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其の199 マダリンに捕まって

 今日は朝から長い時間マダリンに拘束されて説教詰にされるであろうことは覚悟をしていました。それについては後悔していません。あの時はああするしか無かったのです。いずれわたしの昨晩の行いが正しかったことは証明されることでしょう。しかし勝手なことをしでかしたのは確か。それは反省しています。マダリンが怒るのも最も。ですからお小言は甘んじて受け止める所存です。


 ……ですがわたし、一応最高権力者なのですけれども……。







「貴方方は夜通し闘っていらしたのでしょう? お疲れのことでしょうからお休み下さいませ」


 マダリンからそういわれたレニー達近衛は、揃ってわたしに視線を移しましたので軽く頷き返します。


「わたしのことは構いません。ご苦労様でした。休みなさい」

『ハッ!』


 ……夜通し働いて疲れているのは、わたしも同じなのですけれどもね……。


 まだまだ大丈夫だというレイを伴い、マダリンに連れられて小部屋に入りました。


 その間ライナ達は例の魔獣の世話をするとのことで別行動。部屋に入れて飼う為にお風呂に入れて汚れを落とすのだそうですが、他の弟妹達もあの魔獣を存外気に入っている様で一緒に行きました。子供は元気ですね。


 ……あんなモノは外にでも繋いでおけば良いのに……。


 更には一緒に寝台へ入れたいなどといい出さないか心配です。それだけは回避したい所。


 ……そういえば、アレに名前を付けろといわれていましたね……。


 二人とも、是非ともわたしに付けて欲しいだなんて可愛いらしいことをいっていましたが、これはもしやわたしが名付けることで、なし崩し的に家族の一員にしてしまおうなどと考えているのではないでしょうか。だとしたら計算高い子達です。これはしっかりした子だと喜んで良いのやら……一体誰に似たのでしょう……?


「……陛下、陛下! 聞いておられますか!」

「は、はい! ……失礼。聞いていませんでした……」


 お説教を回避したいあまりに、無意識に違うことを考えていました。


「しっかりなさって下さい!」

「……はい……」


 早速雷が落ちてしまいました。これはいけません。これ以上余計なことで怒られない為にもこちらに集中しなければなりませんね。


 今日は何故怒られるのかわかっています。事前に覚悟が出来ていれば精神的疲労も多少は和らぐというもの。それにどこまで通用するかわかりませんが、言い訳もちゃんと考えています。


 ───さあ! 覚悟は出来てますよ! どこからでもかかって来て下さい! 


 下手な魔獣に挑むよりも緊張しながら気合いを入れてマダリンを見つめたのですが、普段わたしを叱る時に比べて全く表情が違いました。どこかしら柔らかげな雰囲気で、そして何故かソワソワしています。


 ……?


「……それで……色々とお話しをしたいことが御座いますが……先ずはその……先程、陛下達がお戻りになられた際に……あの……一緒に連れて帰っていらっしゃった犬についてお聞きしたいのですが……」


 更にいつもの様に明朗ではなく歯切れが悪いです。


「……はぁ……構いません……」


 てっきり魔獣を連れて来たこと叱られるのかと思いましたがどうも様子が違います。


「あの可愛らしい犬はどうされたのですか? そして、どうされるおつもりなのでしょう?」

「えっ!? アレは……」


 パンラ王国大使館邸で飼われていた魔獣で、そこの者が街中の者に被害を与える為に放った内の一頭ではあるのですが、既にあの個体は無害になっており、子供達が飼うつもりで捕まえたのだと伝えると、明らかに華やいだ顔になりました。


 …… 貴女、犬好きだったのですね……それにしてもアレを可愛いだなんて……。


 もしやわたしの美的感覚がおかしいのかと、急ぎ頭の中の三人に尋ねてみました。


(ハハハッ! ブサカワイイってヤツかな?)

(醜悪じゃ!)

(……可愛らしい……と、いえなくもないのかしら?)


 わたしの味方はアンナだけでした。解せません。


「そうなのですか……でしたらその……わたくし目にも触らせて頂くことが叶いますでしょうか……」


 わたしにとっては視界にも入れたくない存在ですが、マダリンにとっては真逆だそうで、あの黒く長い毛が魅力的に見え、撫で回したくて仕方がないそうです。人の趣味趣向はそれぞれですね。


「……まあ……それはあの子達とアレが構わなければ、わたしは構いませんよ?」

「そうですか! 有難う存じます!」


 ……ここまで喜んでいるマダリンはついぞ見たことありませんよ。物好きなものですね……。


 呆れつつ、はにかんでいる彼女を見ているとふと思い付きます。。


 ……ならばこのままあの犬もどきに彼女の注意を向けておけば、お説教を回避出来るのでは? 


 良い考えだと思います。わたしは見るのも嫌ですから気は進みませんが背に腹は代えられません。


「……どうでしょう、マダリン……」


 そんなに好きなのでしたら、今この場にアレを連れて来る様にライナ達へ連絡しましょうか? との旨を提案をしたのでしたが、それは拒否されてしまいました。


「コホン。公私は分けなければいけません。そもそも陛下は……」


 途端にいつもの真面目な顔に戻りお説教が始まります。


 ……うぅ……思わず拍子抜けして気を抜いていましたから、これは堪えますね……。

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