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0011 クラブからギルドへ

狩猟クラブの成功は、CIE内外で大きな話題となっていた。クラブのメンバーたちは、ますます多様な依頼を受け、次々と新しい挑戦に立ち向かっていた。


CIEのオフィスでも、その話題で持ちきりだった。ある日、オリジナルメンバーの一人、ニコルがこう言った。

「聞いたか?狩猟クラブの連中、ものすごい勢いで成長してるらしいぞ」


「そうだな。なんか、まるで冒険者ギルドみたいだ」とマックが答えた。


「冒険者ギルド?」ニコルが興味深げに聞き返した。


「ああ、冒険者たちが集まって、依頼を受けて任務を遂行する組織だよ。狩猟クラブも同じような感じになってきてるんじゃないか?」とマックは説明した。


その会話を聞いていたカレンが微笑んで言った。「確かに、そういう方向に進化するのは面白そうね。私たちも何か手伝えることがあればいいのに」


コウジ・タケダもうなずいた。「そうだな。新しい挑戦は常に歓迎だ。狩猟クラブがどこまで進化するか、見物だな」


ライドは痩せた体を揺らしながら言った。「でも、彼らが本当に冒険者ギルドみたいになるなら、私たちも何か役割を持てるかもしれないね」


そのアイディアはすぐに広まり、狩猟クラブのメンバーたちにも伝わった。金田はその話を聞いて考え込んだ。「冒険者ギルドか…。確かに、私たちの活動はそれに近いかもしれない。ならば、もっと多様な依頼を受けられるようにしよう」


彼はすぐにCIEの上層部に提案を持ちかけた。「狩猟クラブを、冒険者ギルドのような多目的な組織に進化させたいと思います。狩猟だけでなく、救助活動や探索、さらには新たな地域の開拓など、多様な任務を引き受けられるようにしたいのです」


その提案に、CIEの上層部は目を輝かせた。「冒険者ギルド?それは素晴らしいアイディアだ!元々私たちはゲーム会社だし、このコンセプトには大いに可能性を感じる。ぜひ実現しよう」と、彼らは前のめりにOKを出した。


金田はCIEの熱意に少し驚きながらも、心の中に一抹の不安を感じていた。「なんで、そんなに乗り気なんだ…」CIEが急にこの新しい方向性に熱心になっている理由がわからず、不安が募る。彼は続けて考えた。「急な変化に対する準備ができているのか?ギルドの方向性を見失うことはないか?」


新しい冒険者ギルドの構想が具体化し始めると、クラブのメンバーたちは興奮を隠せなかった。新たなメンバーの募集も始まり、多様なスキルを持つ人々が集まってきた。


ギルドの活動範囲は広がり、新しい地域での探検や、危険なミッションへの挑戦など、さまざまな任務が追加された。メンバーたちは新しい挑戦に胸を躍らせ、日々の活動に精を出した。


特に、以前は荒くれ者だった佐々木剛が大きな成長を見せた。彼はチームのリーダーシップを発揮し、仲間たちを導く存在となっていった。


ある日、メンバーの一人が戻ってきて報告した。「新しいミッションエリアに行ったんですが、奇妙な生物がいました。まるでモンスターみたいな…」


金田はその報告を聞いて驚いた。「モンスター?私たちのシステムにそんなものはプログラムされていないはずだ」


他のメンバーたちも不安を覚え始め、次々とモンスター目撃情報を報告してきた。状況を確認するため、金田はデザイナーたちと会議を開いた。「やはり、ファンタジー要素が入ってくるのか…」金田は深刻な顔でデザイナーたちに話しかけた。


その後、金田はすぐに対応策を講じた。「モンスターと戦うには、それなりの装備が必要だ。CIEと協力して、新しい装備を開発しよう」


CIEのエンジニアたちは、中世の世界観を基にした設定を導入し、モンスターに対応するための装備を考案した。「冒険者ギルドがある場所は、中世の世界観がいいですよね。その設定に基づいて、冒険者たちが使う装備を開発しましょう」


装備の開発には、特別な鍛冶技術が必要だった。金田はエンジニアたちと協力して、鍛冶の達人を探し出した。彼らは、ファンタジーの世界観でその技術を持つのはドワーフの鍛冶屋だろうと早速プログラムを始めた。ドワーフたちは、古代から続く鍛冶の技術を駆使して、冒険者たちの装備を作り上げることになった。


冒険者ギルドの本拠地は外縁地域近くの比較的安全な場所に構えることとなった。これにより、冒険者たちは危険なエリアへの迅速なアクセスが可能となり、依頼を効率よくこなすことができるようになった。ファンタジー感を大事にするあまり、東京エリアへの交通手段は徒歩か馬車に限定され、冒険者たちはまるで中世のファンタジー世界に生きているかのような感覚を味わうことができた。


金田は、モンスターの出現エリアを把握するために地図を作成した。東京エリアの近くでモンスターが現れることは避けなければならない。CIEのデザイナーと協力して、仮想現実の世界全体の地図を作成し、モンスターが出現するエリアを明確に示した。


地図には以下のエリアが示されていた:

- **東京エリア**:安全地帯。ここではモンスターは出現しない。

- **外縁地域**:中程度の危険度。小型のモンスターが出現する。

- **未開の地**:高リスクエリア。大型のモンスターが出現し、冒険者たちは特別な装備が必要とされる。


金田はこの地図を狩猟クラブのメンバーに共有し、各エリアのリスクと必要な装備について説明した。


狩猟クラブのメンバーたちがモンスター退治の難しさを実感する中で、金田は新たな決断を下した。「狩猟クラブのメンバーだけでは、モンスター退治は難しい。もっと専門的なスキルを持った冒険者たちを募集しよう」


その呼びかけに応じて、個性豊かな冒険者たちが次々と集まってきた。剣術に長けた戦士、弓の名手、薬草に詳しい治癒師など、多彩なスキルを持つ者たちが集まり、ギルドは一気に活気づいた。


「初めまして。私はリディ


ア・ストーン、剣の使い手です。モンスター退治に協力させていただきます」とリディアが自己紹介した。


「私はアラン・ホーク、弓の名手です。どんな獲物も逃しません」とアランが自信満々に言った。


「私はキャラ・ノックス、魔法使いです。強力な魔法でモンスターを撃退します」とキャラが微笑んで言った。


「私はエリック・ハント、治癒師です。怪我を負った仲間をすぐに治療します」とエリックが穏やかに言った。


その一方で、金田は二人の新しいメンバーに特に興味を持っていた。ミリア・ウィンドとエリオット・グリーンという名の彼らは、魔力がないにもかかわらず、魔法職冒険者として応募してきたのだ。


金田はミリアとエリオットを呼び出して、話をすることにした。「こんにちは、ミリア、エリオット。君たちの話を聞かせてほしい。なぜ冒険者として活動することを選んだのか?」


ミリアは自信満々に腕を組み、目を輝かせて言った。「実は私、秘めたる力を持っているんです!その力が発動するとき、周囲の風が騒ぎ立てるんですよ!」


エリオットも胸を張り、「私の手には、治癒のオーラが宿っています。見た目には見えないんですけど、触れるだけで人々を癒すんですよ」と、手をかざして見せた。


金田は少し戸惑いながらも笑みを浮かべた。「それは、すごいですね。具体的にどんな風に役立っているのですか?」


ミリアは目をキラキラさせながら、「ええと、まだ完全には発動してないんですけど、予感はあるんです!この前、風が私の髪をそよがせた瞬間、鳥が鳴いたんですよ。きっとその前兆です!」と真剣に答えた。


エリオットも真面目な顔で続けた。「僕の治癒オーラも、まだ完全にコントロールできてないんですが、この前、ハーブティーを飲んだ後に友達が『美味しい』って言ってくれたんです。絶対に治癒の力が働いてるに違いない!」


金田は思わず笑ってしまったが、真剣な表情で言った。「君たちのその情熱は素晴らしいですね。具体的な成果が出るのを楽しみにしています。その前兆や予感も大事な経験ですからね」


ミリアはさらに真剣な表情で、「そうですよ!私の力が覚醒した時、必ずや風の精霊と対話できるはずです!」と言い切った。


エリオットも負けじと、「僕のオーラが完全に発現すれば、きっと植物たちとも話せるようになるでしょう。自然の声を聞き、仲間たちを助けるんです!」と宣言した。


金田は面白いと感心して頷いた。「君たちの意志と努力は本当に素晴らしいですね。魔力がなくても、自分のスキルを磨いて役立てる姿勢は尊敬に値します。これからもギルドの一員として、共に頑張りましょう」


ミリアとエリオットは満面の笑みで頷いた。「ありがとうございます、金田さん。私たちもギルドのために全力を尽くします!」


こうして、金田は二人のユニークな冒険者たちを迎え入れ、冒険者ギルドの活動はますます多様化していった。彼らの個性と努力が、ギルドに新たな風を吹き込み、組織全体を一層活気づけることとなった。


ミリアは剣の使い手として、狩猟チームに配属された。彼女はその情熱と技術で他のメンバーに大きな影響を与えた。しかし、ミリアには一つの癖があった。必殺技名を叫ばないと気が済まないのだった。


ある日、狩猟チームが危険な外縁地域での任務に出発する前、ミリアは仲間たちに向かって力強く言った。「今日はみんなで一丸となって、このエリアを安全にするのよ!私が前線で道を切り開くから、みんなは私についてきて!」


狩猟が始まると、ミリアは剣を高く掲げて叫んだ。「闇の風よ、我が刃に宿れ!シャドウ・ブレード!」もちろん、彼女の剣に特別な力は宿らないが、その気迫で獣を圧倒し、仲間たちは内心笑いをこらえつつも、ミリアの実力を認めていた。


エリオットは薬学の知識を活かして治療班で活躍していた。彼は怪我を負ったメンバーを迅速に治療し、その腕前が高く評価された。しかし、エリオットもまた、治療のたびに特別な名前を叫ばないといけなかった。


ある日、大型動物との戦闘で負傷者が続出した際、エリオットは冷静に対処した。「落ち着いて、ここに集まってください!まずは消毒して、傷を洗浄します。その後、特製の治療薬を使って治療しますから、安心してください」


エリオットは治療薬を取り出し、高らかに叫んだ。「聖なる光よ、癒しの力を授けたまえ!ヒーリング・ライト!」もちろん、彼の手から光が放たれるわけではないが、その言葉と共に薬を適用し、負傷者たちは感謝しつつも、その演技に苦笑いを浮かべた。


金田はそんな二人の活躍を見て、心から感謝の意を表した。「ミリア、エリオット、君たちの力がギルドにとって大きな支えになっている。本当にありがとう」


ミリアは満面の笑みで答えた。「私たちもギルドの一員として、全力を尽くします!風の精霊もそう言っているわ!」


エリオットも同じく笑顔で答えた。「そうですね。みんなが安全に任務を遂行できるよう、これからも頑張ります!治癒のオーラがそうさせるのです!」


彼らの個性と努力がギルドに新たな風を吹き込み、組織全体を一層活気づけることとなった。


特に、最近追加されたエリアでの探検はギルドの成長を象徴するものだった。新たな地域「グリーン・ヴァレー」は、美しい自然が広がる一方で、未知の危険が潜んでいるエリアだった。


ある日、リディア・ストーンをリーダーとする探検隊が結成され、グリーン・ヴァレーの奥地を探索する任務が与えられた。彼女のチームには、エリック・ハント、アラン・ホーク、そしてミリア・ウィンドが含まれていた。


「みんな、準備はいいか?」リディアが剣を掲げて呼びかけると、メンバーたちは一斉に応じた。


「もちろんだ、リディア。今回はどんな発見が待っているのか楽しみだな」とアランが弓を持ちながら微笑んだ。


「気をつけて進みましょう。何が起こるかわからない場所だからね」とエリックが慎重に進行を促した。


ミリアは、剣を握りしめながら意気込んだ。「大丈夫、私たちは最強のチームだもの。どんな敵でも倒してみせるわ!」


探検隊は慎重に進み、やがてグリーン・ヴァレーの奥深くに到達した。そこには美しい滝と、その下に広がる大きな湖があった。しかし、その静寂を破るか


のように、突然巨大な蛇のような生物が湖から現れた。


「これは…モンスターか!」リディアが叫び、剣を構えた。「みんな、戦闘準備だ!」


アランは素早く弓を引き絞り、「シャドウ・アロー!」と叫びながら矢を放った。矢は見事に蛇の目を狙い、深く刺さった。


エリックは急いで治療薬を準備し、「怪我をしたらすぐに言ってくれ!」と仲間に声をかけた。


ミリアは前線に立ち、「闇の風よ、我が刃に宿れ!シャドウ・ブレード!」と叫んで剣を振り下ろした。


激しい戦闘の末、チームは見事にモンスターを倒し、湖の平和を取り戻した。


また、別の日には救助ミッションが行われた。冒険者の一人が未開の地で遭難し、救助隊が派遣されたのだ。リーダーはエリオット・グリーンが務め、治癒師としての知識を駆使して遭難者を救出する任務を担った。


「エリオット、遭難者の位置はこの先の崖の下だ。慎重に行こう」とアランが地図を見ながら言った。


「わかった、アラン。準備はできている。急ごう」とエリオットは応じた。


救助隊が崖の下に到着すると、遭難者は意識を失っていた。エリオットはすぐに治療を開始し、高らかに叫んだ。「聖なる光よ、癒しの力を授けたまえ!ヒーリング・ライト!」


仲間たちは彼の指示に従い、迅速に対応し、無事に遭難者を救出することができた。


こうして、ギルドの活動範囲は広がり、メンバーたちは新たな挑戦に立ち向かうことで成長を続けていた。彼らの努力と協力が、冒険者ギルドとしての成長を支えていた。


ミリアとエリオットの噂を聞きつけて応募してきた多くの個性的な応募者たちがいた。金田は彼らの面接を担当することになった。


最初の応募者は、黒いマントを身にまとった青年だった。「私はダーク・シャドウ、闇の王子だ!このギルドに加わり、闇の力で仲間を守りたい!」


金田は少し戸惑いながらも質問した。「ダーク・シャドウさん、具体的にはどのようなスキルをお持ちですか?」


ダーク・シャドウはマントを翻し、「私は影の力を操ることができる。闇に紛れて敵を無力化するのだ!」と自信満々に答えた。


次の応募者は、白いローブをまとった少女だった。「私はホーリー・ライト、聖なる巫女です。この手で皆を癒し、光の力で闇を払います!」


金田は微笑みながら尋ねた。「ホーリー・ライトさん、あなたの得意な治療方法について教えてください」


ホーリー・ライトは真剣な表情で、「私は光のエネルギーを使って傷を癒すことができます。特に、聖なる祈りを捧げることで、即座に回復させることができます!」と答えた。


次に現れたのは、豪華な甲冑を身にまとった大柄な男性だった。「私はフレイム・ナイト、炎の騎士だ!この剣で敵を焼き尽くし、仲間を守る!」


金田は興味深げに質問した。「フレイム・ナイトさん、戦闘での経験やスキルについて教えてください」


フレイム・ナイトは剣を掲げ、「私は炎の魔法を使いこなし、敵を一瞬で灰にすることができる。炎の力で全てを焼き尽くすのだ!」と答えた。


最後に現れたのは、魔法の杖を持った少年だった。「僕はミスティック・ウィザード、魔法の探求者です。ギルドの一員として、未知の魔法を解き明かしたい!」


金田は笑いをこらえながら尋ねた。「ミスティック・ウィザードさん、あなたの魔法の得意分野について教えてください」


ミスティック・ウィザードは杖を振りながら、「僕は古代の魔法書から学んだ魔法を使うことができます。特に、幻影や召喚魔法が得意です!」と答えた。


金田は面接を終え、ミリアとエリオットに報告した。「君たちの噂を聞いて、多くの個性的な応募者が集まってきたよ。彼らのスキルは独特だけど、熱意は本物だ」


ミリアは嬉しそうに答えた。「それは素晴らしいですね!彼らと一緒に働くのが楽しみです」


エリオットも笑顔で言った。「そうですね。彼らの独自のスキルが、ギルドに新たな風を吹き込むことを期待しています」


金田は深く息をついて言った。「でも、正直に言うと、君たち二人だけでお腹いっぱいだから、彼らを雇うのはやめることにした」


こうして、新たな応募者たちを迎えることはなかったが、ミリアとエリオットの個性と努力が、ギルドに新たな風を吹き込み、組織全体を一層活気づけることとなった。


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