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人形は人によって作られる物です

「兄?」

「はい、お兄ちゃん、兄貴、ブラザー、呼び方はどれかは分かりませんが人間で言うと同じ親から産まれた男の肉親の事を言います。」

「あ、あぁ……ちょっと一つドール族の常識を教えて欲しいんだけどいいか?」

「?いいですよ。」

「ありがとう。君達って胎生なの?」

「胎生……哺乳類がお腹の中に身籠りそれを産む事を言うやつですよね、いいえワタシ達は違います。他の種族にはいますけど。」

「それじゃ卵生?」

「爬虫類や鳥類とも違いますね。」

「……ドール、人形だから手製?」

「そうですね、感じで書くならこの『手』と『生』で手生です。」

「はぁ〜〜」

恐らく二度と使えない知識が増えた。

どうやら現実の人形型のマスコットは誰かしらの手によって生まれているらしい。

確かにこちらの世界と道理や物が出来る工程が同じなら人形が子供を自力で生成出来るわけが無い。その機能を宿した中身が無いからだ。先程触った体の感触が蘇る。ほのかに温かいがそれ以外を感じない体、心臓の脈動を感じれない体。まさに人形だ。

喋りが滑らかな為忘れそうになるがこの子は人形なのだ。どこか自分とは違う。

「兄、ってことは同じ人に作ってもらった人形って事で合ってる?」

「はい、マイスターの処女作が兄、次作がワタシです。」

「そのマイスターの作品の数は?」

「現在、三作品目となる妹を作ってる最中です。」

「なるほど。」

「そろそろ本題に戻っても?」

「ああ、遮って悪かった。」

「兄はある日マスコット界に起こった事変に巻き込まれてしまったんです。」

「何が起こったんだ?」

「空から黒い宝石が降ってきたんです。」

「黒い宝石?」

「それは研究者達によって『悪意の宝石』と呼ばれています。」

「悪意……となると触ると悪意に飲み込まれるとか?」

「察していただけて幸いです。」

「お兄さんはそれに触れて暴走でもしたのか?」

「いえ、それ以上です。」

「それ以上?」

「飲み込まれて消えてしまったんです。」

「消えた!?」

そこまでなんというか魔法少女ものらしい展開だなーとぼんやり思っていた俺だったが消えたとなればラインを超えてしまう。大人向けでも人型のものが消えてしまえば多少は動揺する。子供向けなら尚の事だ。

「はい、スーッと体の端から消えていきました。」

「……他の触れたやつはどうなったんだ。」

「……ここからが更に問題でした。」

アリスはそこまで言うと近くにあった紙と鉛筆を手に取る。

カリカリとなにかを書き上げていく。

人型の絵とくまのぬいぐるみの絵だ。恐らく文字だと通じないと判断したからだろうか絵で説明することにしたらしい。そんなことを考える場合では無いと思いながら可愛らしい絵だなと思ってしまう。

書き上げたぬいぐるみの絵に丸をつける。

「コットン種やアニマル種は触った瞬間悪意に満ち大きな化け物となり暴走しました。」

「……?」

「ですがとある一種族だけ触った瞬間消えてしまう種族がいました。」

「ドール種……!」 

「はい、ドール種だけが消えてしまいました。」

動物の絵の周りに魔法陣だろうか、なにかを書いていく。

「幸い暴走したマスコット達はマスコットの女王様のお力によって元に戻る事に成功しました。」

どうやら魔法の力でどうにかした、と言うことを意味しているらしい。

次にクエスチョンマークが矢印と共に人型、ドール種へと書き足される。

「ですが残念ながらそのお力を持ってしても消えてしまったドール種は見つかりませんでした。」

「どこに行ったんだ……?」

「ナイトメア、ご存知ですか?」

「!?」

ナイトメア

その名はこの世界で知らぬものはいない。

ある日突然現れこの世界を我が物にしようとしている悪の組織だ。

ビーストと呼ばれる怪物を作る力を持っておりそいつには現代兵器のありとあらゆるものが通用しなかった。

あわやそのまま全てを奪われてしまうのかと思われたその時魔法少女が現れた。

初代魔法少女マジカルラブ、彼女のお陰で俺達は世界を取り戻す事に成功した。

それが約20年前の話だ。

「だけどナイトメアとドール種がどういう関係なんだ……?」

「……ビースト、それの素体に使われているのがドール種なんです。」

「!!!」

「ビーストは彼等の扱う悪意の力、この世界の物体、そしてそれをくっつける接着剤として悪意に溺れたドール種の3つを素材としているんです。」

「……魔法少女に倒されたそれはどうなるんだ……?」

「一度、マスコット界に送られてきます。そこで浄化されているのは元に戻りますが悪意に溺れた過ぎた個体は……」

「……」

「兄が素体にされた、送り返されてきたというのはまだ報告がありませんですので急いで探しに来ました。」

そこまで話してコップの水に口を付けた。口が疲れたのだろう。

「なぁそれって……」

「はい、ナイトメアをどうにかしなきゃいけません。」

「だよなぁ……」

「……先程の質問の代わりと言ってはなんですけどお願いがあるんです。」

「なんだ……?」

正直嫌な予感がする。

改めて彼女を見てみると彼女の目が俺を上から下まで眺めているのだ。まるで値踏みするかの様に。

「ワタシと一緒にナイトメアの本拠地を探してくれませんか?」

「……色々言いたいがまず何故俺?」

「この世界に来た時、ワタシは転移先を間違えてとてつもない勢いで落ちて来ていたはずです。それが無傷でこうしています。」

「それは運が良かったんじゃないか?」

「いいえ、あれは運が良いだけではどうにもならないはずです。それに、あなたは本来この世界の人々には無い筈の魔力に溢れています。」

「……分かってたのかよ。」

「はい。」

魔力の隠蔽を少し薄める。

その後もう一つ質問をぶつける。

「なんで一人で来てしまったんだ?」

「……みんな諦めろって言うんです。」

「20年だもんなぁ……」

「ビースト以上のものに改造されてる。帰ってこれないレベルに絞り尽くされてるって。だから飛び出して来たんです……」

「……」

アリスはどこか縋るような苦しそうな声で懇願する。

「戦わなくてもいいです。一緒に探してくれるだけでいいのでワタシに協力してくれませんか?」

表情の変わらない彼女を見る。

よく見ると肩が少し震えている。

一人でこちらに来て最初に会った俺に頼るしかないのだろう。

今は色々と準備をしている段階だ。余計な事をしている場合ではない。

だが冷静に考える。ナイトメアのビーストと言う戦力を削る事が出来るのではないか?

俺的にはナイトメアも倒す対象だ。ならアリスの兄を助けるのは将来的に有りなのでは?

「分かった。手伝うよ。」

「……!」

目が輝く。表情が変わらないながらも喜んでいるのが目で見て分かる。

「ありがとう……!」

歓喜に震えるアリスの目から涙がこぼれる。俺はそれを見ながら今後どうやって探すかを考えるのだった。

誤字脱字等、ご容赦ください。

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