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其の185 猿大型魔獣 前編

 如何に形りが大きく手には得物を持ち、凶暴そうだとしても所詮は獣の成れの果て。しかも食料にすることが叶わずに魔石を採取する為だけの存在。そんなモノは恐るるに足りません。アンナの鞭の錆にしてくれましょう!


 どこから持って来たのか、わたし目掛けて振り下ろしてくる剣は難なく鞭で両断。投げつけて来た木も粉砕。それを見た魔獣は躊躇して動きを止めました。


(どうする? 魔法でチャチャっとやっつける?)

(そうですね。悪戯に長引かせて周りの被害を増やしても良くありません。お任せしますが、可能な限り周りの地形に影響が少ない範囲でお願いしますね)

(オッケー!)


 アリシアが何をするのか黙って見ていると、突然魔獣周囲の地面が動き出し魔獣を土の塊が覆い始めました。


 以前ミアとの試合で閉じ込めたものと同じです。あの時は水責めから凍らせていましたが、今回は魔獣相手ですから容赦をする必要はありません。中を炎で満たして蒸し焼きにするのでしょうか? それとも密閉して空気を抜き窒息死させるのかも知れません。しかし……。


 ───えっ!?


 土壁が魔獣を完全に覆う前に魔獣が拳を振るい、大きな音を立てて土壁を砕いています。


(───えーッ! ケッコー頑丈に作ったのにーッ!)


 アリシアが驚くのも無理はありません。確かに土壁はミアの時よりも相当厚みがありました。それを素手で砂糖菓子でも崩すかの如く簡単に壊しているのです。これには土の精霊達も困惑して目の前で右往左往していました。


(ほほぅ……あれは魔力で膂力を補っておるのじゃろうな。それと……)


 アンナの見立てによると、アレはウチの母と同じで魔力を身体中に巡らせることにより、それで持って筋力を増強して怪力を発揮しているのだそうです。更には魔力を表面に覆うことにより身体を保護しているのだろうとのことでした。確かによく見ると魔獣の身体には魔力の層が見えます。そしてその証拠に、あれ程拳を土壁に叩き付けていても血が滲むどころか手には傷一つ付いていません。


 これはアンナの鞭といえども厳しそうな相手です。


 ……厄介なヤツですね……。


 どう攻略すべきか睨みながら考え込んでいると(あっ! ちょっとまって!)アリシアが何かに気が付きました。


(でもほら、矢が刺さってるでしょ? なら、いくら硬くても弱いトコはあるんじゃない?)


 恐らく保護出来ない所があるのか、もしくは意識した所しか保護出来ないのでしょう。何れにしてもそれが弱点なのに違いはありません。


(良い所に気が付きました! ならば倒せない相手ではありません!)


 明確な弱点の箇所がわからなくとも、あることさえわかればこっちのもの。わからなければ炙り出せば良いのです。


(ならばわたしが前面から打ち合います! その間にアリシアは魔法で波状攻撃をお願いします! やり方は問いません。出来る限り様々な箇所へ攻撃を!)

(……でもそれじゃ威力が……)

(構いません! 弱点を探すのが目的ですから多少でも傷さえ負わせれば良いのです!)

(そうか! わかった!)

(イザベラ様!)

(な、なに?)

(消化活動は済みましたか?)

(大体終わったわ!)

(ならば彼奴が火を吹いて来たら水魔法で防御をお願いします!)

(わ、わかったわ!)

(アンナ様は、彼奴に傷がつく箇所の確認を! わたしでは見えません!)

(う、うむ。任せておけ!)


 これで準備は整いました。


(さぁ、みなさん行きますよ!)


 崩れた土壁を乗り越えて来る魔獣を睨み付けながら、左手に持つ杖に体重を乗せると右手に持つ鞭に力を込めて前に進み出ました。







 ───むうっ! 硬い!


 例え鋼鉄でも斬ることが出来るアンナの鞭でも、纏う魔力の層を削るので精一杯。身体に傷一つ付けられません。予想していたとはいえ難儀な相手です。しかしわたしの今の役割は惹きつけること。ならばこれで十分。


(アリシア! 今です!)

(よーっし!)


 途端に地面から無数の小さな土の槍が迫り上がり、上空からは魔獣目掛けて小さな氷の刃が降り注ぎました。


「グオウ───ッ!」


 アリシア渾身の攻撃です。例え身体に傷は付かなくとも、その怒涛に押し寄せる土や氷の勢いに魔獣もたじろいでいます。目の前にいる魔獣が土煙と氷の雨で見えなくなるほど。一旦距離を置いて様子を見ました。


(アレで死んじゃったかな?)

(そうであると助かるのですが……)


 モウモウとしている中、良くは見えないまでも目を凝らして様子を伺っていると、不意に明るい箇所が見えて来ました。


 ……なんでしょうね?


(火が来るわ!)


 イザベラが叫ぶのと同時に水の塊がその明るい部分目掛けて撃ち込まれ、その途端、辺り一面が熱せられた水蒸気に覆われました。周囲は蒸し風呂状態。更に視界が悪くなってしまいます。


(熱っ! み、みなさん! 状況はわかりますかー!)


 わたしは眼鏡が曇って何も見えません。そうなると視界は三人頼り。


(くるよ! くるよ! 上から殴ってくる!)

(横からも来るわよ!)

(もう目の前じゃ!)


 ───ヒィーッ!


 無我夢中に鞭と杖を振いました。


 何かを弾いている鈍い音が響くのが聞こえ、手には重い感触が伝わります。猛烈な攻撃を受けていることが嫌でもわかりました。


(ちょ、ちょっと一旦なんとかして下さいー!)

(いくよ!)


 ───ヒッ!


 途端に身体が浮かび上がり、無事猛攻と霧の中から脱出出来ました。


 ……ふぅ……状態保存の魔術だけでは駄目ですね……。


 これは近い内に、眼鏡が曇らない魔術を発明せねばと心に決めた次第です。

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