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其の214 魔石砕き

 ミアの狙いは、戸惑って動けない成り掛けではなく完全に正気を失い凶暴化した魔獣ですからそのまま放っておきます。是非ともそのまま頑張って数を減らしていって下さい。魔獣化してしまうと魔力の奉納が出来ませんからね。心置きなくどうぞ。しかしまだ完全に成っていない者は違います。それは先程ベルナを見て確認済み。多少姿形が変わろうとも魔力の奉納が出来ていました。ならば大事。


「良いですか? 致命傷は避けて下さい。例え怪我は治せても死人を生き返らせることは出来ません」

「はい!」







 勢い臨むレイでしたが、初めの内は苦労していました。それは致し方ありません。確かレイはまだ人を殺めたことが無いはずです。


 多少形が変わろうとも人が相手なのです。普通の者であれば無抵抗の者を躊躇なく刺せるものではありません。最初の内は戸惑いためらうのが当然。何人も殺めていく内に感覚が麻痺して何も感じなくなるものですから。行き過ぎると誰かさんの様になってしまいますから注意して下さいね。


 それに魔石は名称に「石」が付いている様に硬い物になります。それが柔らかい身体の中にあるのですから、それだけを的確に砕くのは難しい作業。


「力を込めて一気にやりませんと砕け切りません。もたもたして何度も刺していましますと、彼等の負担も大きくなります。慎重かつ的確に狙って下さい」

「はっ、はい!」


 また、中には魔獣化するにあたって胴体が変形してしまい、魔石の場所が分かりづらい者もいたりと苦労しています。それでも三体、四体と数をこなして行く内に慣れて来た様で、わたしの治療も最小限で済む様になって来ました。


 ……この分なら、レイはもう問題なさそうですね。それにしてもレニー達は遅いですね……。


 治療を施すわたしの魔力には問題ありませんが、流石にレイ一人ではここにいる魔獣化する途中の者の全ての魔石を砕き切るのは難しいでしょう。残りはまだまだ沢山います。しかしそれとは逆に、完全に魔獣化したモノの方がそろそろミアにより駆逐されてしまいそうになっていました。これでは暫くすると物足りなくなったミアが他の獲物を求めて魔獣化する前の者を襲いかねないと心配になります。


 そんなことを考えていましたら、突然議場の扉が勢いよく開き、ベルナが飛び込んで来ました。


 ───やっと来ましたか!


 そんな悩みも人手さえあれば関係ありません。そう時間を掛けずに魔獣化する前の者達を対処出来るでしょう。それにミアの暴走も止めることも出来ます。


 ……流石に仲間は攻撃しないですよね? 信じてますよ?


 しかし安堵したのも束の間のこと。


「へ、陛下ー!」


 ベルナが悲痛な叫び声と共に泣き腫らしながら駆け寄って来たのです。


「どうされました?」

「そ、それが……」


 彼女はわたしの問い掛けに対し、今やって来た扉に振り返ることで返答としました。


 ───ッ!


 見るとその扉には無数の魔獣か押し合いへし合い、入口で詰まっているのです。


「こ、この建物の中は魔獣だらけです! レニー様の元に辿り着けませんでした!」

「何ですって!」


 最早他の者に聞かれても構いません。慌ててレニーの元へ風の魔法で連絡をするのでしたが、帰って来た返答は、現在向こうでも魔獣との戦闘中で手が離せないとの簡単なものでした。その焦る声からして只事ではないのが伝わって来ます。


 ……こ、これは……。


(あちゃー)

(アリシア?)

(あー、ゴメン、やり過ぎちゃったみたい)

(えっ!?)


 どうも例の恐怖心を植え付ける為の魔法、この議場内に収まらず外にまで影響を及ぼしてしまっている様です。


(ど、どの位の範囲ですか!)


 確かにわたしは頼みました。満遍なく全ての者に届く様にと。


(ん〜、おそらく半径二、三百メートル位? だから……二、三町程かな?)


 それならばこの建物がすっぽり収まり、その外周にまで影響してしまうことでしょう。


 ───やってしまいました!


(……な、なら……)

(うん。ここいら一体、魔獣かその成り掛けばっかりだね)


 ───なんてこと!


 最早ここに及んでは呑気に成り掛けの者の魔石砕きをしている場合ではありません。


「レイ! その作業は一旦中止です! 即座に魔獣討伐に変更!」

「ハ、ハッ!」


 事情を察したレイが慌ててわたしの前に出ると同時に、魔獣達が建物を壊しながら議場内へと雪崩れ込みました。


「ハハッ! お代わりとは気が利いてるな!」


 この惨状に喜んでいるのはミアだけです。わたしも慌ててアリシア達に指示をしました。


 ───もう本当に勘弁して下さいよ!

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