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其の75 目覚め

 わたしに意識はなくとも、頭の中にいる彼女達はわたしの周りの様子がわかるので、混乱するわたしにその時の状況を丁寧に教えてくれました。有難う存じます。ほんと便利ですよね。


(二人が発掘された時にはね、アタシはもう死んでたの)


 アリシアにとっては二度目の死になりますので、瓦礫に押し潰されながら意識がなくなるにつれ、これで死んだのだとわかったのらしいのですが、その時、アンナに声を掛けられて驚いたのだそうです。


(だっていきなりだよ?「ソッチなんぞに行かずにコッチへ来んか?」って。アタシ神さまにナンパされたの? コレ転生? ナニナニ? って驚いてたらいつの間にかココへ連れてこられて来られたってワケ)

(ア〜ン〜ナ〜)

(別に問題ないじゃろ。ココに来んと落ち着いて話しも出来んからの)


 ……まぁ、フワフワ浮いている状態では話どころではないですからね……。


(それでね、混乱するアリーちゃんにアタシとアンナさまとで説明している間に、ミリーちゃん達に被さっていた瓦礫が退けられたの。それから直ぐに、ここのお家に連れてこられたのよ)

(そう、それです。何故学園内の治療室ではなく、わざわざカーティス家に?)

(あー、それなんだけどね、アタシ達、なんか国から命狙われてるみたいよ?)

(は? クニ? 王国にですか?)

(マリー達とお養父さま達が話してるの聞いたんだけどね……)


 マリアンナとフランツィスカによると、わたし達が出掛けた途端、学園内に不穏な空気が漂い始めたので訝しがって調べたことによると、どうにもわたしとアリシアの命を取ろうと動いている者がいるらしく、辿ってみればずっと上の方まで繋がっていたそうです。詳しく調べている間にわたし達が戻って来て、その翌日には今回の件になってしまったということです。

 わたし達が瓦礫に押し潰されたのも、事故ではなく意図的に行われた線が濃厚とのことです。


(地震でもないのに、あんな頑丈な建物がいきなり崩れるのもヘンだしねー。あとほら、崩れる時になんかヘンな音聞こえなかった?)


 どうも人為的に崩されたのは間違いなさそうですね。


(それにほれ、お主達が道中に遭遇した魔獣や、襲ってきた者共もその一環らしいぞ)


 その時は特に気にしていませんでしたが、確かに今にして思えば偶然にしては出来過ぎています。

 実はマリアンナとフランツィスカが調べ始めた原因の一つに、その後ろめたい者達が王都を離れ始めたことを知ったのものあったそうです。


 ……彼女達は何処ぞの諜報機関にでも所属しているのですかね?

 

 今度会ったらその辺りを詳しく聞いてみたいものです。


 しかし確かにわたしの父もいっていましたが、あんな魔獣は郷里でも見たことがありませんし、襲って来た彼等も物取りの山賊だとしたら、あの場で相手を見極められず完全に引き際を見誤っていました。犯罪者として玄人失格です。


(でも、何故わたし達が?……)


 清廉潔白とはいわないまでも、人様にそうそう恨みを買う様なことはしてきていないつもりです。もしやわたしの知らない所でアリシアが……と訝しみましたが、流石にそれは穿ち過ぎでしょう。


(ならほら、アレじゃない? マリーちゃん達もそこまでは調べられなかったみたいだけど、例の残魔術具。あの結果がよっぽど都合が悪かったとかじゃないかしら)


 イザベラの言葉にアリシアが不思議がっていましたので、詳しくは側にいるラミ王国の生き字引に聞いて下さい。とアンナに説明を丸投げしました。


 アンナのいうことが事実であったとしたら、現在史実とされているものとにはかなり乖離がありますので、何を対象物に測定したかは知りませんが、それならば確かに現政権に於いて不都合な結果が表示されたことでしょう。

 しかしそんなこと位で、直接関係もしていないか弱い乙女二人を本気になって消そうだなんてことはしないと思いたいです。流石にそれは狭量過ぎるでしょう。一国を率いる者達としては泰然と構えていてくれていることを望みます。しかしもしもそうであるとしたら面倒なことですね。


 何れにせよ、あの倒壊が人為的なものでわたし達を狙ったものであるのならば、これは警戒はしなくてはならないことは確かです。


(それで、その時からどの位経っているのですか?)

(もう一月ほどよ。その間にも色々とあったわ〜)


 アリシアの葬儀はもう終えていたそうです。


(アタシの死に化粧、潰れてて大変だったみたい!)


 アンナの講義に飽きたアリシアが口を挟んできました。レイチェルとホルデか苦労して整形し整えてくれたそうです。そして自分の葬儀を見れなかったことを悔やんでいると。


 ……わたしに対して気を使い、虚勢を張ってを見せているのでしょうか……。


 その気丈さに少しホロリと来ましたが、二回も死んだのに、一度も見ていないなんてもったいない! といっていますから、恐らく本心からでしょうね。心配して損しました。


(こら、まだ半分も話し終わっておらんぞ)


 アリシアはアンナに連れて行かれましたので、イザベラに続きをお願いします。


(そうそう。ミリーちゃんの命があるのはね、何でしたっけ? あの呪いの眼鏡のお陰なのよ)


 ───状態保存の魔術が掛かった眼鏡です!


 そのお蔭で、首から上の損傷は少なかった様です。贈ってくれた父と、魔術を編み出してくれたオババに感謝します! それと頭部に切り傷が少なかったのはアリシアが腕を犠牲にして覆いかぶさってくれていた為らしいのです。


 ……有難う存じます……。


(でもね……)


 他の損傷は酷いらしく「ミリーちゃんが寝ている間に、既に一回手術をしたわ」と。


 幸い内臓も損傷は少なかったのですが、四肢の損傷が著しく、両の腕は単純骨折なので、既に切開手術を終えていて、骨が付いたら今中に入っている支えを取れば良いだけなのですが、右足の膝の関節部は複雑骨折な為重症なのだそうです。


(膝の骨がね、花瓶が壊れた様に粉々になったから、手術をしてそれを繋ぎ合わせて今は足に棒を立てて固定している最中なのたけどね、それもまた取り除く手術が必要なのだけど……それでもこの足、治ってもちゃんと動くかどうか……)


 膝の部分になりますので、骨自体は元に戻っても軟骨の部分はどうにもならない様です。最悪ちゃんと歩かことが出来なくなる恐れがあり、良くても走ることは出来なくなるのだそうです。


(詳細な説明、有難う存じます)


 重症なのは理解しましたが、命があっただけでも儲けものです。不便だなんて文句もいいません。しかしイザベラが随分と医療に明るかったのを聞きながら驚いていましたが、教の教団では治療院に良く駆り出されていたそうです。


 ……わたしはあまり怪我や病気に縁がありませんでしたから、知りませんでしたね。


 怪我の状態が良くないことがわかり暗い気持ちになりましたが、そんなわたしと打って変わって、まるで手を叩く音が聞こえてくるかの様に明るい声でイザベラが声を上げます。


(そうそう! 実は悪いことばかりでもないのよ!)


 アリシアがここに来たことで有用なことがわかったそうで、それを詳しく聞こうとした所、それどころではなくなってしまいました。


 身体中に激痛が走り、思わず叫び声を上げてしまいます。


 ───痛いッ! なんですかこれは‼︎


(あら? コッチで目が覚めたからソロソロかと思っていたけど、身体の方も目醒めたみたいね。麻酔が醒めたら暫くはそれどころじゃないと思うから、詳しくは落ち着いてからね〜)


 何がそれどころではないのかと気になりましたが、それは直ぐわかりました。


 ───む、無理です! 勘弁して下さい‼︎


 まるで無数の針に刺されているかの様な痛痒みが全身に走ります。しかもそれがじわじわと大きくなってくるのですが、もちろん拘束されている為、身体を動かして逃れることは出来ず、ただ漫然とそれを受け止めるしかないのです。


 ……こ、これは拷問ですか!

 

 治療であることは百も承知ですが、もはやそうとしか思えません。

 思わず悲鳴とも雄叫びとも区別がつかない声が漏れ出ると、それに気が付いて人が集まって来ました。

 眼鏡を掛けていないので輪郭だけでしか判別出来ませんが、わたしを喚ぶその声とこの状況でわかりました。


「……お養父さま……お養母さま……」

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