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其の224 援軍到着

 例え一瞬でもブルノルフから目を離すのは躊躇われましたがそんなことをいわれましたら確認しない訳にはいきません。議場内の出入り口は一つだけ。開いている穴の方へと視線を移すと、完全武装をしたレイが剣を抜いて鬼の形相で駆けって来るのが見えました。


「陛下ーッ! ご無事ですかーッ!」


 そしてそのままわたしの横を通り過ぎ、ブルノルフ目掛けてわたしの魔力が込められた魔石を投げ付けつつ斬り付けます。


「こざかしいわ!」


 当然ながら彼女の攻撃は効いていません。難なく跳ね返されてしまいますが、それに続いてわたしの横を駆け抜けブルノルフに攻撃を仕掛ける者達の姿が。


 ───貴女達まで!


 メイを筆頭に、弟妹達五人に合わせてライナの姿までありました。彼女達も同じく完全武装しておりそのまま果敢に攻め始めます。


 しかしいかな猛攻でも残念ながらレイと同じく文字通り歯が立たないことには変わりなく、わたしの魔力が詰まった魔石も大して効果が無い様で目眩し程度にしかなっていません。ブルノルフが硬過ぎるのですからこれは仕方がないのですが、しかしそのお陰で彼をその場に足止め出来ていました。


 ……感謝します。


 この状況でしたらわたしにまで被害が及ぶことはなさそうです。みっともなく逃げ出さずに済み、ほっと胸を撫で下ろして暫く情勢を見守ることにしました。


 ……ふむふむ……こうやって改めてじっくり見てみますと、みなさん中々練度が上がってきていますね……。


 時折り放たれる魔術による攻撃も上手く交わしています。


(はぁ〜、相変わらずみんなスゴイねー)

 

 アリシアに同意です。感心感心。日々精進している様で何よりです。しかしまだまだ粗が目立ちました。みんな思い思いに攻撃を仕掛けている為、互いが邪魔になり上手く動けない者の姿も見えました。


 特にレイやライナがそうです。弟妹達も二人三人までなら連携が取れていますが、それ以上になるとどうも覚束なくなっていました。レイは騎士団に所属をしていますが、わたしの護衛ばかりしていますからその辺りが疎かになっているのでしょう。


 ……これは良くないですね……。


 彼は特殊な部類でしょうが、今後対峙する相手が自分達だけで対処出来る者ばかりとは限りません。時には集団で、更にはそれを率いて戦わなければならない状況も出て来るでしょう。


 ……これは丁度良い機会かも知れませんね……。


 この状況でしたらわたしが直接指導することが出来ます。それにヘマをして危なくなっても魔法で援護ることが出来ますし回避させも出来るでしょう。例え怪我を負ったとしても癒せます。問題はいくら攻撃をしても効果が薄いこと。これでは気力と体力が持ちません。


(オババさま、ご相談があるのですが……)

(さまはいらんというとろうが……。なんじゃ?)


 先ず必要なのはみんなの持つ得物の強化でしょう。妖精の少ない土地柄ではありませんが、魔法での攻撃も効いていません。彼の中にオババがいない今、最も有効な手段は状態保存の魔術を施した得物で地道に削っていくことになるのでしょうが、あれはどうしても使い手を選びます。


 ……わたしがやってしまっては、あの子達の訓練になりませんからね……。


(魔力の乏しい者もいるのですよ)


 ……レイとかライナとか……。


 そこで意図的に魔力を注いだ時にだけ、硬化させるとか状態保存の魔術を発動させる様なものが出来ないかとの相談です。


(ふむ。可能じゃな)


 流石だてに数百年以上存在していただけのことはないですね、どこぞのポンコツと比べてなんと頼りになることでしょう。少し考えただけで二つ返事で頼まれてくれました。


(それは助かります。有難う存じます。では早速……)


「レイ。こちらにいらして下さい」


 先ずはレイを風魔法で呼び付け、集団での戦闘の仕方について指示をしながら得物の強化を施します。


「良いですか? この様な敵と相対する場合は他の者と協力してことに及ぶ必要があります。その際は……」


 どの様に指示をし指示された者はどうやって動くのか等、弟妹達も含め全ての者に指導をして得物の強化を施しました。先ずはレイから、その後でメイと、順に他の者も呼び付け、試しに立場を変えながらやらしてみました。すると先程までとは打って変わってみんな動きが良くなります。


 ……これなら後は時間の問題ですね……。


 明らかに優勢になったのを見て満足すると、わたしは腰を下ろして戦況を眺められる場所を探すことにします。何せ今は杖を失っていますから、ただ立っているのも辛いのです。


 背後に戦闘の音を聞きながらゆっくりと破損していない椅子を物色していたのですが、突然メイが走り寄って来て抱き付かれたので驚きました。


「ど、どうされたのですか!?」


 何か問題が発生したのかと、慌てて彼女に問いかけるとその顔は泣きべそになっています。


「ミ、ミリねえ……ミアねえが……」


 彼女が泣きながら指を指すのでそちらに視線を移してみれば、そこにはブルノルフの前に立ち吠えるミアの姿が。


「コイツはあたしんだ! お前ら手を出すんじゃない!」


 そしてメイから奪ったと思われる剣を振るいながらレイ達を威嚇していました。

 

 いつの間にか目覚めたのか、相変わらず面倒な人です。レイやライナ、他の弟妹達もどうすれば良いのかわからずに困惑していました。


 ……まったくあの人は……。

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