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「聞きたいのは、ノア殿がカナメに『高位精霊二体と契約をしていると思う』と言った事なんだが。どうして分かったのだろうか?」

この国では精霊が見える人がいない。うっすらとぼんやり見える場合はあるけれど、それでもはっきり「そうだ」とは言えないものだ。

それでもそれだけでこの国では、重宝される能力になる。

「ぼく自身は精霊が見えないのでなんとも。ただぼくの従者のエルランドが精霊を光として認識できる稀有な能力を持っています。エルランドが言うには『カナメ様には精霊が二体。つねにそばにいる』状態で、なおかつ『その精霊の光が常に強い』そうです」


ノアはこれに付け加える形で、

光の強さは精霊の感情など(・・)が関係しているのではないだろうかと考えている事。

光として見えるだけで、そこから正しい感情を読み解くのは今のところ出来ない事。

基本的に光の色と属性は関連づけられていない。ただ時折、属性から連想出来る色で光っているものがいる事も説明した。


「けれど、カナメ様の周りにいた精霊は常に強く光っていて、高位精霊なのではないかとエルランドは考えているようです。ぼくにも時々強い光のままのものがいるそうで、それを元にしたと。ぼくの場合と比較することで正確性が上がるかは不明ですが、ぼくのそばにいて強い光のままのものはだいたい高位精霊で、彼らを暫く使役しなかったために彼らの力がありあまっていてそれが光の強さで現れているのではないか、とぼくたちは考えているのですが、証明する方法はありません。だから確実ではないのですが、その可能性はあるのではないかと考えています」

なるべく丁寧にと思ってか説明するノアを見てから、カナメとマチアスはエルランドへ視線を向ける。

彼はただ深く頷いた。それが肯定の意だろう。

「では、ノア殿は高位精霊と契約を?」

「契約……になっているんだと思います。ただぼくは高位精霊だけではなく中位や下位精霊など複数と契約と同じ状態であるのと、どういうわけか契約とほぼ同じ意味を持つ祝福をおくってくれた精霊以外もそばにいるらしい(・・・)ので、ぼくの光の数は参考になりませんが……それでもぼくの国の他の人たちを考えると光の数が契約している精霊の数であることだけは確実です」

自信のあるノアと、それを後押しし頷くアーロンを見てマチアスは

「そうか……、二体であることが本当であるとして、実はカナメがどの属性の精霊と契約しているのか、分からないんだ。だから高位だ下位だと言う以外の問題もあるんだが、それはなんとかできないだろうか」

マチアスの説明に困った顔で頷き同意しているカナメにアーロンは驚いた顔で「本当に?」と聞き、カナメは「はい」と素直に肯定した。

「普通は、『召喚して契約』するだろう?だからどの属性の精霊か分かっている状態での契約だ。分からないなんてことはない。しかしカナメは契約した方法が特殊だったからな、本当のところは分からないんだ」

「ハミギャには加護と祝福があるから判別する方法があるのだけれど……それはこの国の人には難しいかもしれない。他国の人だと正確性に欠けると言われているから」

マチアスの言葉を受け、アーロンが答える。

さてどうしようか、とカナメをそっちのけで話しているマチアスとアーロンを「もういいよ」と言いたげにして見ているカナメ、ノアはそんな三人を紅茶を飲みながら見つめカップを置いてこう言った。

「自分の精霊に、相手の契約している精霊との橋渡しをしてもらって、一時的に力を貸してもらった人もいると書いてあった文献を読んだことがあります。昔生死がかかる状況でそういった形で精霊魔法を使った人がいるんだという、そういう内容でした。で、橋渡しをしてもらうには『相手の精霊と同じ属性の精霊を使役できる事』という条件が最低条件としてあるようです」

「ノア……それじゃあなんの精霊か分からないと、難しいでしょ?俺の精霊は不明なんだよ?」

「幸いにもぼくは、全ての属性の精霊から祝福を得ているんだ。さっきも話したようにぼくは精霊と契約をしていないから、少し条件は違うのだけど、祝福をくれた精霊もみんなぼくに力を貸してくれるし、基本的にいつもそばにいてくれている……らしいから。だからきっと判断できると思う」

カップを持ってまたノアが紅茶を口に含んだ。


カナメもマイペースのほうだけれど、ノアはカナメよりものんびりしているところがあるのか、よりマイペースにみえる。

ノアについて、自分よりも強くさまざまな事に対し覚悟を決めて挑んでいるようだとカナメは勝手に想像しているところがあったけれど、こうした姿を見ているとそんな姿が全く見えてこない。

自分よりも普通でマイペースな青年にしか見えなかった。


「カナメ様?」

エルランドにお茶のおかわりを頼んでいたノアに呼びかけられ、カナメは

「別に俺、どっちでもいいんだけど……」

「なんだって知っていた方がいいに決まってるだろう」

「って、アル様が言うから」

真面目に頼む気のマチアスと諦めているカナメの発言に、ノアが嬉しそうにパッと顔を上げて

「じゃあ、やってみよう!」

突然ウキウキとしだし、頬を上気させる姿にカナメが少し引いた。

マイペースさをどこかに捨てたように、急に生き生きし出した姿に気圧されたとも言う。

この変化にはマチアスも顔に出ていないが少しだけ引いているようだ。

その二人にそっと言うのはアーロン。

「ノアは、魔法が大好きで、過去の事例や文献の正否を確認できる可能性があると分かると、とたんにこう生き生きするんだよね。本当に、ごめんね。こういうノアもとっても可愛いんだけど……ごめんね」

申し訳なさそうに言った。

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