其の190 ミアの処遇と首都
即応部隊の隊長との会談が終わると、マダリンに席を用意してもらい家族会議を行います。昨日行うのはわたしが無理でした。当然議題はミアの件。
「ミア姉さまの横暴には、最早我慢の限界です!」
既に命まで狙われているのです。
一番被害を被っているのはわたしですが、他の弟妹達も身に覚えがある様でして口には出さないまでも神妙にして頷いています。ライナだけはキョトンとしていました。
即刻母のいるリモ領に送り返したい所ですがそうもいきません。当然一人で帰る様なことはしてくれませんし、郷里から連れ戻しに誰か人を呼ぶにもわたし達は移動中の身。それに……。
「あたしはね、出逢いを求めてるんだよ」
───うっ……。
他の者達にはまだ早いでしょうが、わたしにはその言葉が刺さりました。
……彼女も苦労をしているのですよね……。
その気持ちは身に沁みてわかります。何せわたしはアンナのせいでこんなことになっているのですから。姉妹だからではなく同じ適齢期の女として同情してしまいます。ならば仕方がありません。及ばずながら力になってあげましょう。
「……では、暫くの間わたしと同行なさって下さい。そうすれば 折を見て紹介出来るやもしれません」
目を離してしますと何をしでかすかわかりません。目の届く所に置いておいた方が良いでしょう。
「ホントか!」
「構いません。ですが必ずわたしのいうことをお聞きになって下さいね。勝手に何かをなさってもらっては困ります」
とても良い笑顔で了承して来ましたが、これは思った程に伴侶探しが大変だったのでしょう。妹として少しでも姉孝行が出来そうで良かったです。
(……ミリー、いいの?)
(構いません。これで大人しくさせることが出来て、少しでも彼女の役に立つのであればこれ位なんでもありませんよ)
(そう? なんか思い違いしている様な気がするけど……)
(そんなことありませんよ。大丈夫です)
その後も同じ様に街と街を繋ぎながら山の中を一路首都を目指して進みましたが、その間ミアはわたしのいうことをちゃんと聞き、他の者達にも協力的でした。特に狩猟には積極的に参加して成果を上げています。周りからの評判も上々。
(ほら、アリシア。取り越し苦労だったでしょ?)
(う〜ん……)
そのまま特に懸念事項も無く、無事ラャキ国の首都に到着。
「お疲れ様で御座います。女王陛下。お待ちしておりました」
「お久しぶりですね。ベッツィー」
出迎えてくれた彼女はラャキ国の首相秘書官長。フランツィスカの叔母でもあり、彼女とは同じ眼鏡者同士で親近感があります。
「道中のご活躍につきましては聞き及んでおります。有難う存じました。その件も含めまして色々とお話しをしたいことも御座いますが、先ずはこちらへ」
そのまま馬車を乗り換え、ベッツィーの案内で首都内をお披露目の行進。もう見せ物には慣れっこ。わたしを見て驚き上がってくる声も笑顔で返せます。
ここは首都とはいえやはり山の裾野になりますのでそう広くはありません。今まで通って来た街と同じく建物が密集しており、すぐに街の外れまで来てしまいました。
「あちらに見えますのは、かつてここが一国だった時代のお城になり、現在は両国の迎賓館として使用しております」
この後で行う両国の要人を交えての晩餐会は、あの場所になるそうです。そしてその建物を境にそのまま進むと違う街に入りました。
「こちら側はニカミ国の首都になります」
……両国纏めてお披露目が出来るのは助かりますが、さっさと一国にまとめてしまいましょうよ。面倒臭い……。
こちらの街並みもラャキ国の首都と変わり映えがありません。ニカミ国側の出迎えが無ければ本当に国が違うのかと、彼女の言葉を疑わしく思えてしまう程でした。
「ようこそおいで下さいました」
レニーよりも年嵩の男性が出迎えてくれます。彼はこの国の副首相だそうで、高齢で身体に不自由な首相に変わり出迎えてくれたそうですが、彼もそれなりな歳に見えました。
別段この辺りでは珍しくはないのですが、彼は白い物が混じるも青がかった緑の髪をしており、青い目に眼鏡を掛けていました。彼を見た後にベッツィーに視線を移すと「……わたくし目の祖父にあたります」とのこと。
……もう国が分かれている意味ってありますか?
君主制ではない両国ですが、共に政を行う一族は代々変わっていないとのことでした。
「ならば現在の両国の首相は……?」
「どこかしらかで血の繋がりのある親戚になりますね」
そう答えたのはフランツィスカ。そうなると彼女はある意味お姫さまになる訳ですが、そう考えるとそう見えてくるから不思議なものです。
そしてたいして面白みのない街中を引きずり回され、城へとやってきました。これから晩餐会。
……さ、お仕事お仕事……。




