は自分の挑戦があるんだ。次の機会に一緒に冒険しよう」と斬撃は丁寧に断り、再びカリンに会うことにした。
カリンは彼を見て微笑みながら言った。「斬撃さん、まだ挑戦を諦めていなかったのですね。」
「もちろんだ、カリン。今度こそ成功させる」と斬撃は決意を込めて答えた。
カリンは頷き、新たな護衛依頼を手渡した。「今回は少し異なる護衛対象者を用意しました。彼らは新たな土地の情報を持っているので、あなたの冒険に役立つでしょう。」
馬車には、先ほどとは異なるNPCたちが乗っていた。医師のリディア、魔法使いのフィリップ、探索者のイアン、そして鍛冶師のバルトが再び含まれていた。
「また君か、バルト」と斬撃は冗談交じりに話しかけた。
「そうだ、斬撃さん。今回はもっと強力な武器を用意してきた。これで守りも万全だ」とバルトは笑顔で答えた。
斬撃は再び馬車を護衛しながら、新天地へと向かう道を進んだ。道中、前回と同様にさまざまな障害が待ち受けていたが、斬撃は一層慎重に対応した。彼はリディアの治癒魔法やフィリップの防御魔法を活用し、敵を確実に撃退していった。
ある地点に差し掛かった時、前回と同じように青い光が現れた。斬撃は再びエルナに馬車で待つよう指示し、光の元へと進んだ。しかし、今回はさらに注意深く、周囲の警戒を怠らなかった。
光を追っていくと、斬撃の前に赤いドレスを着た少女が現れ、非難するような声で言った。「騎士様、昨日はどうして私を置いて逃げたのですか?」
驚きと戸惑いの表情を浮かべる斬撃の横で、青いドレスを着た少女が続けた。「そうよ、そうよ!あなたがお姉ちゃんを見捨てて行ったから、必死で逃げてきたお姉ちゃんを私が慰めたんだからね!」
斬撃はその言葉に一瞬固まった。目の前の二人の少女が前回のリリィと関係があることは明らかだった。しかし、それ以上に斬撃が驚いたのは、NPCが記憶を持っているという事実だった。ゲーム内のNPCが前回の出来事を覚えていることは、今までの常識では考えられなかった。
「どうして…?」彼は心の中で疑問を抱きつつ、慎重に対応することに決めた。「君たち、誤解を招いたなら謝る。前回のことは本当に申し訳なかった」と斬撃は言葉を選びながら答えた。「でも、今回はちゃんと君たちを助ける。約束する。」
『クエスト 竜の涙 受諾しますか? YES/NO』
「YES」と斬撃は答えたが、今回はエルナとフィリップも同行させることにした。「前回は一人で挑んだが、今回は仲間と共に挑もう」と思い、エルナとフィリップを連れて洞窟へと進んだ。
洞窟の入り口にたどり着くと、同じように『松明』が落ちていたが、今回はフィリップが魔法で洞窟内を照らしてくれた。「これで松明の心配はない」と斬撃は安心しながら進んだ。
洞窟内を進む中、二人の少女に再び質問を続けた。今回はエルナとフィリップも加わり、彼女たちの反応を観察した。前回と同様に一定のパターンがあることを確認したが、彼らはそれを逆手に取り、二人の行動を先読みすることで進んでいった。
やがて地下湖に近づいた頃、斬撃はふと足元に違和感を感じた。突然、地面が揺れ始めた。
「みんな、気をつけろ!」と斬撃は叫んだが、その瞬間、地面が大きく陥没し始めた。斬撃たちは避けようとしたが、足場が崩れ落ち、彼らは一瞬にして深い穴へと落ちていった。
斬撃は必死に周囲を見渡し、なんとかエルナとフィリップを守ろうとしたが、そのまま闇の中に吸い込まれてしまった。意識が遠のく中、斬撃は心の中で悔しさと無力感を感じた。
目が覚めると、斬撃は再びウィンドリーフの宿屋に戻っていた。彼は深く息をつきながら、ベッドから起き上がった。
『クエストに失敗しました。』
斬撃はそのメッセージを見つめ、しばし考え込んだ。「一体、何が起こったんだ…?」彼は自問しながら、再び冒険に立ち向かう準備を始めた。
「もう一度、挑戦だ。」斬撃は拳を固く握り、再びギルド支部に向かって歩き出した。彼の心には、今度こそ成功させるという強い意志が宿っていた。
再びギルド支部に到着した斬撃は、同じようにクエスト失敗者が集まっているのを見たが、彼はもう迷いなくカリンに直行した。
カリンは彼の姿を見て微笑んだ。「斬撃さん、また挑戦をされるのですね。」
「そうだ、カリン。今度こそ成功させる」と斬撃は力強く答えた。
カリンは新たな護衛依頼を手渡した。「今度の挑戦でも同じ護衛対象者たちです。彼らを無事に新天地まで護衛してください。」
斬撃は再び馬車に乗り込み、リディア、フィリップ、イアン、バルトと共に新天地へと向かった。彼は前回の失敗を胸に刻み、さらに慎重に進んだ。
道中、再び青い光が現れたが、斬撃は今度こそ成功させる決意で、二人の少女と向き合った。
赤いドレスを着た少女は涙ぐみながら言った。「騎士様、どうして私たちの願いを聞き届けてもらえないのですか?」
青いドレスを着た少女は非難するように言った。「あなた、本当に騎士なの?本当はとっても弱いんでしょ!」
斬撃は頷き、「今度こそ必ず助ける」と誓い、再びクエストを受諾した。
『クエスト 竜の涙 受諾しますか? YES/NO』
「YES」と斬撃は答えた。
洞窟内を進む中で、再び地面が揺れ始めたが、斬撃はその兆候を見逃さず、仲間たちと共に迅速に対処した。
「皆、気をつけろ!」斬撃の警戒が功を奏し、彼らは無事に地下湖にたどり着いた。
湖のほとりには、美しい青い光が輝いていた。斬撃はその光を見つめ、決意を新たにした。
「ここからが本番だ。みんな、準備はいいか?」
仲間たちが頷く中、斬撃は再び冒険の最前線に立ち、新たな挑戦に立ち向かう準備を整えた。
しかし、地下湖に到着したその瞬間、巨大な影が湖の中心から姿を現した。それは竜だった。斬撃たちが何かをする間もなく、竜は前触れもなく炎を吐き出した。
「逃げろ!」斬撃は叫んだが、竜の炎は彼らを包み込み、逃れる間もなくクエスト失敗の通知が表示された。
『クエストに失敗しました。』
斬撃はまたしても目の前が真っ暗になり、意識が遠のいていった。
目が覚めると、再びウィンドリーフの宿屋に戻っていた。
彼は深く息をつきながら、ベッドから起き上がった。
「また失敗か…」斬撃は悔しさを感じながらも、再び決意を新たにした。
「今度こそ、必ず成功させる。」
斬撃は再びギルド支部に向かい、カリンに挑戦を再度伝えたが、今回の失敗の原因をじっくり考えた。「竜の行動パターンや、何か見落としている点があるのではないか」と考え込む。
ギルド支部の掲示板に目をやると、斬撃はふと気づいた。竜に関する古い伝説が貼られていた。
伝説には、「竜の怒りを鎮めるためには、特定のアイテムが必要である」と記されていた。
斬撃はこの情報を見て、新たな作戦を練ることにした。
「これだ…このアイテムを探し出せば、竜を鎮めることができるかもしれない。」
斬撃は新たな目的地を見据え、まずはそのアイテムを手に入れるための冒険を始める決意を固めた。
斬撃は古い伝説に目を留め、掲示板に記された情報をじっくりと読み込んだ。伝説によれば、竜の怒りを鎮めるためには「ドラゴンハート」という特別なアイテムが必要だということが書かれていた。このアイテムは非常に希少で、特定の古代遺跡に隠されていると伝えられていた。
「これだ…このアイテムを手に入れれば、竜を鎮めることができるかもしれない」と斬撃は確信し、新たな冒険の準備を始めた。
まずはカリンに会い、事情を説明することにした。ギルド支部に向かい、カリンに伝説とドラゴンハートについて話した。
カリンは頷きながら言った。「それは良い考えです、斬撃さん。ドラゴンハートを手に入れれば、竜を倒すことができるかもしれません。でも、その遺跡は非常に危険です。慎重に行動してくださいね。」
斬撃は感謝の意を示し、ギルド支部を後にした。次に彼は、再び仲間たちと合流することにした。リディア、フィリップ、イアン、バルトに事情を説明し、ドラゴンハートを探すための新たな冒険に挑むことを提案した。
「これは簡単な道のりではないが、竜を倒すためには避けて通れない試練だ」と斬撃は言った。「みんなの力を借りたい。」
仲間たちは即座に同意し、斬撃と共に新たな冒険へと出発する準備を整えた。
冒険の舞台は、ウィンドリーフの遥か東に位置する古代遺跡だった。そこには古の魔法が施された仕掛けや、強力な守護者が待ち受けているという噂が広まっていた。
旅の途中、斬撃たちはさまざまな困難に直面した。荒れ狂う天候、急襲してくるモンスター、そして遺跡への道を阻む自然の障害。しかし、彼らは互いに助け合い、次々と困難を乗り越えていった。
ついに古代遺跡に到着した斬撃たちは、入り口で一度休憩をとり、作戦を練ることにした。遺跡の内部には、数多くのトラップや強力なモンスターが待ち受けていることが予想された。
「ここからが本番だ」と斬撃は仲間たちに言った。「みんな、準備はいいか?」
仲間たちは頷き、斬撃の先導で遺跡の中へと足を踏み入れた。暗い廊下を進む中で、フィリップの魔法が道を照らし、リディアが治癒の魔法を準備し、イアンが先行してトラップを解除し、バルトが後方を守った。
遺跡の奥深くまで進むと、ついにドラゴンハートが安置されていると思われる祭壇にたどり着いた。そこには、巨大な石像が立ち並び、強力な守護者が待ち受けていた。
「気をつけろ、ここから先は本当に危険だ」と斬撃は警告し、仲間たちと共に守護者に立ち向かった。
激しい戦闘が繰り広げられたが、斬撃たちは連携を駆使して守護者を倒し、ついにドラゴンハートを手に入れることに成功した。アイテムを手に入れた斬撃は、それが本物であることを確認し、再び竜のいる洞窟へと戻る準備を始めた。
「これで竜を鎮めることができるはずだ」と斬撃は自信を持って言った。「今度こそ、成功させよう。」
洞窟に戻った斬撃たちは、再び竜に立ち向かう準備を整えた。斬撃はドラゴンハートを掲げ、仲間たちと共に洞窟の奥へと進んだ。
地下湖に到着すると、再び巨大な竜が現れた。しかし、今回は斬撃たちはドラゴンハートを手にしていた。竜が炎を吐き出す前に、斬撃はドラゴンハートの力を発動させた。
すると、竜の動きが一瞬止まり、その目に怒りの炎が消えていくのが見えた。竜はゆっくりと動きを止め、その場に伏した。
「これで終わりだ…」斬撃は呟き、仲間たちと共に勝利を喜んだ。
しかし、その瞬間、竜は最後の力を振り絞り、強力なブレスを放った。斬撃たちは防御態勢をとったが、その炎の力に圧倒され、全員が倒れてしまった。
『クエストに失敗しました。』
斬撃は再び暗闇に包まれ、意識が遠のいていった。目が覚めると、再びウィンドリーフの宿屋に戻っていた。彼は深く息をつきながら、ベッドから起き上がった。
「くそ!」斬撃は悔しさのあまりに壁に怒りをぶつける。「今度こそ、必ず成功させる!」
彼はギルド支部に向かい、再び挑戦の準備を始めた。




