表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/39

13 クラリス・グラセスは気に入らない 2

 始業前。授業のあいま。昼休み。

 そういった時間――アーロンがそばにいないタイミングだ――を狙って、クラリスはマリアベルへの嫌がらせを続けた。

 あるとき、マリアベルとコレットから、お菓子でも入っているのであろう小袋を奪い取った場面をアーロンに見られてしまったときは、肝が冷えた。

 以降、彼がマリアベルたちと一緒にお弁当を食べるようになったのは、おそらく、自分のようにマリアベルに突っかかる人間を追い払うためだろう。

 それまで、アーロンはマリアベルとは別に昼食をとっていたはずなのに。

 クラリスのやったことが原因で、アーロンはさらにマリアベルにべったりになってしまったのだ。



 魔法の腕ではとても敵わないし、言葉で攻撃しても、さらにアーロンとマリアベルの距離を縮めるだけ。

 マリアベルを傷つけようとする場面を見られた今、正攻法でアーロンの気持ちを得られるとも思えない。

 アーロンから見れば、クラリスはきっと、大切な人を傷つける悪い女だ。

 その証拠に――


「あ……」


 移動教室の途中、クラリスは、前方からアーロンが歩いてきていることに気が付いた。


「あ、アーロン様、あの……」


 すれ違いざまに声をかけてはみたが、彼がクラリスに言葉を返すことはなく。

 一瞬だけクラリスに視線をやると、すたすたとその場から立ち去ってしまった。

 学院入学前だったら、顔を合わせた際、「やあ、グラセス伯爵は元気かい?」ぐらいのことは言ってもらえた。

 それが今では、その程度の会話すらしてもらえない。作り物の笑顔すら、向けてはもらえない。

 アーロンは、彼の大切な人を傷つけようとしたクラリスを、嫌っている。

 幼いころから憧れ続けてきた、理想の王子様のような彼への恋は、もう実を結ぶことはない。


 考えてみれば、当たり前だ。

 クラリスだって、誰かがアーロンを傷つける場面を見たりしたら、その人のことを嫌いになる。

 アーロン様になんてことを、とんでもない人間だ、話したくもない。そんなふうに思うだろう。

 彼が大事にする人……マリアベルに手を出せば、アーロンに嫌われるのは当然のことだったのだ。

 あの優しく穏やかなアーロンに無視されるようになって、ようやくその事実に気が付いた。


 けれど、もう遅い。

 時は巻き戻らないし、自分の過ちも、なかったことになんてならない。

 クラリスは、自分自身の手で、アーロンに選ばれる可能性を完全に叩き潰してしまったのだ。

 クラリスの行いについて、マリアベルやアーロン、コレットが吹聴するようなことはなかった。

 だが、幼いころから好きだった人に嫌われ、恋が成就する可能性も失ったクラリスは、すっかり意気消沈してしまって。

 入学直後のように、マリアベルに絡むような元気は、なくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ