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9 とられてたまるか

 男に囲まれる想い人の姿を見たアーロンは、笑顔のままびしっと固まった。

 しかし、すぐに気を取り直す。

 女子同士なら少しは控える気持ちのあるアーロンだったが、相手が男となれば遠慮はしない。

 ずかずかと教室に入っていき、男たちに割り込み、「ベル!」と親しさを見せつけるかのように愛称呼びをかましてみせた。

 誰が見ても明らかなほどにマリアベルを溺愛する、公爵家の嫡男、アーロン・アークライト。

 そんな男がやってきて、「さあ行こう」とマリアベルに手を差し出して微笑みかけるものだから、他の男たちも流石に引いていく。


 なんとかマリアベルを連れ出すことに成功し、ともに廊下を歩くアーロンだったが、内心穏やかではない。


「……ベル。いつもああなのかい?」

「ああ、とは?」

「その……さっき、男子に囲まれていたよね?」

「そのことでしたら……そう、ですね。私の魔法や、魔研に興味のある方が多いようで。魔研に興味があるならミゲル様に、と伝えてはいるのですが……」


 アーロンは、思う。魔研じゃなくて、きみに興味があるんじゃないかなー!と。

 しかし彼女は、


「やはり王立学院の生徒ともなると、勉強熱心なのですねえ」


 なんて感心している。


「たまに、一緒に魔法の練習をすることもあるのですよ!」


 と、にこっと笑顔で言うものだから、アーロンは頭を抱えたくなった。

 どうも、既にマリアベルと昼休みデート済みの男がいたらしい。

 魔法の練習というのは口実で、妖精姫とご一緒したいだけだと思うのだが……。

 領地にこもり、血を浴び。令息たちに逃げられ続けていた過去のあるマリアベルに、自分が異性にモテている、という発想はないようだ。



 デビュタントを意識したパーティーも終わり、アークライト家からマニフィカ家へのメイドの派遣も終了した。

 しかし、たっぷり時間をかけて磨き上げた髪や肌は、今も美しく輝いている。

 美の追求より魔物狩りのマリアベルだったが、きれいになった自身の姿を見てからは、流石にちょっと身なりも気にするようになり。

 アーロンに贈られたケア用品を、メイドに教わったやり方で使い続けていたりもする。

 おかげで、マリアベルは妖精姫状態絶賛継続中だ。


 それでいて、婚約者もいないものだから、男子たちから熱烈なアピールを受けている。 

 アーロンの目には、今のところ、本人は異性からの好意には気が付いておらず、色恋にも興味がないように見える。

 だが、いつ、どんなタイミングでマリアベルが他の男と恋に落ちるかわからない。

 マリアベルの隣を歩き、にこやかに中庭に向かいながらも、アーロンは、


 ベルのこと、ぽっと出の男になんて、絶対渡したくないな……。

 そもそも、身なりを整えた途端に態度を変えすぎなんだよなあ。それで本当にベルのよさをわかっているつもりなのか?

 見た目だけにつられた奴に、ベルを取られてたまるか。

 

 なんてふうに、考えていた。

 アーロンは、まだ5歳ほどだったマリアベルのことも、鮮血のマリアベルと呼ばれて令息たちに逃げられていた彼女のことも、妖精姫が再来した今のことも、よく知っている。

 出会ったころからここまで、ずっと彼女のことが好きだった。

 アーロンからすれば、マリアベルの見た目につられて、突然態度を変えた男たちは、それなりに腹立たしい存在であった。

 彼女の本当のよさを――自分のことは二の次で、領地や領民のために頑張る姿を、認めてこなかった者たちなのだから。

 そのくせ今更近づいてきて、ちやほやして。マリアベルを評価するなら、もっと早くにしろというものだ。

 

 アーロンは、マリアベル、コレットとともに昼食をとり、昼休みが終わるころにはマリアベルを教室に送り届ける。

 驚異的な早歩きで2年生の教室に戻りながらも、昼休みの始めに見た光景のことを思い出していた。

 


 登校初日に感じた通り、マリアベルはやはり男子生徒に人気がある。

 今はよくても、時間が経てば、親しい男子も出てくるかもしれない。

 ただ仲がいいだけならまだいいが、「交際を始めました」「婚約しました」なんて彼女の口から聞かされた日には、失神する自信があった。


――正式に婚約の話をするまでなんて、待っていられるか……!


 長年思い続けた人が、つい最近現れた男に持っていかれる場面を想像し、アーロンはさらなるアプローチをかけていくことを決めた。


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