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其の205 パンラ王国に向けての車内

 ……しかし、これでは一体何をしに行くのかわかりません……。


 パンラ王国に向けての道中、わたしが乗る馬車の中には弟妹達もいるのですが、みんな行楽気分。騒がしいったらありゃしません。結局根負けしてライナも連れて来ていますので、これではさながら家族旅行。


 ……まぁ、目が届く所にいた方が安心ではありますが……。


 更にはオルまで連れて行きたいといい出す始末。しかし流石に甘やかし過ぎてはいけません。キッチリといい聞かせました。


「馬車の中には入れませんよ!」


 ……しかしこの駄犬、いつの間にか大きくなってやしませんか? 


 最早犬と呼んでも良いのやら。もう馬車に乗せるまでもなく乗りません。魔石の与え過ぎでしょうか。気を付けなければいけませんね。


「おかーさん、ませきなくなっちゃった。もっとちょうだい!」

「……程々になさいね……」


 わたしから受け取った魔石を弟妹達が馬車の中から並走して歩くオルに与えています。二つの頭に向けて魔石を放ると、それを器用に口に咥えて嬉しそうに食べていました。その様子を周りの者達は微笑ましそうに見ているのですが、わたしはとてもそんな気分にはなれません。


 入国するまで余計な騒動を起こさない様、人の少ない道を選び密かに移動しています。しかし一旦パンラ王国内に入ればラミ王国女王として堂々と正体を隠すことなく首都へ向かう予定。これは国王に対しての挑発行為。まさか自国内で魔獣を仕掛けては来ないでしょう。しかしこんなのを連れていては街中で市井の者達を脅かしてしまわないか心配です。逆に魔獣をけしかけに来たのかと思われやしないでしょうか? 


 そんな不安を溢した所、すぐにベルナが拾い「大丈夫です!」と笑い飛ばされました。パンラ王国の民は魔獣に慣れているからこれ位なんでもないのだと。


 ……そんなものなのですかね?


 食事もそうですが、お国柄で嗜好が異なるのは知っています。今までにも散々目の当たりにして来てその都度文化的な衝撃を受け驚いていました。今の彼女の言葉もありますし、パンラ王国でもそれなりに衝撃を受けることでしょう。ある程度の覚悟はしていますが不安で堪りません。何せ閉鎖的で情報が少ない国です。


 ……本当でしたら、行きたくないのですけれどもね……。


 わたしの目的はわたしの中に居るアンナという厄介者を追い出す為に、この大陸に住まう者を全てをラミ王国民にすること。それに尽きます。その為、必ずしもわたしが君主である必要はないのです。この地位には何の未練もありません。ただその方がことを早く成せるからという理由の為だけです。何せこの呪いは時間的な制約がありますから。


 ……早くしないと適齢期を過ぎてしまいます……。


 それがあるから、直接乗り込むという手段を取るしかありませんでした。


 パンラ王国は一党独裁というよりも一族独裁。アンナの記憶にある名の王族が今も治めています。しかし多くの人が集う国を回すには、幾ら一族を増やしたところでそれだけで済む程には容易ではありません。色々な者が知恵や力を出し合い創り上げていくのです。かの国も例外でありませんでした。現在では王族からなる一族以外からも人が出て来て議会が回っています。そこでは長い年月を経て王族に対しての不満が募り、反政府の勢力も着実に育っていました。何せ現在かの国の政策は失墜しており、民の生活は困窮しているのが現状になります。


 そこで、今や大陸の殆どを手中に収めたラミ王国が反政府勢力に与し援助することで、パンラ王国を内側から崩していく方法がもっとも確実だったのですが、それでは時間が掛かり過ぎます。そんな悠長なことはしていては、一体わたしが幾つになってしまうのか。それにその間に民が疲弊して減ってしまうのも困る所。


 他にも昔からよくある手っ取り早い手段としては、パンラ王国の王族とわたしが婚姻を結ぶことで統一する手もありましたが、それをすると女であるわたしが立場的に不利になり、逆に乗っ取られる可能性も出てきます。最もそれ以前に嫌です。


 ……やはり伴侶は自分で選びたいですからね……。


 貴族らしくないといわれようとも、その為に頑張っているのですから。


 かといって、流石にアンナのいた時代の様に君主同士が国を賭けて一騎討ちする等といった野蛮なことも選択しません。それが通用するのはルトア国位なものでしょう。例え成せたとしても後が面倒。民が素直に納得しません。それでは意味が無いのです。その為、ここはあくまでも穏やかに併合したいと考えていました。


 ……大事な魔力の供給源。無駄な血は流さないに越したことがありませんよね。


 既にラミ王国に降った各国を参考にすれば、民は自分達の生活が保証されるのであれば君主が誰であろうともそこまで拘らない筈です。寧ろ君主が変わることで今の生活が豊になるのであれば歓迎してくれることでしょう。もちろんおためごかしが甚だしいのは百も承知。ですがその為には粉骨砕身頑張る所存です!


 ……だからみなさん、魔力を少しづつ分けて下さいね。


 その為にパンラ王国の君主をその座から引き摺り落としに向っているのです。


 ……ですがみなさん、これから何しに行くのかわかっていますか?


 警備についている者達は別としても、車内の者達を見渡すと、とてもそんな雰囲気ではありません。わたしも気が抜けそうです。かといって、ミアの様になってもらっても困りますけれどもね。


 ……貴女は無駄に昂ぶり過ぎですよ。少し落ち着いて下さいな。

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