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其の166 マリアンナとフランツィスカ

「陛下、お呼びにより参上仕りまして御座います」

「わたくし目共に何か御用でしょうか?」

「お久しぶりですね、マリアンナ、フランツィスカ。お二人共、今は身内だけですから堅苦しくしないで結構ですよ」

「で、何? ミリー」

「何かありましたか?」

「お二人には色々と聞きたいことが御座いましてお呼びしたのですが……」


 本日の各国との会議も一段落しましたので、夜も遅いですが二人を呼び付けました。彼女達は現在王城にて外交関係の職に就いていますが、用があったのはその表向きの職務ではなく裏の方。


「最近随分と精力的に活躍なさっている様子ですね」

「まぁ、最近は外交関係であまり出番がないしね。ミリー頑張ってるじゃない!」

「有難う存じます。お陰様で最近は忙しくしておりまして、例の者達については気に掛けている暇がないのですが……。今現在、貴女方が統括なさっている者達ですが、どの位いるのでしようかね?」


 当然二人が管理しているわたしの手の者達のことです。知らない間に随分と増えているらしく気になって仕方がありませんでした。


 わたしの問いかけに二人は目を見合わせると、フランツィスカが笑みを浮かべながら答えました。


「フフフ……それは王城内での話しでしょうか? 学園? 国内? それとも国外も含めての総数でしょうか?」

「───えっ!? ……で、ではわかる範囲で結構ですので個別にお願いします……」


 嫌な予感がしましたが聞かない訳にもいきません。


 ───そんなにですか!


 案の定、予想を遥かに上回る数でした。


 フランツィスカの話しを聞いて目を見開いて驚いてしまいました。思わず、何故そんなにも増やしてしまったのかと口から零れましたが、彼女達は平然と、寧ろこれでも少ないのだと答えます。


「だってミリー、リャキ国やルトア国に行った時、困ったでしょ?」


 思い出してみれば、確かに慣れない土地ではその地方独自の慣習等もあり色々と苦労しました。この国で好き勝手するのとは違って不便な思いをしています。


「既に隣接する四カ国において、今後不便なことはありません。残るパンラ王国も時間の問題ですよ。最近ミリーが頑張ってくれたお陰で順調です。フフフ……」


 例の寮内食堂閉鎖のどさくさに紛れて、これ幸いと彼の国出身の者達も着実に引き入れているのだそうです。流石抜け目ないですね。

 

「そ、そうでしたか……有難う存じます……」

「だから外交に出掛けても大丈夫よ!」

「うっ……」

  

 実はリャキ国とニカミ国には外遊に行かなければならなかったのですが、先延ばしにしていました。


 リャキ国は、その首相秘書長官であるフランツィスカの叔母、ベッツィーと面識があったのもあり、首相をラミ王国に迎えて首脳会談は既に行っていますので問題はないのですが、ニカミ国の首相とは未だ会いもしていません。


 両国は共にラミ王国王都から見て、ルトア国やゼミット国に比べて断然近い距離にその首都がありますが、ニカミ国首相はかなりの高齢で無理はさせられない事情があり、会うには此方から出向くのが最善です。更にわたしが提唱した即応部隊ですが、その本部はリャキ国内にあり、一度そこへ視察にも行かなければなりませんでした。


 わたしが気まずそうに黙り込むと、二人はそれを見て笑っています。


「大丈夫ですよ。以前と比べて随分と向上しました」

「ニカミもよ!」

「……むう……」


 そう。わたしの足が向かない理由は彼の国の食事事情。如何に短い滞在で済むとはいえ、わたしにとっては拷問に等しく例え一日であろうとも耐えられません。


「ハハハー! その件もあってね、こっちからのお願いがあるの。これは表向きの方なんだけど……」


 マリアンナがいうことには、わたしの外遊に併せて料理人を同行させて欲しいとのことでした。


「さすがに外交の場で直にいうのは恥ずかしかったみたいでね、わたし達の方から話しを通してって」


 まず市井の者達にもこんな食事があるのだと、わたしが外遊して立ち寄る際に料理人達によって食事を振る舞い、更に両国の首都に着いたら、幾人かそのまま料理人を指導者として暫く預けて欲しいとのことでした。


「もちろん掛かる費用はあっちの国で持つし、来てくれる人には待遇も良くするわよ?」

「ラャキ国も同じ考えになります。かつての悲劇を起こさない為にも是非と」

「うぅ……」


 それをいわれてしまうと何もいえません。


「……わかりました……」


 しかしそう遠くない場所とはいえ日帰りでは済みません。教師業もありますからすぐには行けませんし、人材を探す必要もあります。丁度そろそろ学園が夏の長期休暇に入りますから、その辺りで向かうことを約束し二人を返しました。


「マダリン、その様な訳ですから調整をお願い致します……」

「畏まりました」


 問題は増えましたがこれで今日の業務は終了。後は寝るだけだと思い、席を外そうとしましたらそこにまた来客が。


「ミリねえ、今いい?」

「メイ! どうしたのですかこんな遅くに!」

「大丈夫。外出届は出してあるわ。今晩は王城の妹達と一緒に寝る予定」


 マリアンナ達が今晩わたしに呼び出されているのを知った彼女は、その後なら時間が取れるだろうと待っていた様です。


「……どこからそれを……」

「わたしのいる寮にも、ミリねえの手の人が沢山いるのよ?」


 思わず真顔になってしまいます。


 ……もう、彼女等がこの国を支配した方が色々と早いのではないですかね……。


「……それで、何の用ですか?」

「ちょっとお願いがあって」


 妹の頼みであれば聞かない訳にはいきません。出来る範囲で叶えて差し上げましょう。少しならばお小遣いも構いません。色々と働いてくれていますしね。しかし予想だにしない要求に思わず驚いてしまいました。


 ……何故、貴女が眼鏡を必要とするのですか?

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