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其の189 急き立てられて

 当然ミアのことなぞに構っていられません。時間がないのです。弟妹達を存分に使い倒して一気にけりをつけました。


「メイとミンダは彼奴の上半身、ベルトとビックスは下半身を中心に風魔法を行使し、地面に押し付けて動けない様になさい!」


 ただでさえ大きくなる前から魔力の防護壁が硬かったのです。今では更に硬くなっていることでしょう。しかし所詮は魔力で作られた物。魔力勝負ならば負けません!


「その後でわたしは彼奴の首を落とすのに集中します。みなさん頼みましたよ!」

『はい!』


 魔法に使う魔力も惜しみ、地面に押し付けた魔獣の首元に鞭を絡ませると全力出です。出し惜しみなし。


「観念なさい!」


 多少時間は掛かりましたが無事防御を突破し首を落とすことが叶いました。魔獣と一緒に押し潰されていたミアが終始煩く叫んでいましたがそんなものは無視。呑気に遊んでいるから悪いのです。早急に魔獣を討伐することの方が先決ですからね。


「時間がありません! このまま埋めてしまいます!」


 大きな魔石は勿体無いですが、それを取っている時間も惜しいです。最低限の処理を終えると、ごねるミアの首根っこを掴み急ぎその場を後にしました。


「貴女を野放しにすると何をしでかすかわかりません! 一緒にいらっしゃい!」









「……まぁ良いでしょう。さ、陛下、急ぎお着替えをなさって下さい」


 なんとかギリギリ間に合いました。流石に急いで飛んで来たものですから魔力も体力もからっけつ。もう一歩も動きたくありません。


 フラフラになりながら方々に挨拶し宴席をこなし、寝床に入る頃には意識も朦朧としていました。


 ……しんどかったです……ですが明日は遠出をしませんからなんとかなるでしょう……。


 そのまま朝まで気絶した様に眠り続けました。









 今日は次の街に向けての移動はありません。一日この街でお休み。大多数の者はここで英気を養ってもらいましょう。明日以降の準備でも構いません。わたしは別ですが。


 ……本当なら、保冷馬車をまた作りたかったですね……。


 今回の工程はもちろんラャキ、ニカミ国の両首相との会談が目的の外交ですが、もう一つ即応部隊の視察も兼ねていました。その本部がこの領内にありますので、今日はそこへ向かいます。


「これはこれは女王陛下、この様に遠い所まで御足労をお掛け致し恐縮で御座います」


 慇懃に敬礼しながら挨拶をして来た彼は部隊長。レニーよりも少し若い年配の男性。レニーの元部下だそうで、二人で目配せし合っています。


 ……後で存分に旧交を温めて下さいね。


 さて、今は仕事仕事。


「それで、状況は如何でしょう?」

「ハッ!」


 もちろん魔獣のことや人員、不足な物がないかとか諸々。進捗状況や要望等を尋ねます。


 幸い物資の不足等は無い様で、ただやはり「食事だけは……」と苦笑い。


 ……士気の為にも食事は重要ですからね。


 それについては目下対応中だと、同じく苦笑いで返すしかありませんでした。


「是非とも宜しくお願い致します」


 ……目が本気ですね……。


 人員については、もっといると助かるそうです。


「やはり小型の内に早期に発見、駆除を行っていることが効いている様です。大型の魔獣は滅多に出現しません」


 流石部隊長。魔獣のことについては詳しいようです。誇らしげに語る隊長とは裏腹に、わたしは恥ずかしくて堪りません。


 ……「滅多に」ですよね……。


 思わず顔が赤くなりそうで俯きたくなりましたがグッと堪えます。


「……彼女とは先日偶然会いました。色々とご迷惑をお掛けしていることでしょう。わたしから謝罪致します」


 彼は肯定も否定もせず、ただ笑っていました。


「つきましてはこちらを……」


 そしてミアから取り上げた腕章を差し出します。


「よ、宜しいのですか!?」


 それが何を意味するのわかっている隊長は、すぐにはそれを受け取らず驚いていました。


「はい。これ以上迷惑を掛けさせる訳にはいきません。彼女のことは、わたし達の方で責任を持って抑えておきます」


 ……わたしの手に負えない場合は、姉か兄か他の兄弟か、若しくは父か、それとも母をまた呼ばなければなりませんかね……。


 リモ領に戻れといっても聞く彼女ではないでしょう。婚活にしくじった後からというもの、彼女の奔放振りには目を覆うばかりです。しかし家族ですから無碍には出来ません。尻拭いは姉妹の義務。責任問題。ほんと困った姉です。


「……そうですか……彼女も色々とありますが、その実力は他の隊員の十人以上の働きでしたからね、いなくなればなったで困ることになりますな……」


 ミアもそれなりに役には立っていた様です。しかしそれ以上に迷惑も掛けていた様で、彼が一瞬安堵した表情になったのは見逃しませんでした。


「そのお詫びや、彼女の抜けた穴埋めではないですが、人員の増強については……」


 既に色々と考えています。


 現在、即応部隊の人員は各国の兵士達ばかりで構成されていますが、ルトア国からは腕に覚えのある市井の者も来ています。丁度これからの時期は秋から冬になりますので、冬に閉ざされる前にゼミット国からも市井の者達に募集を掛ける予定。丁度良い出稼ぎになるでしょう。恐らくリモ領からも参加する者が出てくる筈です。あの辺りの地域には強者が多いですからね。


「それは有り難く存じます!」


 今日初めて彼の笑顔を見れました。


 ……管理職は大変ですね……。

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