0014 斬撃
その新たなゲームプレーヤーの名は田中翔太。彼は現実世界ではプロゲーマー『斬撃』として名を馳せ、多くのファンを持っていた。その実力と戦略は誰もが認めるところで、特にソロでのゲーム攻略においては右に出る者はいなかった。
とは言っても、それはアンドロイドになるはるか昔10代〜20代の頃の話で、今となっては何年前かも覚えていない。
JIPANG内にファンタジーゲームエリアが出来たと聞いたので、興味本位で参加してみた。
翔太はこの仮想現実のファンタジー世界で新たな冒険を始めることに興味を示した。
ゲームにログインすると、彼もまたキャラクターのカスタマイズ画面に案内された。
『新たな冒険の準備をしましょう!見た目を決めてください。』
翔太は画面を見ながら考えた。「昔と同じようなアバターでいいか…。強さと速さを感じさせるキャラクターだったな…。」
まずは顔の形を選んだ。「年よりっぽいんだけど、鋭い顎のラインに、切れ長の目だったな。剣豪を感じさせる顔立ちがいい。」
次に髪型を選び、「長すぎず、短すぎず、動きやすい髪型がいいな。銀色で艶のある髪にしよう。」と設定した。
肌の色は「健康的な小麦色にしよう。野外での戦闘にも耐えられる感じがする。」と決めた。
体型については、「筋肉質で、動きやすい体型にしよう。高身長でバランスの取れた体格が理想だ。」と設定した。
最後に、プレーヤーネームの入力欄に「斬撃」と入力し、新しい冒険を始めることにした。「これで準備完了だ。さあ、どこまでやれるか…。」
キャラメイクを終えると、斬撃のキャラクターがゲームの世界に現れた。彼が立っていたのはウィンドリーフの街の入口で、周囲には他のプレイヤーやNPCたちが賑わっていた。
斬撃は町の中心にある冒険者ギルド支部に向かった。ギルド支部の前にはガイド役のNPC、エルダーが待っていた。「ようこそウィンドリーフへ。まずはあなたの職業を選びましょう。」
斬撃はエルダーにお礼を言い、ギルドマスターのカリンに会いに行った。「ようこそ、ウィンドリーフへ。まずはあなたの職業を選んでください。これが今後のスキル獲得や冒険のスタイルに大きく影響します。」
「僕は剣士になりたい。双剣を使う剣士だ。」
カリンは斬撃に微笑み、剣士の初期装備である双剣と軽装の鎧を渡してくれた。「素晴らしい選択です。双剣使いの剣士は高い攻撃力と機動力を持ち、近接戦闘に特化しています。これがあなたの初期装備です。」
「ありがとう、カリン。」
斬撃は訓練場で基本戦闘訓練を受けることにした。インストラクターのエリックが親切に指導してくれた。「まずは基本的な双剣の使い方から始めよう。しっかりと握って、リズミカルに攻撃を繰り出すんだ。」
「わかりました、エリック。」
次に、実践訓練が行われた。斬撃は双剣を構え、素早い連続攻撃を繰り出す練習をした。エリックのアドバイスで、敵の動きを封じる効果的な攻撃パターンを学んだ。「良いぞ、その調子だ。もっとスムーズに、連続して攻撃を繰り出すんだ。」
訓練を終えた後、斬撃は冒険者ギルド支部に戻り、クエストボードで初心者向けのクエストを確認した。クエストボードにはさまざまな依頼が掲示されている。「まずは簡単なクエストから始めよう。」
『ゴブリン討伐』。
斬撃はクエストの紙を取り、受付カウンターに持っていった。「はじめてのクエストで、いきなりこれは無理かと思われるのですが。」
「いや、大丈夫だ、エミリー。行ってきます。」
斬撃は街をで森へ向かい、ゴブリンを探し始めた。様々な場所を探索し、他の冒険者に話を聞きながら、ついに小さな小川付近でゴブリンの集団を見つけることができた。「オッシャー、腕がなまってないなら、余裕だろう!」
クエストを無事にこなした後、ギルド支部に戻り、達成報告を行った。「ゴブリン討伐、達成しました。」
エミリーはにっこりと笑い、報酬を手渡してくれた。「お疲れ様でした。これが報酬です。経験値とポーション、それにゴブリン討伐達成のお金です。次のクエストも頑張ってくださいね。」
斬撃は報酬を受け取り、次のクエストに挑むことにした。彼の冒険はこれからますます広がっていくのだった。
斬撃はその後も数々のクエストをこなし、さらにその実力を磨いていった。ある日のこと、彼の強さを証明する機会が訪れた。
斬撃がウィンドリーフの外れにある森で「モンスター駆除」クエストを進めていると、突然、遠くから助けを求める声が聞こえてきた。声の方向に駆けつけると、他のパーティーが強力なモンスターに囲まれ、苦戦している場面に遭遇した。
そのパーティーはリーダーのアレン、魔法使いのリサ、そして弓使いのカイルの三人だった。彼らは上級者向けのクエストに挑んでいたが、予想以上のモンスターの強さに圧倒されていた。
「助けてくれ!もう限界だ!」アレンが叫んだ。
斬撃は瞬時に状況を把握し、双剣を構えて戦闘体勢に入った。「ここは俺に任せろ!」
彼の圧倒的な戦闘スキルは瞬く間に発揮された。素早い動きで敵の攻撃をかわしながら、双剣で次々とモンスターを倒していく。リサの魔法で足止めされたモンスターを的確に仕留め、カイルの矢が狙いを外すことなく飛んでいくのをサポートする。
「すごい…こんな強いプレイヤーがいるなんて…」リサが驚愕の声を漏らした。
斬撃は冷静に戦い続け、ついに最後のモンスターを倒した。
アレンたちは息を切らしながら感謝の言葉を述べた。「本当に助かったよ、ありがとう。君の名前は?」
「名乗るほどの者ではない。」と、言い残し去って行った。
その去っていく後姿を見て、「もしかして、あの人って『斬撃』なんじゃ…。俺、昔ファンだったんだよ。」
彼らは斬撃の強さと冷静さに感服し、その噂はすぐに広まっていった。ウィンドリーフの冒険者たちは彼の名を口にし、次第に斬撃は有名人として認識されるようになった。
ギルド支部に戻ると、エミリーが興奮気味に迎えてくれた。「斬撃さん、他のパーティーを助けたという話がもう広まっていますよ!あなたの実力は皆に知れ渡りました。」
「そうか。助けが必要なときは誰でも助ける。それが俺の信念だからな。」
ギルドマスターのカリンも斬撃に感謝の意を示した。「あなたの行動はギルド全体にとって非常に有益です。これからもその実力を発揮し、冒険者たちを助けてください。」
斬撃の名声はますます高まり、彼の存在は他の冒険者たちにとって希望の象徴となっていった。彼がいることで、困難なクエストにも挑戦する勇気を持つ冒険者が増えていった。
彼は次のクエストを受けるためにギルド支部へ向かい、エミリーに話しかけた。「エミリー、このゲームのシステムは本当に素晴らしいね。次はどんなクエストが待っているんだろう。」
エミリーは微笑みながら、最新のクエスト情報を斬撃に提供した。「斬撃さん、あなたの腕前を信じて、次のクエストは『古代遺跡の探索』です。この遺跡には強力なモンスターが潜んでいますが、貴重なアイテムも手に入るかもしれません。」
「ほう、古代遺跡の探索か。面白そうだね。早速挑戦してみるよ。」
斬撃は「古代遺跡の探索」クエストに挑むため、ウィンドリーフの町を出発した。遺跡の場所は森の奥深く、誰もが容易に辿り着ける場所ではなかった。道中、彼は森の生態系を観察しながら慎重に進んだ。
やがて、巨大な石碑が見えてきた。その石碑には古代文字が刻まれており、何かの鍵を示しているようだった。斬撃は石碑を調査し、その文様を注意深く観察した。
「これは…古代の言語だな。解読できれば遺跡への入り口が分かるかもしれない。」
斬撃はギルドで得た情報を思い出しながら、石碑の文字を一つ一つ読み解いていった。数時間かけてようやく解読が進み、彼は石碑の裏に隠されたスイッチを発見した。スイッチを押すと、地面が震え、隠されていた入り口が開いた。
「よし、これで遺跡に入れる。」
斬撃は注意深く遺跡の中に足を踏み入れた。薄暗い内部は冷たい空気に包まれており、何世紀も人の手が入っていないことが感じられた。彼は慎重に進み、次々と現れる罠を見破りながら前進した。
奥に進むにつれ、遺跡の壁には古代の絵画や彫刻が現れ、その歴史が垣間見えた。斬撃はそれらを観察しながら、次のヒントを探した。突然、前方から異様な気配が感じられた。
「この気配…強力なモンスターがいるな。」
斬撃は双剣を構え、慎重に進んだ。やがて、巨大な扉の前に立った。扉の先には強力なモンスターが待ち受けているのだろう。斬撃は深呼吸し、扉を押し開けた。
中には巨大なドラゴンが待ち構えていた。その目は赤く輝き、怒りに満ちているようだった。斬撃は一瞬の隙を見逃さず、双剣で攻撃を仕掛けた。
「これが遺跡の守護者か。相手にとって不足はない。」
ドラゴンは激しい炎を吐きながら反撃してきたが、斬撃は素早い動きでそれをかわし、鋭い攻撃を繰り出した。戦いは熾烈を極めたが、彼の冷静な判断と高い戦闘技術が次第に優位をもたらした。
最終的に、斬撃はドラゴンの弱点を見抜き、致命的な一撃を加えた。ドラゴンは轟音とともに倒れ、その身体から輝く宝石が現れた。
「これが遺跡の秘宝か。」
斬撃は宝石を手に取り、遺跡の出口へ向かった。外に出ると、彼の顔には達成感が漂っていた。
ウィンドリーフに戻ると、エミリーが待っていた。「斬撃さん、お帰りなさい!無事にクエストを達成されたんですね。」
斬撃は微笑みながら宝石をエミリーに見せた。「これが遺跡の秘宝だ。無事に手に入れたよ。」
エミリーは驚きと感動の表情を浮かべた。「素晴らしいです!ギルドの皆も斬撃さんの活躍を喜んでいます。これからもその実力を発揮してくださいね。」
「もちろんだ。次のクエストも楽しみにしているよ。」
斬撃の冒険はこれからも続いていく。新たな挑戦と発見が彼を待っている中、彼はさらなる強さと知恵を身につけ、ウィンドリーフの英雄として成長していくのだった。




