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其の144 褒賞式

 もちろんすぐにもアリシアとイザベラに光の魔法で治してもらおうとしたのですが、外傷は癒せても内傷には効きにくいそうで、妖精の数も少ないことからも諦める様いわれていました。


 ……全く、魔法は使い勝手が悪いですね……。


 なので仕方がなく自然治癒に任せて動かずに大人しくするしかなかったのですが、マダリンのお説教はこのまま夜遅くまで、いえ朝まで続くのかと思われる程でした。しかしそれも来訪者のお陰で免れます。


「ミリねえ、聞いたよ?」


 弟妹達です。助かりました。心配して見に来てくれたのでしょう。この子達が救世主に見えました。わたしの教育が行き届いていて何よりと、自画自賛した次第です。


「ミスティばっかずるい!」


 ……わたしのお見舞いではないのですね……。


 ミスティとライナが大量の服を抱えて戻って来たことを聞き付けやって来たのだそうです。


「子供なんか、どうせすぐ大きくなるんだからさ!」


 きっぷの良い女店主が、大きさも様々な物を持たせてくれたお陰で種類も豊富にあります。とうせすぐにもお下がりになるのですからみんなで仲良く分けなさい。


 しかしこれらを選んだのはミスティとライナ。大きさや趣味はいざ知らず全て女の子物。弟達には関係ないかと思いましたが、意外にも下の弟のビックスは「ボクもカワイイの着たい!」と乗り気です。本人が望むなら構いません。好きなのを選びなさい。個人の趣味にとやかくいう無粋なことはしません。


 他の子達は、今回直接魔獣の討伐に赴いた訳ではありませんがこれまでに何かと助かっています。この程度のお礼であれば喜んでしましょう。


 五人が仲良く服を選んでいる中、上の弟のベルトだけが所在なさげにしていました。


 流石に一人仲間外れも可哀想なので、何か欲しい物がないかと尋ねると「武器が欲しい!」とのこと。


 なので彼の要望を聞き、ラミ王国に戻ったら製作する約束をしていましたら、それを聞いた他の子達にもせがまれてしまいました。


 ……ですが、ライナにはまだ早いと思いますよ?


 可愛い弟妹や娘に頼まれて嫌とはいえません。しかしわたしも忙しい身。作ることもそうですがそれを考えている余裕もありません。


(……アリシア、何か良さげなのを考えておいて下さい……)

(オッケー!)


 しかし弟妹達の我儘なんて可愛いものです。なるべく意向に沿う様頑張りましょう。しかし問題は姉のミア。


 ……明日の褒賞式、例の催しの優勝者にも褒美を渡さなければいけないのですよね……。


 その時彼女が無理難題を吹っ掛けて来ないか、今から心配で堪りません。






 

 わたしの体調を鑑みて、褒賞式は午後から行われたお陰で何とか自力で式典に立つことが出来ました。


(アタシが代わりに動かす?)


 などとアリシアにいわれましたがとんでもありません。後のことを考えるともう勘弁。幸い意識ははっきりしていますので気合いで式典に臨みます。


 マダリンのお陰で祝辞もとちることなくいい終えられましたし、レイ達のお陰で魔獣討伐者の褒賞の義はやらなくて済み、式自体は恙なく進行していきました。


 ……みなさん、ありがとう存じます……。


 この式典も王宮広場で行われて多数の観客の前で行われていますが、その内容も広く王都中に響かせています。


 魔獣討伐の顛末について、自分の活躍のことを自分でいうのはおかしな気持ちになりました。聞いている周りはなんでもない顔をして頷いていますがむず痒くって堪りません。


 ……しかし、マダリンよく調べましたね……。


 彼女の用意したことを話しているだけなのですが、話しながら改めて彼女の調査能力には寒気がして来ます。


 ここまでは既定路線に乗って問題なく終えられました。


 最後に控えているのは催しの優勝者に対しての褒賞。その際、どの様な要望が出るかわからない為に後回し。


 ……さて、彼女が一体何を要求してくるのか……


 事前に弟妹達に探りを入れてもらっていましたが、昨晩はわたしに負けたことでかなり気落ちしていて何も話してくれなかったそうです。


 ……間違っても城勤めは求めない筈ですから、がめつい彼女のことです。お金でしょうか?


 昨晩、魔獣討伐の報奨金を彼女に渡した際に、かなりな金額を受け取ったにも関わらず不満そうな顔をしていたとの報告が上がっています。


 ……例え、ここで大金を要求されてもわたしの懐は痛まないのですが……。


 あくまでルトア王国内の催しです。出資者はわたしではありません。しかしこの国の財務状況が厳しいのを良く知っています。今も財務担当の者からの視線がキツいです。出来れば違うモノを望んで欲しく思います。


 ……さりとて彼女に釣り合う者がいるのかしら?


 かねてから彼女は自分に見合う伴侶を求めていました。一応この国の兵士の中から釣り合いそうな者を幾人か当たってもらっていますが、何も彼女に試合で負けてしまっている者達ばかり。果たして彼女のお眼鏡に叶う者がいるでしょうか?


「優勝者! ラミ王国在住、ミア・リモ嬢! 前へ!」


 色々と考えている内に褒賞の義の時間になりました。


 わたしが待つ壇上へと、ミアが呼ばれて姿を現したのですが、その時会場内からどよめきが。


 ……うわぁ……。


 現れた彼女を見て、人前ですから笑顔は絶やさないもの、わたしも心の中で呆れた声が出ました。


 重要な式典ですので彼女にも豪華な装いを用意しています。侍女達が奮闘し、もちろん髪も整え化粧も施され、一端の貴族子女に作り上げる予定でした。しかし今現れた彼女の装いは全く違います。


 ……あの格好で、よく警備の者が通しましたね?


 不思議に思いミアが出て来た所を見ると、案の定幾人も伸びていました。


 ……全くこの人は、どうしようもないですね……。


 わたしの目の前に現れた彼女は、整えた筈の髪を後ろに縛り、額には鉢金。服は動きやすい簡素な物で胸当てをして軽装の鎧。腰には剣や何やら術具らしい物も付けており、手には盾に槍。先だって魔獣討伐に赴いた格好よりも気合が入っています。


「アタシは金も名誉もいらない! ミリー! 真剣勝負だ!」


 殺気を隠すことなくわたしを睨み付けました。


 その言葉が会場内に響き渡ると、呆れ返るわたしとは対照的に会場内は大盛り上がり。


 ……これは日を改めるのは無理そうですね……。


「……わかりました。下に降りてお待ち下さい……」


 諦めてレイに目配せをするとアンナの鞭を渡してもらいます。

 

(アリシア、宜しくお願い致します。魔法も存分に使って、くれぐれもわたしの身体を労りながらお願いしますね)

(ハハハー! オッケー!)

(イザベラさま、アリシアがやり過ぎてミア姉さまが危なくなったらお願いします。死ななければそれで構いません)

(う、うん! 気をつける!)

(アンナさま)

(ん? ワシか?)

(はい。わたしと一緒に祈ってて下さい)

(何をじゃ? 勝利か?)

(そんなことは心配していません。わたしの身体が持つ様にです)

(う、うむ!)


 三人に支持をし終え、鞭を握り締めるとアリシアに身体を預けます。


(ではみなさん宜しくお願い致します!)


 ……ほんとごめんなさいね、わたしの身体。もう少しだけ頑張って!

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