魔法少女がいる世界だと空から女の子が降ってくる
今回は前回よりかなり長めです。
挨拶運動を終わらせた俺達は軽く挨拶を交わした後それぞれの教室へと向かった。
自分の教室に着いた俺は先月同じクラスになったばかりのクラスメイトと2度目の挨拶を交わし椅子に崩れ落ちる様に座り込んだ。俺の席はよく漫画やアニメの主人公が座っている場所、一番後ろの窓際の隣の席だ。その手のアニメ好きの友人に羨まれたため俺も一応魔法少女オタクとはいえオタクなので取り敢えずドヤっておいた。まあ、流石に隣は空席とかでは無いが。
それはされとして約2時間程立ちっぱなしだったため流石に堪えた。
別に運動不足のつもりは無いのだがあまり運動をしていそうに見えない会長は一切そんな様子を見せていなかったのでやはり運動不足なのだろう。この先に備えていくらか運動不足を解消しておいた方が良さそうだろう。ランニングでもするか?確か、マジカルドリームが万歩計メーカーとのコラボ商品を出していたはずだし買って使うか。
そんな感じに今後の予定を立てていると教室の入り口から騒がしい声が聞こえてきた。
「おはよー!!!!」
教室に入るなり大声であいさつをしたのは明るいブラウンの髪を小さなツインテールにした女の子だ。
会長が美人とするなら彼女は美少女だ。
穏やかでどこか不思議な月光の照らす夜が似合う会長に対し彼女はサンサンと全てを明るく照らす太陽輝く昼が似合う印象だ。
入り口の周辺に居たクラスの女子といくらかの談笑をしたあと自分の席に向かった。
「魔愛くんおはよ!」
「ああ、朝風おはよう。」
笑顔で隣の席である窓際の席に来た彼女は、
朝風ノゾミ。会長との話にも出てきた少女だ。
明るい美少女であり行き過ぎたオタクである俺みたいな人種とも明るく話してしまう為勘違いをさせてしまう事も多いらしい。去年風紀委員の見回りをする際に告白をされている確率が中々高かった印象だ。今はフリーというか彼氏いない歴=年齢らしい。こう見えて理想が高いのでは、と男子の中では噂だ。たまに聞こえてくる女子同士の会話からもあまり好みのタイプを言っているのを聞かないため、相当隠さなければいけないタイプの好みなのかそれとも属性ではなく個人を好きになるタイプなのだろうと俺は考えている。
「あ、魔愛くん昨日の『魔法少女ソラ』見た?」
実は彼女も中々の魔法少女好きのようで同好の士であり隣の席の俺に女子同士では話せない魔法少女関係の話をふってくるのだ。
別に困ってはいないむしろウェルカムだ。
それはそうと『魔法少女ソラ』とはなんだと思っている人もいるだろう。
簡単に纏めると魔法少女としての力を手に入れた一人の女の子のソラがその魔法少女の力で色々な人の悩みや困りごとを解決していくというお話だ。
深夜枠ではなく某N放送局でやっている番組で10年くらいの放送している。俺達ぐらいの年齢なら小中学生の頃、見ていたという人も少なくない。
なんならそこからオタクになった人もいるレベルだ。
細かい話を言うと俺は別の番組がスタートだ。前に聞いたことがあるのだが朝風はどちらかというと現実側の魔法少女が起点らしい。
ここら辺の世間(SNS上)のハマり方の割合の内訳は6∶4であり2次元の方が少し多いぐらいだ。
個人的にはどちらが多くてもよく、界隈にいる人が増えるのは大変嬉しいのでもっと増えてくれと思う。
閑話休題
昨日放送された『魔法少女ソラ』の話だ。
昨日の話は息子が家出してしまった大工の父親のお話だった。大工を継ぎたくないと家を飛び出して行った息子を探してくれとのお願いを聞いたソラが探し出した大工の息子との対話を通してどんな仕事にも大切な役割があるという事を学んでいくというお話だった。
魔力の操作を試みながら見たお話であるがあの程度の苦労では話の内容が溢れるようなミスは犯さない。なんなら制作陣の遊び心の塊である隠しスターも見つけれたぐらいだ。
「ああ、見た。今回も面白かった。」
「だよねぇー!」
それから俺達は先生が来るまで二人で感想を言い合ったのだった。
昼休み
俺は一人、学食の食堂で昼食を食べていた。
普段は冷凍食品と安い野菜を詰めた弁当を作っているのだが今日は忘れてしまったというか作る余裕が無かったため仕方無く学食のメニューを食べる事となったのだ。
食べているのはきつねうどんだ。学生の胃袋に合わせてなんの躊躇いもなくドンブリいっぱいに麺が入れられたものだ。正直俺は少食の気がある為、食べ切れるか心配なくらいだ。
「そういえば……」
ふと気付き辺りを見渡す。
あまり学食を使った事は無い為普段の様子は通りすがりにチラ見する程度しか知らないがそんな俺から見ても人が多い。
それを不思議に思っていると恐らくその原因であろう物を見つけた。
「カレー大盛りとからあげ5個半額……あれだな……」
うちの学食はたまにそんなレベルの安売りをするのだが今回はかなりやばいレベルだ。
売れ行き商品2つの同時半額となればそりゃ普段よりも人が増えるのは当たり前だろう。
今、俺の周りに人はいないが恐らく5分もしない内に人が来るだろう。早めにどいてやるべきだと判断した俺は目の前のうどんの処理を急ごうとした時声をかけられた。
「あ、魔愛くん!」
声のした方を振り向くと朝風と、
「朝ぶりですね魔愛風紀委員長。」
伊藤生徒会長がそこに居た。
「そこ、座ってもいい?」
「ああ、別に構わないぞ。」
「やったー!ニジカちゃん座ろー!」
「ええ。ありがとうございます。」
二人は俺の正面に座った。
朝風は可愛らしい包みに入った弁当箱を取り出した。そして伊藤生徒会長(以後伊藤会長とする)はというと……
「それ、買ったんですか」
「ええ、安くなっていましたから。」
そう微笑む彼女の前には半額になっていた大盛りカレーとからあげがあった。
「ニジカちゃんすっごい沢山食べるんだよー!」
「ふふ、よく人からは驚かれるんですけどね。」
「確かに雰囲気からはあまりそんな感じはしないですね……」
二人はいただきますと手を合わせそれぞれの食事に手を伸ばす。それから少ししたくらいでやはりというかそれはそうという状況になってきた。
周りからの視線が痛いのだ。
一人でも目を引く美少女が二人もいるのだ、しかも両方とも有名人だ。嫌になるほど目を引く。仕方無い事とうどんを食べる手を早める。
すると恐らく視線に気付いたのであろう朝風が口を開く。
「いつもより目線が多いね〜」
「んっそうですね。」
「いつもってことは普段からここを使っているのか?」
「うん!まあ、私はお弁当だけど。」
「私の満足する量を弁当で用意しようとすると重くなってしまうので。」
「なるほど。」
確かに目の前のカレーレベルの量を用意するとなると女子が持ち運ぶのは難しいだろう。
「そういえば魔愛くんはいつも弁当なのに珍しいね?」
「昨日買い物を忘れてな冷蔵庫が空だったんだ。」
「そうなんだ~。」
そんなふうに会話をしていると伊藤会長が水を一口飲みその後口を開いた。
「今日は男子だけでなく女子の視線も多いのが特徴的ですね。」
「そうそう、いつもなら男の子ばっかりなのにね〜」
「?会長達なら女子の視線も向けられるんじゃないんですか?」
「多少はあるにはありますがここまでは多くありませんよ。」
「なら原因は何なんでしょうか?」
「え、魔愛くんじゃないの?」
「なんで俺なんだ?いやまあ普段から二人で食べてるなら追加要素としては俺になるんだろうが。」
「だって魔愛くん女子から凄い人気だよ?」
「はぁ?」
なにを言い出したんだこの子は。
普段から魔法少女への愛を垂れ流している様な俺に人気などあるわけがないだろう。
財布やスマホのストラップには躊躇いなく魔法少女グッズを日替わりで付けているのだ俺が女子ならこんな男近付きたくもない。それに、
「以前の風紀委員長のこともあるだろ、俺が同じタイプじゃないかお前等に危害を加えないか注視さてるだけじゃないか?」
「いえ、むしろその手の方はあなたなら大丈夫だろうという方が多かったですよ。」
「ならより視線を向けられる謂れがないんだが。」
「だってシンプルに顔はいいし、成績もトップクラスでしょ?」
「顔がいいという自覚は無いが……成績はそうだな。」
「あとは助けられた〜ってあう女の子も多いし。」
「まあ、確かに仕事の都合上そういう機会が多いのは確かだが。」
風紀委員という仕事の都合上色んなことをすることは多い。その中になにかしらで困っている生徒を助けるという便利屋みたいな業務もある。その過程で女の子を助けることも多かったというだけだ。
「……まあ、人気が出るだけの事はしてる、のか?」
「うんうん」
「ふふ、頑張っている証拠というわけですね。」
「そ、そう、ですか……」
その後少し女子からの視線が気になりながら昼食を終えたのだった。
その途中伊藤会長からタメ口でいいとの話がありそれならということで今後はタメ口で話すことになった。
放課後
「魔愛くんは今日もお仕事?」
「いや、今日は当番ではないからなスーパーで一週間分の食材でも買って帰るさ。」
「そういえば冷蔵庫空っぽって言ってたもんね。」
「朝風は?」
「私はミライちゃんのところに遊びに行くよ!」
「ミライちゃん……ああ、あの子。」
「軽音部の部長なんだよ~」
「今年立ち上げた部だしな。」
「それじゃ行ってくるね!」
朝風は手を大きく振りながら教室を出て行った。
その後俺は一度自分の家に戻ったあと買い物をしてその帰り道だった。
俺は家から持って来た背中に背負ったリュックサックに入れた重みに少し引っ張られながら歩いていた。
少々暇なのでどういった目標を立て魔法少女と敵対するかを考えていた。
別に世界の支配をしたいわけではない、したところでやりたい事が思いつかない。
かと言って世界に滅んで貰っては困る。魔法少女を観ることが出来なくなる。
「うーん……どうしようかなぁ……」
思わず口からも漏れ出てしまう。これまであまり人生に苦しんだこともなく、悪い事もやった事も無いのだ。思いつくはずも無い。
「うーん……」
唸りながら歩いているとなにかが聞こえてきた。最初は近所の子供の声か鳥の声かと思ったがなにかが違う、悲鳴だ。間違いない。
周りを慌てて見渡す。リュックサックをおろし魔法も使い周辺を探す。声が近付いてくる。そしてようやく魔法の捜索範囲に入ったそれは想像していない方向に人がいた。
「まさか空!?」
叫びながら空を見上げると魔法で強化した視力にそれが映る。泣きながら落ちてくる女の子しかもそれは自分の真上だった。
「あの速度じゃ速度を殺す魔法は間に合わない……なら!」
足から地面に魔力を通し受け止める体制慌てて取る。その後3秒もしないうちに彼女は落ちてきた。それを俺は受け止める。無論相当の高さから落ちてきたのだろう彼女のエネルギーを止めることなんて魔法で強化していようが簡単に出来るわけが無い、俺は彼女ごと地面に倒れ込む、そしてかなりの深さまでへこんだ地面によってトランポリンのように跳ね上げられる。
共に跳ね上げられた俺は彼女を抱え地面の魔法を解きながら風を操りゆっくりと落ちる。
そして地面に無事降り立つ事に成功したのだった。
抱えた彼女を見ると気絶していた。無理も無い悲鳴をあげれていただけ凄い。
その姿はファンタジー作品に出てくる魔法使いが来ているような全身をすっぽり包むローブに身を包んでいる為顔すらもチラリとしか見えない。だがその見えている部分だけでもかなりのレベルで整っていることが見て取れる。
「こんな古典アニメ映画のような展開があるんだな……」
少しし考えた後自分の部屋に連れ帰る事にした。
彼女が追われる身だった場合、少しでも時間を稼げた方が良いだろうという考えと流石に人が集まってきそうという予想を元にした判断だ。
俺はリュックサックを背負い直しお姫様抱っこで彼女を持ち自宅へと急ぎ足で戻るのだった。
前回から間があいてしまい申し訳ないです。
今後もこんな感じになると思いますのでご容赦下さい。