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14 クラリス・グラセスは気に入らない 3

 マリアベルは、入学直後からずっと、クラリス・グラセス伯爵令嬢からの嫌がらせを受けていた。

 自身が少々特殊なのは理解していたから、王立学院に入ればこうなるだろうと思っていたし、クラリスはさほどしつこくもないしで、あまり気にしていなかったのであるが……。

 魔研でできた友人・コレットまで標的になるとなれば、話は違った。

 もしもクラリスをはじめとする他の女子が、コレットを巻き込むようなら、なんらかの「対応」をしなければならない。

 そう、考えていた。

 しかし、どうやらそんな必要はなかったようで。


 お昼休みにクラリスがコレットを標的にしたところを、アーロンが仲裁に入ってくれたあの日から、クラリスがつっかかってくることはなくなった。

 以降、アーロンはお弁当まで持参して、マリアベル、コレットと昼食をともにしている。

 流石のマリアベルでも、彼は自分たちを守ろうとしているのだと、気が付いていた。


「アーロン様。私とコレットを気にかけてくださって、ありがとうございます」


 いつも通りの帰り道、馬車の中で感謝の気持ちを伝えてみれば。

 想い人の微笑みと感謝の言葉が直撃したアーロンからは、あまりの嬉しさに「くっ……」と声がもれた。

 ときめきで苦しくて、胸まで押さえている。


「アーロン様?」


 マリアベルが、その青い瞳を心配げに揺らしてアーロンを覗き込む。

 ただでさえ、馬車の中で隣に座っているというのに。さらに彼女に近づかれたアーロンはといえば、気の利いたことも言えずに硬直してしまっていた。

 マリアベルの手の甲にキスなどする彼であるが、マリアベルからそういったことをされることはないため、相手からの接近には弱いのであった。

 マリアベルもアーロンの反応を不思議には思ったが、彼はたまにこういうことがある。

 それ以上の追求はせず、話題も移り変わり。二人は、いつも通り仲睦まじく下校した。

 



 魔法研究会という居場所も得て、コレットという友人もでき。

 魔研会長のミゲルは、相変わらずの魔法オタクで、怒涛の質問攻撃などもしてくるが、魔法好きなだけあってとても友好的。

 幼馴染のアーロンは、昔と変わらずよくしてくれる。

 アーロンが近くにいてくれるおかげか、嫌がらせも減って。

 マリアベルの学園生活は、充実していた。




 一方、マリアベルをいじめていたその人、クラリス・グラセスは、灰色の学園生活に突入していた。

 ずっと好きだった王子様のような人は、毎日毎日、他の女――マリアベルの送迎をして。

 お昼休みも、弁当を持参までしてマリアベルのそばにいる。

 アーロンは、マリアベルには愛しくてたまらない、といった笑みを向ける。なのにクラリスには、作り物の笑顔すら向けてくれない。

 婚約こそまだだが、クラリスが二人に割って入ることは、もう叶わないだろう。

 自身の恋の終わりと、二人の仲のよさを突き付けられる毎日は、あまりにも苦しかった。

 クラリスは、伯爵家の娘で、威勢もいいほうだったから、入学当初は取り巻きのような女子もいた。

 しかし、俯きがちになり、勢いがなくなってからは、人が離れていき。

 今度は、クラリスが独りぼっちになってしまった。


 昼休みの途中、クラリスは、学院二階の廊下から中庭を見下ろす。

 そこには、仲良さげに笑い合いながら食事をとる、マリアベルたちの姿があった。


「っ……」


 魔法研究会の者や、アーロンの友人だろうか。時折、彼らに声をかけていく者もおり、とても楽しそうだ。

 下に見ていたマリアベルが、自分とは正反対の学園生活を送っているように思えて、つらくて、惨めで。

 クラリスは、きゅっと唇を噛みながらも、その場をあとにした。


 

 そんな状態になって、しばらくの時が経ったころ。

 クラリスは、アーロンに代わる新たな「王子様」を見つけることとなる。

 誰って――憎き恋敵だったはずの人、マリアベル・マニフィカである。


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