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其の55 リモ家にて

 昨晩はせがまれて弟妹達の寝台で一緒に寝ていましたが、日の出と共に一人起き出し台所へ行くと、父や兄達、アリシアが床で寝っ転がっていました。


 ……まったく、この人達は……。


「起きなさい! 朝ですよ!」

 

 お腹に力込めて一括します。

 慌てて起き上がる彼等を尻目に、家の魔石に魔力の補充をしに行きました。


 ……あら? わたしがいない間、随分と大変だったのですかね?


 大量に魔力が吸われていきます。

 

 ……これは単にサボっていたのか本当に大変だったのか……。


 家族達の顔を思い浮かべながらどんどん込めていき、半分以上わたしの魔力で染め終わる頃には「あーミリねぇの魔力だ!」「おはよー」弟妹達も起き出して来て朝から賑やかになりました。


 ……懐かしいですね……。


「さ、みなさん。顔を洗って朝食の準備を始めますよ」





 二日酔いで寝惚け眼のアリシアをお風呂に放り込むと台所に戻ったのですが、相変わらず我が家の食事の支度は大変です。


「メイ、ミンダ、ミスティ、食器を並べて! ベルト、ビックス卵取ってきな! ミリー、いるならここ変わって! バリー、ちょっと火を見ててね!」


 母の叫び声が響く中、台所はさながら戦場の有様。男女歳に関係なく共同作業です。もちろん父も。今は井戸に水を汲みに行っています。


 アリシアが風呂から上がった頃には台所も落ち着き、食卓にみんな着いていました。早速食事といきたいところですが、食べる前にしておかなければいけないことがあります。


「改めてウチの家族を紹介しますね」


 恥から順に紹介していきます。


「父のバラスに母のメアリです。こちらの小さいのは上から順に妹メイ、ミンダ、ミスティ、弟のベルト、ビックス。こちらは姉のミア、兄のバリーとベローですが……あら? ミーナとバルダーがいませんね?」


 いつの間にか結婚して家を出ているとのことです。


 ───聞いてませんよ! 羨ましい!


「それでこの方は、わたしが学園で同室の親友、アリシア・カーティスです。彼女には王都で色々とお世話になっています。暫くの間滞在しますが、みなさん迷惑を掛けてはいけませんよ!」


 周りを見渡しながら睨み付けます。

 その視線に素直に頷く者、目を逸らす者様々でしたが、アリシアは笑っています。


「ミリーって、実家でもおんなじなのね!」


 なぜ笑われたのかはよくわかりませんが、もう一つ。


「先程まで貴女はお客さまでしたが、今からは家族の一員です。ここにいる間は、我が家の決まりに沿って生活してもらいますからね」

「うん!」


 既に昨晩の内に殆どの家の者と打ち解けていた様で、「よろしく!」「いっしょにあそぼーねー」「また狩に行こう!」「自分の家と思って気兼ねなく」様々な声が上がってきて、それぞれに笑顔で返しています。

 暫くその様子を微笑ましく見ていましたが、切りの良いところで声を上げました。


「さ、みなさん頂きましょう」






「ミリーの家って、食事をするの闘いなのねー」


 ……お恥ずかしい……。


 家族が多いせいで、食事となると常に取り合いです。久々でしたから出遅れてしまい、隣にいた妹に「たべないの? これあげる!」「あ、有難う存じます……」みっともないところを見せてしまいました。


 食事を終えると、無線機の術具を取り出し設置の準備を始めます。


「そういえばミリーは、学園で何をやってるんだね?」


 父がわたし達の様子を物珍しそうに見ています。


「魔工学です。今は魔力による通信ですかね」

「ほぅ?」


 ここいらでは通話術具すらありません。

 みんな興味深げに群がって来ました。


「これから定期交信をしますが、邪魔しなければ着いて来ますか?」


 忙しそうな母に配慮し、弟妹達のお守りを勝手出るとアリシアと共に外へ出ました。


「さて、そろそろ時間ですね」


 幸い田舎ですから敷地だけは広く、何処で何をやっても邪魔になりません。適当な場所にアンテナを設置し、四ツの鐘がなる前に術具の電源を入れます。

 

「あ、それに触ってはいけません! ウロチョロしないで大人しくしてなさい!」


 遊び回る弟妹達を大人しくさせている内に、無線機から声がしました。


「シーキューシーキュー、こちら二号機、アラクです。聞こえますか? どうぞ」


 すぐさま術具に向かって語り掛けます。


「こちら一号機ミリセント。感度良好。こちらは現在リモ領内です。そちらは変わらずルトア王国内ですか? どうぞ」

「はい。今日も国内にいます。あーリモ領ですか、確か北の端の方ですよね? これだけ離れていても鮮明に聞こえるとは素晴らしい! どうぞ」

「そうですね。これからこちらの魔力層の……あっ! やめなさい!」

「ネーネー、コレだれとしゃべってるの?」

「ナニコレ? なんかの魔法?」

「あー知ってる、風魔法とおんなじだ!」


 弟妹達が押し寄せ、乗っ取られてしまいました。


「え? えぇ? ミリセント先生、どうされたのですか? ど、どうぞ!」

「ミリねぇがセンセーだってー、プププ……」

「なんでー? こんなにちっこいのにー?」

「お黙り!」


 慌てて抑え込んでいると、アリシアが代わりに無線機の前に立ってくれました。


「失礼、アリシアです。今、わたくしもミリセントの実家に来ていますの。先程のは彼女の弟妹達の乱入です。問題ありません。どうぞ」

「あぁ、アリシア先生! そういうことですか。お元気そうで何よりです。お忙しいご様子ですから今日はこれにて。どうぞ」

「了解しました。ではまた明日」


 アリシアが交信を終了して電源を落としました。


「フフフ、ミリーもこの子達にはかたなしね」

「勘弁して下さいよ……」


 これでは仕事になりません。

 

「お前達、そこに座りなさい!」


 ……まったく、暫く会わない内に増長していますね。これは再教育が必要です!


 そのまま庭先でコンコンと説教をしました。

 途中で見かねたアリシアが「この子達も反省していると思うから、そろそろ……」と口を挟んで来ましたので「貴女もです! 今朝の醜態は何ですか!」アリシアにも矛先を向け、結局昼の九ツの鐘がなり、母が迎えに来るまで説教を続けました。







 昼食を終えると、アリシアとこれまでの道程で測定した魔力層の高さと地図を照らし合わせて検証します。


「薄々気が付いてはいましたが、こう見ると露骨に違いますね……」

「ねー」


 王都からここまで真っ直ぐに来たといっても、道は直線ではありません。山や川などを迂回したりしますから曲がりくねっています。可能な限り測定をしながら進んでいましたので、地図上には点が無数に書かれていますが、改めて確認をした所、王都上空が一番高く、離れるに従って低くなっていっています。


「一昨日最後に測った時なんか、壊れたかと思って何度か測り直したしねー」


 その距離は二町四十五間。アリシアが「約300メートルかー。ちょっとしたビル並みね」などとよくわからないことをいって驚いていましたが、わたしもその結果には驚きました。


 更に驚かされたことがあります。


「あと、おもしろいのがコレよね。地面に沿って高さが違うだなんて」

「本当、興味深いですよね……」


 地図の等高線に照らし合わせると一目瞭然です。

 

「では、早速家の前でやってみましょうか」

「ちょっと待って、これまでの結果で計算してみるから……」


 アリシアの計算が終わり、庭先で実際に測定してみたところ「ほらやっぱり! 一町五十間……だからの約200メートルね!」見事当たりました。

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