表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/39

11 コレット・コルケットはわからない 2

 この二人は、一体どんな関係なのだろう。

 コレットの疑問は、日に日に深まっていく。

 アーロンがマリアベルに懸想しているのはよくわかる。

 けれど、マリアベルはどうなのか。

 彼のことを嫌っているとは思えない。では、好きなのだろうか。そんな感じにも見えない。

 幼馴染だという話だから、もしやこの年にして熟年夫婦のようなものなのだろうか?

 デレデレの夫と、もう慣れっこだからいちいち反応しない妻。

 うん、それならわからなくもない。

 婚約者ではないと聞いているが、幼馴染という話だし、婚約内定みたいなものなのかもしれない。


 うんうんなるほど。それなら合点がいく……いくかなあ!?


 毎日毎日、アーロンの「ベル大好き」とそれをスルーするマリアベルを見せつけられるコレット。

 もはや、ただ見守るだけではいられなくなった。


 ある日の放課後、魔研活動中。

 魔法特待生というだけあり、コレットもマリアベルも魔研では大人気。

 マリアベルに関しては、魔法の使い方が独特すぎてもはや本人がメンバーの研究対象になっているし、コレットも治癒や支援の魔法について様々なことを聞かれる。

 それでもなんとか二人で話せそうなタイミングを狙い、コレットはマリアベルに話しかけた。


「あの、マリアベル様」

「どうしたの、コレット」

「マリアベル様とアーロン様は、どういったご関係なんですか……?」

「えっと……アーロン様とは幼馴染で……」


 幼馴染の一言で済ませるには、アーロン様からの気持ちが大きすぎませんか、と思いながらも、コレットはマリアベルの話を聞き続ける。


「私がまだ5歳ぐらいだったころ、マニフィカ領で魔物が大量発生して……。そのとき、支援をしてくれたのがアークライト家だったの。一時的にアークライト家に預かってもらったこともあったから、アーロン様とはその頃からの付き合いになるわ」

「そんなころからの……。それで、その……実はアーロン様と婚約……なさってたりは……。内定状態とか……」

「? してないわよ」


 あっけからんと答えるマリアベル。コレットは、


 してないんだあ……!

 あれで本当に婚約してないんだあ……!


 とデレデレのアーロンを頭に描きながら、思った。


「ああ、でも……。結婚して欲しい、とは言われたわ」

「え!? そ、それって……」


 されてるじゃないですか、プロポーズ! やっぱりそういうことなんですね!

 

 マリアベルが平然としすぎていてわかりにくいだけで、二人はやはり婚約者のようなものだったのだ。

 コレットの中の疑問が、ようやく解決されたような気がした。

 しかし。


「ただ、私は突然変異のようなもので、マニフィカ家は魔力量の高い家系ではないから……。私と結婚しても、アーロン様のご期待には応えられないと思うから、受けるわけにもいかなくて」

「……えっと、それは、どういう……?」

「アーロン様は、武のアークライト家に魔力の高い妻を迎えて、魔法の力も高めたいのだと思うの」


 コレットは、平民の出だ。

 だから、貴族の婚姻のことはよくわからない。

 だが、マリアベルの見方もなんとなく理解はできる。

 武の名門に、魔法使いの血を取り入れ、武術と魔法の両面から家を強化していく。

 そのために魔法の名手であるマリアベルが、嫁として選ばれた。

 うん、わかるわかる。

 わかるし、その線も完全に間違いではないと思うが……アーロンのあの態度は、魔力量の高い妻が欲しいだけには見えない。

 

「近々正式に婚約の話をすると言っていたけれど……。まだ来ないし、やっぱり私では不十分とされたんじゃないかしら」


 やっぱりそうよね、そういう家系じゃないもの、とマリアベルは一人納得した様子で頷いている。

 マリアベルの中では、アークライト家は魔法の力を高めようとしている、そして自分ではそのために迎える妻として不適当であった、という話になっているようだ。

 ここまでマリアベルの考えを聞いてきた中で、コレットの中には1つの疑問が浮かんでいた。

 彼女はあくまで、自分は魔力の高い家系ではない、アーロンの期待には応えられない、と思っているだけ。

 結婚したくない、彼との子供なんて嫌だ、といった言葉は、1つも出てきていないのだ。


「あ、あのう……。1つお聞きしたいのですが、マリアベル様自身は、アーロン様とのご結婚や、その……子供を持つことを、嫌だとは、思っていないのですか?」

「ええ。貧乏伯爵家とはいえ、これでも貴族だもの。破談続きではあったけど……嫁いで子を持つ覚悟は、少しはしているつもりだわ」

「マリアベル様……」


 ちょっと寂しそうに微笑むマリアベルに、コレットの胸がつきりと痛んだ。

 同じ特待生で、お弁当仲間で。だから近しい存在のように感じてしまうが、マリアベルは貴族のご令嬢。

 やはり平民のコレットとは、婚姻に関する考え方や覚悟が違うのだ。

 マリアベルはきっと、家同士で話がまとまったのなら、よく知らない男の元にだって嫁ぐのだろう。

 この学院に入ってから、顔も知らない相手と結婚した貴族の話だって聞くようになった。

 きっとマリアベルにも、そうなる覚悟はあるのだ。

 だが、それはそれとして、コレットは「そういうことではなく……!」という気持ちにもなっていた。


 コレットが聞きたいのは、マリアベルという個人がアーロンとの結婚を受け入れられるのかどうかだったのだが、「貴族だから大丈夫!」と回答されてしまった。

 もう少し話を聞きたいところだったが、魔研のメンバーがマリアベルに声をかけたことで、話は中断された。

 魔法の実技を披露して欲しい、と連れ出されるマリアベルに、いってらっしゃい、とコレットは手を振って見送る。


 アーロンの気持ちは誰がどう見ても明らかなのに、肝心のマリアベルは魔法使いとしての自分目当てのプロポーズだと思っていて。

 けれど、名門公爵家の嫡男ともなれば、恋心だけで動くわけがないと思われるのも、仕方がない気がして。

 マリアベルが彼との結婚そのものを嫌がる様子がないのも、彼に気持ちがあるからなのか、貴族としての意識があるからなのか、いまいち読めなくて。

 コレット・コルケットは、貴族たちのことがやっぱりよくわからない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ