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其の152 教の改革

 レニーの反応とわたしの奇行に、周りの者はみな目を見開いて驚いていましたが、流石にそこは貴族だからなのか、凡その事情を把握している者達ばかりだからなのかはわかりませんが、声をあげて騒ぎ特に追及してくる者はいませんでした。


 ただ、わたしに身体が戻りレニーから離れた今も、互いに頬を赤らめて恥ずかしそうにしています。

 

 ……思わずわたしの方が声をあげそうになりましたよ……。








「ベスには、予定通り今年から学園で教の教師として教鞭を取って頂くのは変わりませんが、今年から貴女を中心に事前の打ち合わせ通りの指導要領に沿って講義を行って頂きます」


 気を取り直して進めて行きましょう。


 国教に定めているものをいきなり排除は出来ません。ただ無駄なアンナ賛美は辞めさせます。いきなりではなく徐々に行う方針。信仰の対象をアンナ個人ではなく、ここラミ王国全体、もっと広義的にここ集う全ての者達に対し互いに敬意を持って尊重し合う方へと誘導して行きます。


 …… 君主がいる国なのに御為ごかしも甚しいですが、宗教教育の目的は道徳教育の側面もありますからね……。


 君主らしからぬといわれても仕方がありません。元々その器ではないのですから諦めて下さい。


 おかしな歪みは是正します。わたしの精神衛生上の為にもこれは必須で急務。凝り固まった上の世代に突然方向転換させるのは難しいでしょうが、若い内なら柔軟で染み込み易いでしょう。


「計画を早めたことで教の教師は若干名の人事異動を行う必要が出て来ました。その為、二、三人ほど、貴女の信頼する者を助手として雇い入れて下さい。生徒でも構いません」


 新学期の授業が始まる直前に慌ただしいことですが、ご年配の方の中で何人かは引退してもらいます。勿論乱暴なことはしません。そうせざるを得ない方向に持って行くだけです。大丈夫。後の生活についても用意してありますからね。


「それと、初めの内は他の派閥からの物理的な干渉の恐れがありますので、わたしの方から何人か貴女に護衛を出します。後程顔合わせをして下さい」


 レニーに視線を送ると頷き返されましたので、まだ早いかとも思いましたが、彼に預けていた者達の訓練も仕上がっている様です。この為に幾人か同寮だった者を彼に預けていました。後でその中から選抜しましょう。


「他に何か質問は御座いますか?」

「……かねてより陛下から計画は伺っておりました故、明日からでも対応は可能なのですが……その……本当にわたくし目で宜しいのでしょうか?」

「構いません。貴女にはその資格が御座います」


 ……その為に準備をして来たのですからね……。


 眼鏡を通して彼女を見ると、その身体の魔力は桃色に包まれているのが見えます。


 かなり前から彼女とその一家は住まいを王城に移させて、この計画の為にわたしの魔力に染まらせていました。タレスは既に魔工学で素養がありすぐに馴染んでいますが、彼女と父のルーカスは最近やっと染まりました。間に合って良かったです。妹のエイミーはタレスの婚約者ですから染まるのも時間の問題でしょう。


 しかしまだ不安そうに「新参者が出しゃばるなと文句をいってくる者がいるだろう」と心配しています。


「その件につきましては事前に調べて見当をつけていますが、彼等は数日以内に不幸にも色々と問題が発覚して代替わりをする予定になっています。その後で新しく来る手筈の者達は事前に教育済みになりますので、その点につきましては気になさらなくても結構ですよ」


 ……この為の手札は幾つか用意しています。持つべきものは信頼のおける優秀な親友達ですね。感謝していますよ。お礼はまたいずれ何かの件で。なので謝礼は手心を加えてくれると助かるのですが……。


 心配ないと笑顔でそう告げるも、彼女は引き攣った顔で固まってしまいました。どうしたのでしょうね? わたしの懐具合を心配してくれているのでしょうか?


 他に質問も無い様ですから未来を担う若者達の対応はこれで良いとして、一番重要な本山に話しを移します。


「さて、ルーカスには色々とやってもらうことが多いのですが、どれも順序や時期をずらしてはなりません。間違えない様、気を引き締めてことに及んで下さい。宜しいですね」

「か、畏まりました!」


 そのまま暗くなるまで密談は続きました。







 翌日から早速計画は開始されたのですが、学園の方は予想に反し大きな混乱が起きないまま通常運転に移行。ベスが忙しそうに走り回ったお陰でしょう。お疲れ様です。しかし王城内では蜂の巣をつついた如く大騒ぎになりました。


 思った以上にレニー達の確執は深くて有名だった様で、方々から、「一体何が!」「彼等は次の君主の座を狙っているのか?」「陛下に脅されたか!」等々、聞き逃せない台詞も含めて色々な声が上がっていました。しかし最初の数日は多少の混乱があったものの、ある程度経つと収まるところに収まって行きます。それでも時折りわたしの所に探りを入れて来る者がいました。


「ええ、わたしも聞いて驚きました。理由は寡聞にして存じませんが、二人の間には過去何かしらあった様ですね。しかしそのわだかまりを氷解させ、共にわたしの下でこの国の為に邁進してくれるとのこと。正に家臣の鏡ですね。彼等の主人としてとても喜ばしく存じます」


 その様な者には決まってそう白々しく笑って返し逃れます。それでも食らいついて来る者には「もしや、わたしの亡き親友、アリシアのお導きがあったのかも知れませんね」悲しそうな顔でそういうと大概黙り込み追求は止まりました。


 しかしこれで煙に巻けるのは脛に傷を持つ貴族連中のみ。


「ミリねえ!」


 噂を聞き付け、自体を察したメイが血相を変えて執務室に飛び込んで来ました。

 

 ……こちらはまやかしが効きませんね……。 

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