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其の195 三カ国会談

 そのまま三人で話し合いをしていると、風の魔法で連絡が入りました。


「陛下、レニーです。……」


 パンラ王国の外交官達が真っ黒だったのです。ならば当然他のパンラ王国関係者も怪しむべきでしょう。


 レニーには、来ても役に立たなかった近衛や他の弟妹達と共に警備隊を同伴させ、パンラ王国外交官の館へと向かわせていました。その報告です。


「やはりそうでしたか……」


 予想の通り館の中はもぬけの殻。人っこ一人いないとのことです。みな逃げ出した後でした。晩餐会の襲撃を起こす前に逃げ出していたのかも知れません。それならば今から追いかけても無駄でしょう。例え捕まえることが出来ても何も喋らないかも知れません。「追いますか?」との言葉には、無駄になるかもしれないからとやめさせました。


 捜索をさせなかった理由はもう一つ。


 気になる報告が上がって来たからです。


「……館の中なのですが……」


 つい最近まで、何かしらの動物を飼育していたと思われる空の檻を幾つかを発見したとのことでした。


 ……これは嫌な予感しかしませんね。


 恐らくそこで飼われていたモノは魔獣か、そうと成る前の生き物なのでしょう。そんなモノが街に放たれたとしたら大惨事です。現場にいた警備隊の隊長がそれを見てすぐにこれは怪しいと判断し、警備の者達に指示を出し街中を巡回させるとのことでした。良い判断です。正体がわからないのであれば尚更早期の対処が要。レニーからの「我々も捜索に回っても宜しいでしょうか?」との進言にはすぐ許可を出しました。


 しかしレニー達に不安がある訳ではありませんが、もし相手が本当に魔獣であったならば、その探索にはミスティ達が適任でしょう。何せ匂いでわかるそうですから。その為、すぐにも彼女等を向かわせようと姿を探したのでしたが、「……zzz」二人一緒になって部屋の隅で船を漕いでいました。限界の様です。無理もありません。夜もだいぶ更けてきていますからね。もう子供は寝る時間。


 ……今夜はお疲れ様でした。


 手の者を呼ぶと二人を寝室まで連れて行ってもらいました。

 

 ……さて、ここからは大人の時間ですね。


「レニー、わたしです。こちらの用事が済み次第、わたしも捜索に加わりますからそれまでの間はお願いします」


 それと、その場にアラクスルがいたら急ぎわたしの元へ来る様に付け加えました。


「お二人共、今の会話は聞いていましたね?」


 レニーとの連絡を終えると、ベッツィーと副首相に向き直します。


 副首相は青ざめた顔で「……もうお終いだ……」項垂れてしまっています。それとは対照的にベッツィーは「すぐにも即応部隊に連絡を!」息巻いていました。為政者としての彼女の対応は正しく、その勇ましい姿は好ましく思えるのですが、しかしそれはやめさせます。


「何故ですか? この時のための部隊ではないですか!」


 もっともです。魔獣討伐の為に組まれた部隊なのですから、街中の者達の命を守る為にも今すぐ出動させるのが望ましいことはわたしもよく理解しています。しかし今それをやるのは愚策。


「最早ここに来ては、既にパンラ王国との間で開戦状態になっているとお考え下さい。今、彼等を動かして街に入れてしまうと他の場所が疎かになってしまいますよ」


 狙いはそれでしょう。


 ラャキ国もニカミ国も、両国を合わせたとしても軍の実力はラミ王国と大差ありません。正直弱いのです。現在の両国の国防を担っているのは即応部隊にあるいっても過言ではありません。実際、彼等のお陰でこの地域の魔獣による被害が少なくなっています。手薄になった地域から回り込まれて首都が包囲されでもしたらお手上げでしょう。軍だけでは色々と対応出来ないのは彼女達もわかっている筈です。


 ……それと、必ずしも人が進軍して来るとは限りませんからね……。


 これまでのことを思うと、魔獣を使って来る可能性が高いです。それなら尚更、即応部隊は現状のまま国境間近で睨みを利かせておいた方が良いでしょう。


「し、しかし……」


 確かに街中の者の身の安全はわたしも危惧する所。


「それに関してはわたしが出ます。陽が上り、人が往来に出る頃までには解決してみせましょう」


 胸を張って答えました。


 どんな相手なのかは知りませんが断言します。ハッタリをかますのも時には必要。話しを円滑に進める為には仕方がありません。


 体力と魔力が心配ですが、小うるさいお目付役のマダリンが寝込んでいる今の内です。無理をしてでもなんとかしましょう。


 ……お三方、頼りにしてますよ!


「ですから、その為にもこちらの話しを早急に終わらせる必要があると思われます。それで先程の続きですが如何なさいますか? ご自身で対処なさります?」


 ベッツィーではなく副首相に対して睨み付けます。


「……畏まりました……陛下に一任させて頂きたく存じます……」


 既に自分の手に負えない状況であることは理解していました。何もかも諦め切った表情で、わたしと目を合わせず項垂れる様にして返答します。


 それを見たベッツィーは軽くため息を吐くとわたしに向き直し、力強く頷きました。


「こちらもその方向でお願い致します」

「わかりました。では話しを詰めていきましょう」


 ……丁度良い機会だといってはバチが当たりそうですが、この機を逃すと何時になるかわかりません。このまま推し進めさせてもらいましょう。わたしはなるべく早くことを成し遂げたいのですよ。


 悪い笑顔にならない様気を付けながら、未だ魔獣の死骸や犠牲者の遺体がそのままとなっている会場内で、淡々と話しを進めていきました。

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