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17 両者、勝ち誇る

「ねえ、お二人とも。今度の週末、うちに遊びにきませんか?」

「グラセス伯爵家に?」

「ええ! もしよかったら、なのですが……。三人でお茶会などいかがでしょう」

「素敵ね! ぜひお邪魔させていただくわ。コレットはどう?」

「えっと……。お誘いは、とても嬉しいのですが……」


 うちでお茶会をしましょう、というクラリスの提案を、マリアベルは快諾。

 コレットは、嬉しい、と答えつつも恥ずかしそうに視線を泳がせている。


「その……。伯爵家にお呼ばれするとなると、マナーなど、自信がなく……」

「でしたら、うちで練習すればいいのですわ。他の参加者は私とベルお姉さまのみ。友人だけの空間で練習できると思うと、気楽でしょう?」

「……! たしかに、そうですね」


 伯爵家へのお呼ばれだからと、気を張る必要はない。

 これからのための、練習の場だと思っていい。

 そう取れる言葉に、コレットも友人同士のお茶会への参加を決めた。


 これまで、領地の守りで忙しく、「友人」と呼べる人もほとんどいなければ、こうしてお呼ばれすることなどもなかったマリアベルは、この時を心から楽しんでいた。


――やっぱり、王立学院に来てよかったわ!


 友人たちとのお茶会の約束をし、マリアベルはご機嫌だった。

 ただ、ちょっと気になることもあったりはして。

 マリアベルは、ちら、と傍らに座るアーロンを見やった。

 今は、恒例の中庭でのランチタイム。

 当然、アーロンもそばにいるのである。


「ねえ、クラリス。三人、じゃないとダメかしら」


 そう問うマリアベルの視線は、ちらちらとアーロンに向いている。

 アーロンも一緒にどうだろうかと、クラリスに確認しているのである。

 恋愛感情か、と聞かれるとなんともいえないところではあったが、マリアベルにとって、アーロンは大切な人だ。

 鮮血のマリアベル、なんて呼んで令息たちが逃げ出していく中、アーロンだけはそばにいてくれた。

 王立学院入学後も、ずっと自分のことを気にかけてくれている。

 アーロンがマリアベルに向けるものとは、気持ちの種類は違うかもしれない。

 けれど確かに、アーロンはマリアベルにとっての「特別」で。

 同性の友人ができたことはもちろん嬉しいが、アーロンもこの場にいるというのに、女子三人だけで遊びの予定を立てるのは、なんとなく気が引けた。


 クラリスも、マリアベルの表情や視線の動きから、彼女の言わんとすることは理解した。

 けれど、ここで「では四人で」とならないのがクラリス・グラセスだ。


「ベルお姉さま。今回は『女子会』でしてよ」

「……!」


 女子会。その甘い響きに、マリアベルは陥落した。

 領地血濡れマリアベル。女子会という響きに、憧れていたのである。


「じょし、かい……! 楽しみだわ!」


 マリアベルは、女子三人で、という方向に頭を切り替えた。




――ベル、僕のことも気にかけてくれるんだね!


 と、アーロンが思ったのも束の間。

 やはり女子のみで話が進み、クラリスにはふふん、と笑みを向けられた。


「……!」


 アーロンも、クラリスの挑発的な態度に気が付き、二人のあいだではばちばちと火花が散っている。

 もしもこれが、男子がマリアベルを誘う場面であれば、なにがなんでも邪魔したことだろう。

 しかし、クラリスは女子。

 それも、コレットも含めた「女子会」をしたいと話している。

 男子であるアーロンが、マリアベルから「女子会」の機会を奪うことは、できなかった。



 お弁当タイムにクラリスが混ざるようになってから、少しの時が経過していた。

 女子三人はすっかり仲良くなり、こうして休日の予定を立てるまでになっている。

 クラリスはアーロンにライバル心があるようだが、完全に無視されているわけでもない。

 もちろん、マリアベルとコレットは、一人混ざる男子と化したアーロンにも、普通に接してくれる。

 しかし、疎外感。休日の予定も「女子三人」前提で話が進んでおり、疎外感――!

 邪魔だどけと割って入れない分、男子よりも女子のほうが面倒かもしれない。

 そんな風に思いつつある、アーロンであった。

 

 だが、ここでめげる男ではない。

 入学当初と変わらず、登下校はマリアベルと二人きり。

 そろそろ寮暮らしに移行しようと思う、と彼女は話してはいるが、まだ自分と一緒にいてくれるだろう。

 なにやら魔力目当てと勘違いされてしまったが、プロポーズだって済んでいる。

 それになにより――。


――勝ち誇っていられるのも今のうちだ、クラリス・グラセス伯爵令嬢……!


 女子会であることを強調され、のけ者にされようと、アーロンはまだ負けていない。

 むしろこれから、マリアベルと自分の関係に、はっきりとした名前がつくはずだ。

 婚約者、という名が。

 そう、マリアベル・マニフィカに婚約を打診すると、アークライト家が正式に決定したのだ。

 そう日もかからず、この話はマニフィカ家にも届くだろう。

 だからアーロンは、クラリスに挑発されようと、男子だからとのけ者にされようと、まだ余裕がある。

 今度はアーロンが、己の勝ちを確信したかのように、ふっと笑みを浮かべた。


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