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其の221 ブルノルフ

 民の上に立ち、国という大掛かりな組織を率いていかねばならぬ王族には、その立場上否応なく生じてしまう秘匿すべき事柄が幾つかはあるものだ。それは国が大きくなればなる程、時代を重ねていけばいく程に増えていくことは必然であり致し方ない。


 何せ他所から見れば非道とも取られる行動も、必要とあらば躊躇せずに行う必要があった。甘えた理想論を振り翳していては国を束ねることなぞ不可能である。それに合わせて時には周りを欺き誑かすことも必要になった。物事を円滑に回す為には不可欠なのだ。とある国に於いては、未だ建国以来の君主が長きに渡って君臨し、国政を担っているなどと荒唐無稽な話しがまことしやかに囁かれておるが、恐らくそれもその類なのであろう。


 当然ながら当家にもその例に漏れず秘匿されていることは多々あったが、中でも王族に連なる者であっても君主になった者でしか知り得ない特異なことがあった。


 余の名はブルノルフ・ユージーン・リプス・パンラ。パンラ王国の君主になる。


 この国は大陸の西側に位置し、冬場でも凍り付かない海を有しているが切り立った岸壁が多く盛んな漁業は行えない。また内陸部は山がちである故に農耕には適してはおらぬが、かといって高い山は少なく鉱山資源は乏しい。つまるところ弱小国であった。


 そんな我が国にもある時転機が訪れる。祖父の時代だ。


「我は天啓を受けたり」


 余は生前の祖父を知らぬが突然そう仰ったのだそうだ。その時期からこの国は変わっていったのだと聞く。


 今まで誰も成しえなかった魔獣の養殖を始めたことを皮切りに、隣国に攻め入り領土を広げるなどをして、今や諸国に対しての影響力は強まっている。最早強国だ。


 余には王族らしく兄弟は多くいたが、これまた王族らしく醜い権力争いがあり、その数は随分と減ってしまった。結局生き残った者の中で、先王である父が余を次代の君主に指名したことで決着が付いたのだったが、決めては「其方が一番魔力の量が多い」とのことだった。


 その時は父が何をいわんとするのかがよくわからなかったが、いざ父からこの立場を賜った時、その理由を肌身を持って感じ、理解出来た。


 ……こ、これか……。


 祖父の代から続いているとされる躍進の件についても同時に腑に落ちる。


 ……これならば……。


 余の代も安泰となろう。いや、それどころか大陸全土を手中にすることが可能になるやも知れぬ。


 ……感謝致します……。


「クックク……」


 当然それに対して敬い畏まる気持ちはあったのだったが、その時はこれからのことを思うと歓喜に震えてしまい思わず笑みが溢れるのを抑えきれなかった。

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