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其の201 一仕事終えて

 ……マダリンにも可愛らしい所があるのですね……。


 暫くの間、押し殺す様に泣く彼女の様子を伺っていると、緊張が解れたせいかどっと疲れが押し寄せて来ました。


 ……そろそろ限界です。

 

 頭がボーッとして来ました。


 彼女もようやく泣き止み、一応は納得もしてくた様ですのでわたしは休むべく部屋を出ようとしたのですが、残念ながら解放はしてくれませんでした。


「……取り乱した所をお見せしてしまい失礼致しました。ではこちらを……」


 両国締結に伴い、至急処理しなければならないという書類の束が目の前に積まれます。


 ……これ、随分と多くありませんか?


 既に他国でも同じことをしています。その場でやらなければいけないことがあるのは承知していますが、いずれもこんなに多くはありませんでした。今回、二カ国同時にとはいえ多過ぎる様に思います。しかし、二つある国を一つに纏めたり日付を改竄したことで、やらなければならないことが多いのだとか。


「陛下もお疲れのことかとは存じますが、これは君主である貴女さまにしか出来ないことです。これを処理するまでは部屋から一歩も出ないで下さいませ。時間が経てばその分国民が困ることになりますからね」


 そこには先程までのしおらしい彼女の姿はなく、いつも通りの厳しい彼女がいました。


 ───鬼ーッ!






 人は時として限界を超えてでもやらなければいけない時があります。今がその時なのでしょう。


 ……最近、そんなことばかりやっている気もしますがね……。


 君主などといって持ち上げられても所詮は臣民の奴隷みたいなものです。わたしより忙しくしている者なぞ、この大陸中探しても一体どれ程いるのやら……良いことなんてこれっぽっちもありません。早く辞めたいです……。


 しかし嘆いていても目の前の書類は片付きません。気合いを入れて書類の山に挑もうとしたのですが……頭がうまく働きません。


 ……やはり、無理なものは無理ですよね……。

 

 自分で出来ない時は素直に人に頼みましょう。


 もちろん目の前でわたしと同じく書類と格闘しているマダリンでも、立ったまま寝ているレイでもありません。頭の中の三人です。アリシアに身体を託すと、アンナとイザベラに書類の作業を頼みました。


 ……本末転倒ですが、本当こういった時には便利ですよね。後は頼みました……。

 






 目が醒めたのは翌日の昼近くでした。昨日は夜遅くまでわたしの身体は作業していた様です。わたしの起床に気が付きマダリンが近寄って来ると心配そうにしていました。


「……陛下、おはよう御座います……お加減は如何でしょうか?」

「おはよう、マダリン。快調ですよ」


 ……やはり人は寝ないと駄目ですね。


 頭はスッキリ、意識もハッキリしています。よく休めたお陰でしょう。


「……良かった……いつもの陛下でいらっしゃいますね……」


 ……?


 どうも昨日の作業中、わたしの言動や行動が怪しかったので心配していたのだそうです。


 書類を机の上だけでなく床にも置けだとか、普段と比べて随分と無遠慮で明るい振る舞いで作業をこなしていたものだから、心配して声を掛けるも大丈夫だとしかいわず、これは働かせ過ぎておかしくなったのではないかと不安だったそうです。


 ……あぁ……昨日のわたしはアリシアでしたからね……。


「それは心配を掛けましたね。申し訳ありません。大丈夫ですよ。たまには羽目を外したくなる時もあります。それにその方が捗るのですよ。お恥ずかしい所を見せてしまいましたね。ホホホ……」

「……そう、ですか……」


 今一納得していない彼女でしたが、食事の用意を催促して寝台を降ります。


 ……あの子、一体何をしていたのですかね?


 これは後で詳しく聞いておきましょうか。


 それも含めて食事をしながら頭の中の三人から昨日の作業内容を要約して伝えてもらっていましたら、ライナ達がやって来ました。


「あ、おかあさんおきてるー!」


 ……アレまで一緒ですか……。


 たいして美味しくない食事が更に酷く感じてしまいます。


「ミリねえ、この子のなまえ、かんがえてくれた?」


 そういえば忙しくしていて忘れていました。あんなモノなぞなんとでも呼べば良いと思いますが、可愛い娘と妹の頼みです。無碍にすることは出来ません。


(みなさん、何か良い名前はありませんかね?)

(あんなモノ、ただイヌで良かろう)


 ……わたしもそう思います。


(それじゃ可哀想よ。せっかくだから可愛らしい名前をつけてあげなきゃ)

(やっぱり頭が二つあるから、オルトロスはどう?)


 流石にそれでは格好が良過ぎますし、呼ぶ際も長くてライナが困りそうです。


「では、オルでは如何でしょう?」


 雌だそうですが構わないでしょう。ライナ達は喜んでいます。


「おかあさん、ありがとうー!」


 二人が退出し、これでやっとゆっくり食事が取れると思ったのですがまた来客が。


「陛下がお目覚めになられたと聞き、急ぎ会いたいという者が……」

「わかりました。少しだけ待たせて下さい」


 慌てて食事をかっ込みます。


 ……例えどんなものでも残すのはいけませんからね……。

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