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入学した第一王子マチアスとその側近カナメは、注目を浴びた。

しかし二人は、あからさまな視線も伺う様な視線も全て、まるで意に介する様子はない。一切だ。


入学前から徐々に露出が増えた二人だが、マチアスは幼い頃から『真面目で自分にも他人にも厳しい人物』という評価と『氷の様に冷たく人を寄せ付けない』との()もあって、学園生は遠巻きにしている節がある。

今までもこの学園に王族が入学してきた歴史はあったが、ここまで遠巻きにされた王族は一人もいない。

彼ら王族は王族の影響力というものを考え、いくら「学業において(・・・・・・)皆平等」とされる学園であっても、自分から進んで交流する事はあまり(・・・)なかったかもしれないが、それでも徐々に歴代の王族は学園生と交流をしたし、また学園生も少しずつ彼らと会話をする事もあった。

ここまで遠巻きされた王族は、もしかしたらマチアスで最初で最後になるのではないだろうか。それほどである。

これは全て、マチアスの性格や噂が非常に大きな要因となっていて、そのマチアスの噂やら何やらに合わせて、実際に見たマチアスの雰囲気に当てられたというそれも大きいだろう。


一方、カナメは露出が大きくなってからこちら、自分を守るために外では(・・・)言葉数は減り、時折アルカイックスマイルを浮かべる乏しい(・・・)表情の変化。

彼が母から受け継いだ色味もあって、大層クールな容姿が人を近寄らせにくくした。

しかしマチアスの様な噂があるわけでもないので、令嬢や令息からは密かに人気があり、マチアスの側近という肩書きも相まってマチアスよりもある意味様々な視線を送られている。

それも全てカナメは涼しい顔で時には笑顔でいなしていき、入学ふた月目あたりには「クールで知的な感じが本当素敵!」なんて言われる彼が出来上がっていた(・・・・・・・・)


王族という理由で寮生活をしないマチアス、そして特別に免除されたカナメ。

二人と交流するにも時間もなく、二人の雰囲気を壊してまで話しかける勇気もない。

まるで触れてはいけない高嶺の花の様な二人は、二人が望む望まないに関わらず学園生の視線を浴びた。

それは良いも悪いも含め、さまざまな意味で。



幼い頃から側近候補として第一王子と机と並べていたというカナメと、第一王子として王族である教育を受けたマチアス。

二人の関係はどの様に表現しても、頭には“幼馴染”とつく。

幼馴染と聞いて想像するのは──それが貴族であっても──笑顔を見せ合うとか、気の置けない会話をしているとか、そういうよくあるものであった。

だから二人が入学するとなって、誰もがそういう(・・・・)想像をしたのだ。


が、入ってきた二人はそれとはまた違って見えて、誰もが──大なり小なり──驚きを隠せなかった。


二人は幼馴染というには距離があり、側近というには少し近い。

なんとも微妙な距離感を保ち続けている。

これは幼い頃から二人についているという従者も同じで、その距離感に周りがかなり戸惑った。

媚びておこうと思った者でさえ、どうやって近づけば良いのかさっぱり分からずにいたほどだ。

どちらか──────王子には難しいと考えるだろうから、きっと多くの物がカナメに媚びて取り入り、そこからマチアスへと考えていただろう。

しかし、カナメにどう媚びるのか、そもそもどうやって近づくのか、まだ子供(・・・・)だから致し方ないのかもしれないけれどもとっかかりも見つけられない。

その上この距離感を見ていると、はたしてカナメに取り入ったところでマチアスまで辿り着けるのかと、子供ながらに(・・・・・・)首を傾げてしまうのだ。


これがもし30代や40代であればまだ、この距離感や雰囲気に負けじと取り入ろうとしたのかもしれない。

しかしまだ彼らは社交界に露出し始めた(・・・・・・・・・・)子供(・・)だ。

彼らとは違う、現実と戦う(・・・・・)マチアスとカナメの隙を見つけ、そこを突いて入り込もうなんて芸当はまだ早かったのである。

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