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16 クラリス・グラセスは気に入らない 4

 クラリスの話を聞き、アーロンは納得した。

 マニフィカ領でも、似たようなことが起きていたからだ。

 マニフィカ伯爵は、魔物から領民を守るために尽力した。

 私財を売り払い、借金までしたのだ。

 マニフィカ伯爵は、本気で民を守ろうとしていた。

 それは、協力を要請されたアークライト家のアーロンだって、よく知っている。


 しかし、もっと被害を小さくすることができたのではないか、もっと早くに収束させられたのではないか、という見方をするものも、少数ではあるが存在した。

 となると、その娘であるマリアベルに対しても、厳しい目を向ける者はいたのだ。

 だが、マニフィカ伯爵家を非難する者も、自分自身や家族をマリアベルに救われて、彼女のファンになっていったものだった。

 マニフィカ領には、今のクラリスのような、マリアベルのファンが多いのである。

 マリアベルの幼馴染であるアーロンからすれば、「よくあるやつ……」といったところだった。


 クラリスの変わりっぷりに驚きはしたし、「ベルに嫌がらせをしていたのに」という気持ちも、全く存在しないわけではないが……。

 嫌がらせを受けていた張本人であるマリアベルが、クラリスを拒絶する様子はないのだから、まあいいのだろう。


 事実、マリアベルはクラリスの過去と今の違いを、さほど気にしていなかった。

 領地での経験もあり、実績や実力によって相手の態度が変わることには、もう慣れっこなのである。

 助けたことで、相手に感謝される。好かれる。

 過去はどうあれ、助けられた事実と実力を認め、「ありがとう」と言ってくれるのなら、その思いまで拒絶する理由はない。

 自分の力で助けられるなら、誰だって助ける。それで感謝してもらえるのなら、素直に嬉しい。

 マリアベルは、そういう人だった。




 一通り話し終えると、クラリスはマリアベルとコレットのほうへ戻っていく。

 笑い合う三人を見て、アーロンは小さくため息をついた。


――ベルが受け入れてるなら、まあいいか。


 大切な人を傷つけられたのだ。アーロンからすれば、まあ、ちょっとは思うところがある。

 けれどマリアベル本人が気にしていないし、彼女の魅力を知ってもらえたことは嬉しいし、友人が増えてよかったとも感じる。

 マリアベルの見た目だけに惹かれて群がる男たちよりも、クラリスのほうがマリアベルのよさを理解しているとも思える。

 アーロンにしてみれば、容姿しか見ていない男どもより、マリアベルの実力や人柄に惚れ込んだクラリスのほうが、「わかっている」存在であった。


 この感じなら、これから仲のいい女子も増えていくだろう。

 友人が欲しい、とマリアベルが意気込んでいたことを知るアーロンは、彼女を見守る姿勢になっていた。


――よかったね、ベル。


 そんな気持ちでマリアベルを眺めていると、「ベルお姉さま!」とクラリスがマリアベルに抱き着いた。

 その後も、クラリスはマリアベルに対して妙に近いし、なんだか頬が上気しているように見える。

 まるで、恋する乙女のような――。

 

 

――女子同士の可愛らしいスキンシップ、女子同士の気軽なスキンシップだよね!?


 クラリスの態度がなんとなく引っかかってしまい、アーロンはそう己に言い聞かせる。

 しかし、クラリスは。


「ベルお姉さまの髪、とってもきれいだわ」


 と、マリアベルの銀の髪に触れ、器用にアレンジをしつつ、ちらりとアーロンを見やった。


「……!」


 アーロンを見るクラリスの表情は「羨ましいでしょ?」「私は堂々と触れるのよ」と言わんばかりに、勝ち誇っていた。

 婚約者ですらないあなたでは、こんなことできませんよね。そんな気持ちが伝わってくるような笑みである。


 マリアベルに惚れ込んだクラリス・グラセス伯爵令嬢のライバルは、同じくマリアベルに惚れるアーロンに変更された。

 クラリス・グラセスは、幼馴染だからという理由で、マリアベルの隣をキープし続けるアーロン・アークライトのことが、気に入らない。


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